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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

木陰の下で

2011年01月22日(Sat) 09:31:50

下校途中。
ぐうぜん行き合った美奈恵を、つかまえて。
悪りぃ。血を吸わせてくれ・・・って、声をかけたら。
ウン。いいよ。ナオキから聞いてるから。
彼女はあっさりと、そういって。
手近な木陰に俺のことをいざなった。
真っ白なセーラー服に吹き過ぎる風がさわやかな、初夏―――
三つ編みに結ったおさげを、吹き飛ばされそうなほどの一陣の風に。
彼女はちょっぴり、顔をしかめていた。

初めて抱きすくめた肩は、見た目よりもずっとか細くて。
けんめいに昂りを抑えようとしている息遣いは、心なしかふるえていた。
うなじに吸いつけようとする唇を、とっさに避けようとして。
すぐに体勢を立て直して、受けとめてきた。
暖かな体温が。しなやかで薄い皮膚が。その皮膚の下を脈打つ、血潮のたゆたいが。
俺を陶然と、痺れさせた。
差し出された首すじに、ググ・・・ッと牙を突き立てたとき。
ナオキ、悪りぃ。
心のなかで、幼馴染にわびていた。
彼女はナオキの許嫁だったから。

別れぎわ。
セーラー服にちょっぴり撥ねた赤黒いシミを。
美奈恵はひどく、気にかけていた。



あいつ、いい女になったな・・・
ぼそりと呟く俺に。
ナオキはなにも応えずに、さらさらと流れる微風に頬を浸していた。
ひとの彼女の生き血を、吸いやがって~。
だいぶ経ってから。ナオキはまるで冗談のように。
怨みごとを口にする。
ふり返ると、幼馴染のあいつは、冷やかすように笑っていた。

喉渇いたらさ。美奈恵の血を吸ってもいいよ。
あいつにもちゃんと、話してあるからさ。
ナオキの家とは、昔から、家族ぐるみのつきあいで。
親父はナオキの母さんの血を吸っていたし、
俺も昔から、ナオキのハイソックスをなん足も、真っ赤に染めてもて遊んでいた。
美奈恵と結納を交わしたとき。
ナオキは真っ先に、俺との関係を告げたらしい。

さいしょに声かけたとき?
むろん、ドキドキしたさ。
あいつにはそんなふうに、嘘をついたけど。
ほんとうはドキドキしているゆとりなんか、なかった。
思いつく限り、血を吸わせてくれるあてをたどっていって。
親類のだれもが、俺のために寝込んじゃって。
ナオキは真っ先に貧血で倒れ、ほかの悪友仲間もみんなぶっ倒れちゃって。
きょうじゅうにだれかの血を吸わないと、やっていけなくなる。
そういう日が、やってきても。
校内でなん度も顔を合わせた美奈恵に、俺は声をかけられなかった。
だって、親友の婚約者なんだから。
下校途中、ぐうぜん通りかかった彼女に、自分の欲求を告げたとき。
俺はぎりぎりまで抑えに抑えたもののために、しんそこ切羽詰まっていたのだった。

ガマンしないで、血を吸いなよね。
ナオキだって、いいって言ってくれているんだから。
木陰で彼女を呼び止めるのは、きょうでなん回めになるのだろう?
首すじをハンカチで拭いながら、貧血~!って。
彼女はおどけたように、叫んでいた。
あっ、制服汚したって、だいじょうぶよ。
母がね。街に出かけていって、着替えをなん着も買ってくれたから。
そう言われると、ますます汚しにくくなるじゃないか。
俺は照れ隠しに、彼女の足許にかがみ込むと。
紺のハイソックスに包まれた肉づきのよいふくらはぎに、唇をなすりつけていった。
もう~。やらしいっ。
頭上の叱声とは、裏腹に。
美奈恵は脚を心持ちくねらせて、俺が吸いやすいようにしてくれた。
上から見おろして来る、優しいまなざしは。
ずるずるとお行儀わるくずり落ちてゆくハイソックスに、きっと苦笑いを送っているのだろう。



美奈恵が口紅を、塗ってきたらさ。
キスくらいしても、いいんだぜ?
下校途中の、別れぎわ。
ナオキは大変なことを、口にした。
えっ。
あいつ、お前のこと好きになりかけてる。
それはまずいよ・・・云い募ろうとする俺に。
二番めに、おまえが好きなんだってさ。
自慢げな子供っぽい笑みが、ナオキの満面にくすぐったそうに広がっていた。
一番は、あくまでオレだよ。
そう言いたげに。
そのつぎの日のことだった。
夕映えに彩られた公園の、あのささやかな木陰に。
美奈恵が口紅を塗って、現われたのは。

あお向けに押し倒された草地に。
折り曲げて立て膝をした、白のハイソックスの脚を、
あいつは公園のどこかから、遠目に眺めているはず。
からみついてくる、嫉妬交じりの視線を、くすぐったそうにかわしながら。
俺は美奈恵とのキスに、耽っていた。
初めて交わした口づけは。
息せき切った息遣いに、昂りが昂りを呼んでいて。
しだいにエスカレートした、スカートのなかに侵入を許した手が、
パンティを引き降ろそうとするのを、
彼女の手がけんめいに、抑えていた。

カズヤさんたら、エッチなんだよ。
無邪気に笑んだ口許から白い歯を覗かせて、美奈恵がナオキをかえりみる。
血を吸いながら、押し倒すんだもん。
どきりとするようなことを、口にしながら。
彼女はひとり、背すじを伸ばして。
俺たちの半歩まえを、歩きながら。
制服のスカートの後ろを、黒革の鞄で隠してゆく。
濃紺に変わった制服の、スカートのすそから覗く脛は。
健康そうな白のハイソックスから、清楚な黒のストッキングに変わっていた。
知的な彩りのなかに秘められた、妖しさを。
俺は見逃さなかったし、ナオキもきっと気づいていたはず。

俺が一番だぜ。なにしろ花婿なんだから。
自慢げに胸を張るナオキは、俺がまだ体験していない彼女との一夜を、
上ずった声で伝えてきた。
あいつ、羞ずかしがってさー。脱がせるまで、けっこう手こずったんだ。
でも二番目は、お前ぇに譲るよ。ちょっぴり悔しいけどな。
男ふたりが肩を並べるのは、美奈恵の自宅。
二階の勉強部屋には、まだ灯りが点っている。
あいつ真夜中なのに、制服着て待ってるってさ。
お前じいっと見てたろ?黒ストッキング履いたあいつの脚。
今夜、カズヤくんに、破られちゃうんだよ~って、挑発されて。
あの公園で、ヤッちゃった・・・
照れくさそうに頭を掻いているあいつを、軽く引っぱたいて。
俺はふわりと宙を跳び、勉強部屋の窓辺に身をかがめる。
部屋の主が、窓辺の異変に気づいた気配。
庭先の人影が、ひっそりと姿を消す気配。
今夜の美奈恵は、俺のもの。

擦りガラスごしに、羞じらいが滲んできたのは、錯覚だろうか?
ナオキといっしょに初めて迎えた夜に、美奈恵が脱ぐのを、ためらったのは。
どちらに先に許すかを、もしかすると決めかねていたのかもしれないから。
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