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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女。

2011年06月21日(Tue) 07:00:03

はじめて彼女と、逢ったのは。
真夜中の路上。
勤め帰りの帰り道だったらしい彼女は俺を見ると、
スーツのすそを、ひるがえして。
きゃーきゃー叫びながら、逃げ出した。
まるで誘い込むように、公園のなかに逃げ込んで。
初めてのお遊びは、それは愉しい鬼ごっこ。
汗になったブラウスの胸を、抱きすくめて。
首すじを噛んで、黙らせてしまうと。
ピチピチはずんだ、その身から。
むしろすすんで、血を吸い取らせてくれていた。

帰り道を、変えないで。
命令したって、いいはずなのに。
なぜか懇願をくり返す俺のため、
女は毎晩、スーツ姿をひるがえして、
夜中の公園でランニングに励んでくれた。

今週だったら、毎晩逢えるわよ。
女がそういうときは、吸い取る血の量も、手かげんをして。
一週間、出張なの。
そんなときには、貧血になるまで、吸い取らせてくれた。
格好のよい脚に、欲情をして。
ストッキングのうえから、唇を這わせたときも。
ためらいもせず、惜しげもなく。
淡い肌色のストッキングを、噛み破らせてくれた。

気づいているでしょ?あたし病気なんだ。
たぶんそんなに、長生きできない―――
女は俺の、腕のなか。
ある晩たまりかねたように、そう呟いた。
とっくに気づいていた。
あと半年と、生きられないだろうことを・・・

あたしの血を、ぜんぶ吸って。
ぼろぼろに痩せこけて、死ぬくらいなら。
あなたにぜんぶ、あげちゃったほうがいいんだもの。
女の望むまま、俺は女の血を吸い尽くしていった・・・

あれから一週間が経った。
女はきっと、よみがえる。
俺の永遠の、パートナーとして。
今夜も俺は、彼女の墓のまえに、佇んで。
かすかに身じろぎを始めた気配を、深い土を通して見とおしてゆく。
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