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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

また、あぶれちゃったんだ。

2011年08月14日(Sun) 08:09:25

川っぺりで独り、石投げをしていても。
もう、そんなに愉しいとは思わない年ごろになってしまった。
それでも竜太は独り、石投げをしている。
ぽちゃん。 ぽちゃん。
投げられた石はただ、むなし水音をたてるだけ―――

また、あぶれちゃったんだ。
はじけるような明るい声は、イタズラっぽい稚なさを交えている。
振り向くと背後の草むらの向こう、革製の黒鞄を提げた少女が無邪気に笑いながら手を振っている。
セーラー服を着るようになって、みるみる大人びてきたとはいえ。
しぐさや声色は、まだまだ子供じみている。
なぁんだ、絵理香か。
竜太はふくれ面をつくって、妹の名を呼んだ。
なぁんだは、ないじゃない。あぶれちゃったお兄ちゃんにこうやって、血を吸われにきてあげたんだから。
兄の正体というただならぬ秘密を、あっけらかんと口にして。
絵理香は濃紺のプリーツスカートをユサユサとさばきながら大またでこちらに歩み寄ってきた。
周りに聞こえるだろう。
真顔にかえる兄を、ほどほどに受け流しながら。
いいじゃない~。知ってるひとは知ってるんだし。
傍らの大きな石に腰かけた絵理香は、真っ白なハイソックスの脚を、これ見よがしに見せびらかしながら。
お兄ちゃん、すぐ遠慮しちゃうんだから。
それじゃあ女の子がその気になっていたって、怖気づいてついてこなくなっちゃうよ~。
兄の弱点を無遠慮に言いあてながら、その声色にはどこかいたわりと同情が込められていた。

喉渇いているんでしょ?
横目でこちらを窺う妹の白い横顔に、竜太はとうとうガマンできなくなって。
そろり・・・と起ちあがり、絵理香のほうへとにじり寄ってくる。
ドキドキ。
内心の胸の鼓動の高まりを、けんめいに抑えながら。
絵理香はわざと兄のほうから視線をそらして、川の流れに見入っているふりをしている。
兄貴の掌が、セーラー服の襟首をつかむ。
襟首に走る三本の白のラインが、かすかにねじ曲げられる。
ドキドキ。ドキドキ。
もう、なん度も許しちゃっていることなのに。
それでもまだ、胸の昂りを抑えることができない。
きゃっ。
首すじを引き寄せられたとき、とうとうたまらずに絵理香は、声をあげてしまった。
なぁんだ、やっぱり怖いんだろ―――
からかうような兄の口調に、軽い侮辱を感じながら。
絵理香は精いっぱい、言葉だけでも背伸びをしてみる。
怖がる女の子を夢中にさせるくらいじゃないと、みんな逃げちゃうからっ。
痛うぅ。
直後に咬み入れられた鋭い犬歯に、さすがの絵理香も眉をしかめていた。


きょうも一緒に帰ってくれないの?
家までの道を遮っているのは、竜太の同級生の友田だった。
うん―――ごめんなさい。
俯いて神妙な口調の絵理香に、友田は素直に道をあけた。
数少ない竜太の親友である友田は、竜太の正体を知っている。
おくてで女の子に声をかけることのできない竜太のために、
妹が身代りになって、時々河原や公園の片隅で、しかめ面をしながら血を与えていることも。
それでいながら彼は、囁きつづけてくれていた。
兄さんが血を吸いに来たって、いいじゃないか。
俺はずうっと、あいつの友だちなんだから。
自分の彼女があいつに血をあげるの、悪くないと思ってる。
不意に洩らされた「彼女」という言葉に、言われた絵理香も、言った友田も、照れて無言になっていた。

一緒に帰ろうよ~。
友田が立ち去った後現れたのは、絵理香の親友の遥香だった。
いまどき流行らない三つ編みのおさげが、長く長くセーラー服の襟首のうえではずんでいる。
それともきょうもやっぱ、お兄ちゃんとデートか♪
彼女はまだ、兄の正体を知らない。
いくら親友でも、なかなか言い出せない秘密だった。
おそろいの白のハイソックスのふくらはぎをそろえて歩みを進めながら、
絵理香はふと思った。
兄のまえふたりでハイソックスの脚を差し出して、味比べをしてもらおうよ って、誘ったら。
彼女はいったい、どういう顔をするのだろう?


妹とこうして、真夜中の公園で待ち合わせをするようになって。
もう、何カ月経つのだろう?
組み敷いた制服姿はいつになく女めいていて、
はずむ吐息さえもが、べつの年ごろの女の子のような気がする。
妹がみせるいままでにない色香に、ほとんど初めて女を意識していた。
どうしたんだろう?今夜はいったい、どういう夜になるんだろう?
妹の血を吸い慣れたはずの竜太にして、戸惑いをかくすことができなくなっていた。

きょうの放課後、竜太は友田にぶん殴られていた。
いいかげん大人になれよな。
捨て台詞を吐いて立ち去った友田。
彼が絵理香に並々ならぬ好意を抱いていることを、竜太も薄々と察している。
子供のころから彼の正体を知り、それでもいっしょに遊んでくれた友田。
渇きがどうしても静まらないときに、
女ものみたいに色っぽくないけどな。
そういいながら、運動部のユニフォームであるスポーツ用のハイソックスを履いたふくらはぎを、差し出してくれる仲だった。
彼女ができたら、お前に血を吸わせてやるよ。
そこまで言ってくれる友だちは、そうざらにはいないだろう。

はあっ、はあっ、はあっ・・・
絵理香の息が、ひどく荒くなっていた。
苦しいのか?まだそんなに血を吸っていないのに。
竜太は訝しそうに妹を見、そして、はっとなる。
前開きのセーラー服の胸もとがじょじょにはだけていって、
あらわになったブラジャーの吊り紐を引きちぎったのは、絵理香の手のほうだった。
絵理香・・・絵理香・・・
ばか。その気になっちゃったじゃない。
口では咎めながら、絵理香はむしろ嬉しげだった。
そうして、白のハイソックスの両脚を、ゆっくりと開いていった。
  やっと男になれるんだね。
兄のことをそう、祝福するように―――

手をつないで家路をたどる兄妹は、濃紺のプリーツスカートの下白く映えるハイソックスのふくらはぎを、チラチラと見おろしている。
真っ白な生地に散らされた紅い飛沫には、いつもとちがう意味がこめられていたから。
怯える女の子、夢中にさせちゃったね。
もう―――遠慮しないで進んでいけるよね?
あたしのお友だちの遥香ちゃんに。
あした、お兄ちゃんの正体を明かすから。
きっとあの子なら、いつもの川べりで待っていてくれるよ。
彼女のことも、女にしてあげて。
でもお兄ちゃんのことだから、そのまえにたっぷり、処女の生き血を愉しむのかな?
女になったばかりの絵理香の足取りはサバサバとしていて、言葉つきもいつものよに、あっけらかんとしている。
その代わり―――友田くんには、今夜のことナイショにしてね。
きっと・・・ばれちゃうだろうけど。
絵理香は、肩を並べてあるく兄の横顔を、誇らしげに見あげている。
自分が初めて、身をもって男にした青年のことを。
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