FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

老婦人

2011年08月03日(Wed) 23:29:56

吸血鬼が見初めたのは。
還暦をずっと越えた、老婦人。
いつも優しく、穏やかで。
気品ということばが、服を着て歩いているような彼女。
とっくに寡婦になっていて・・・とくれば、周囲の連中が想像する関係は、ただひとつ。
ところがどうやら、この吸血鬼。
彼女にはいっさい、手を出していないらしい。
毎日のようにしげしげと、彼女の家を訪問しては。
陽だまりのなか、静かに婆さん座りをする彼女の傍らで。
らちもない無駄話を、飽きもせずに繰り返している。
夕方になると。
別人のように押し黙って、ひっそりと。
黒マントを羽織り直す彼に。

あんまり若い女のひとを、苦しめちゃいけませんよ。

彼女はかなわぬたしなめを、遠ざかってゆく後ろ姿に投げてやる。
死なせるほどに愉しむわけではないのだと。
いつだか彼は、イタズラっ子の弁解のように歯切れ悪く。
彼女にひざ枕をしながら、語っていたことがある。

あるときとうとう、
嫉妬深い男たちに、つかまえられて。
彼は灰にされてしまった。
奥さん、悪い虫は退治しておきましたよ。
親切ごかしにそういって、彼女のところに灰を置きに来た連中がいなくなると。
彼女は悲しそうに、ため息をして。
そうして、おもむろに呟くのだった。

悪い子だね。こうなったときに、わたしを必要としていたのね。

彼女はほっそりとした白い指をナイフで切ると、
渇ききった灰の上、バラ色のしずくを一滴また一滴と、
静かに、静かに、垂らしていった。
前の記事
醜女の真心
次の記事
あの・・・もしよかったら・・血を。  ―――さいごの女(ひと)―――

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/2579-c183f3ad