FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

丈の違う長靴下 ~白い皮膚たちの妖しい愉しみ~

2011年08月19日(Fri) 07:13:26

ああ・・・これだから田舎はたいくつなんだ。
17歳のジャック・ライアンはさもつまらなそうに、けれどもうわべだけはかしこまって、
目のまえでくり広げられる大時代的な講釈に、うんざりしながらつきあっていた。
弟のマシュー・ライアンは母親譲りの青い目を輝かせて聞き入っているのだが。
どう考えたって、こんなのインチキ話しに違いなかった。
いわく、きみたちの母方の実家であるこのリッチフィールド家は、代々つづく侯爵の家柄で、
畏友であったガレン伯爵が東方の地で病を得、人の生き血を欲する身になった時、わが身を捨てて血液を施して親友の苦境を救ったそうな。
以来、ガレン伯爵に対する献血行為は、侯爵の夫人や令息令嬢をも巻き込んでうけ継がれ、母上の代にまで及んでいる。
その家系に属する少年はだれもがこの崇高なる献血行為をいちどは体験し、良質の血をめでられた一部のものは、みずからも嗜血行為に耽ることもある。
最も若年で半吸血鬼化した少年は、ギルバート・リッチフィールド14歳。
そのつぎに若くして半吸血鬼となったエレーヌ・リッチフィールドは、少女として育てられたが、やがて血の本能に目ざめ、自ら叔父に抱かれていった・・・

都会の教育を受けてきた17歳のジャック・ライアンにとって、すべてはファンタジー以下の絵空事だった。
たしかにきのう初めて見せられた先祖の記録なるものに、そういう名前があったようには憶えているが。
一足先に里帰りしていた母は、いまごろ邸で昼餉の用意をしているころだろうか。
遠目に見たリッチフィールド邸は、城館のように壮麗だったけど。
明るくてあけっぴろげなママには、なんだか似合わないな。
それがジャックの正直な感想だった。
あと約二時間後、古めかしい邸で彼を迎える母はきっと、いうだろう。
―――面白かった?田舎先生のおおげさっぽいほら話。

いかにももったいぶって講釈をぶっている丸ぶち眼鏡の田舎教師は、
18世紀の貴族でもあるまいに、胸元に女みたいなフリルつきのブラウスを着込んでいて、半ズボンの下には、白タイツ。
ごつごつとした男の脛でも、毛脛さえみせなければ男だか女だかわからないや。
ジャックはぼんやりと、そんな感想を抱いていた。

濃紺のジャケットに、おなじ色の半ズボンにカーディガン。
カーディガンの襟首からは、真っ白なシャツの襟が鮮やかに覗き、
半ズボンの下から覗く太ももは、透きとおるように白い。
ぴかぴかの黒の革靴の足首からひざ小僧までは、兄弟まるでおそろいのように、濃紺の長靴下が脛を蔽っている。
主調色の紺色は、都会の学校のイメージカラーだった。
まだ少年の気配を漂わせるジャックの弟、マシュー・ライアン13歳は、ひざ上までの長靴下の脚を誇らしげにピンと伸ばして、兄とならんでさっそうとした足取りを進めてくる。
純粋な白人の血が流れる皮膚は透きとおるほど白く、深みを秘めた青い瞳と、それに彫りの深い秀でた目鼻だちは母親譲りのものだった。
兄の長靴下は、ひざ下まで。
弟のそれは、ひざ小僧の上まで引っ張りあげられていて。
上背の豊かな兄と背丈の差はあったけれど、遠目には長靴下の丈だけはおなじに映った。

ふと気になったのは。
恭しく後に続く母の実家の執事はともかく、そのはるか後ろから人影がひとつ、さっきからずうっと兄弟のあとをつけてくる。
稚ない弟は見慣れぬ風景に夢中になって、ひざ上丈の長靴下の脛を無防備にさらして歩みを進めているけれど。
さっきの田舎教師の話では、リッチフィールド家の家系の少年は誰もが皆、吸血鬼に襲われるときには長靴下を履いていた・・・というのだった。
まさか・・・ねぇ。
やがて人影の正体が分かりかけると、少年はさっき抱いた警戒感をあっけなく放棄した。
距離を詰めてきた人影はずんぐりとしていて、足許だけは妙にほっそりとしている。
―――さっきの田舎教師じゃないか。
きっと、帰る方向が同じなのだろう。
少年は先を急ぐより、むしろあのもったいぶった田舎教師をからかってやろうと思った。

兄さん、どうしたの?先行くよっ。
母に会いたい一心で足を速めていたマシューのほうへ手を振ると、
先に行ってて。ボクはあの先生に話があるから。
ジャックはそういってきびすを返し、逆戻りをした。
にーさーん。
声だけは後ろを振り向きながら、弟は意外に速い足取りで視界から遠のいていった。

ねぇ、先生。話があるんだけど。
おや、なにかな?
先生のさっきの話、あれぜんぶ嘘だろう?
ほう・・・
自分の演説を真っ向から否定されて、けれども田舎教師は動ずる風もなく、ほくほくと人の好さげな笑みを泛かべるばかり。
それはそうだろう。年端もいかぬ少年の言い草にいちいち腹を立てるほど、彼は小人物ではなかったのだから。
そうじゃない証拠を、お目にかけようか?
動ずる風もなく返された言葉に、ジャックは怪訝そうに男の顔を見あげた。
田舎教師の福々しい横顔に昏い翳をよぎったのを、目ざとい少年は見逃さなかった。
もしかして小父さんが・・・ガレン伯爵?
田舎教師のどんぐり眼が急に鋭さを帯び、つぎの瞬間かれは飛びかかってきた。

連れ込まれた納屋のなか。
めくら滅法にじたばたと暴れる濃紺のハイソックスの脚に蹴飛ばされて、わらがそこらじゅうに舞い散ってゆく。
あっ!何するんだ!?やめろっ!!
ジャックは叫び声をあげながら、だれかが聞き咎めて駈けつけてくれることにわずかな期待をかけた。
それくらい田舎教師の猿臂に込められた力は剛(つよ)く、スポーツに鍛えられたはずのジャックの両肩を抑えつけていて、
分厚い唇の両端から剥き出された鋭利な牙は、白い首筋にじりじりと近寄せられてくる。
目のまえに迫らされた牙がひどく黄ばんで不潔に思えたのと。
皮膚をチクリと突き刺されたとき、かすかに痺れるような快感が走ったのと。
それだけを、記憶している―――
数分後。
両手を力なくだらりと伸ばしたジャック・ライアンは、白いシャツの襟首を赤黒く染めながら、
かれに蔽いかぶさってゴクゴクと喉を鳴らす獣を相手に、その好むままにうら若い血潮で喉の渇きを飽かしめていた。

リッチフィールド邸から洩れる団らんの灯りが、遠くここまでも望見できた。
風とおしのよくない納屋の空気は澱んでいて、一歩外に出ると清々しい夜風と遠目に見える邸の灯りとが、ジャック・ライアンの心を和ませた。
それはある種不思議な和みだったのだが、きょうはじめて血を吸われたばかりの彼は、まだそのことに気づいていない。
晩御飯に呼ばれているのだろう?そろそろ行かないと怪しまれないかね?
背後から声をかけてきたのは、昼間に呼びとめたあの田舎教師―――いや、ガレン伯爵だった。
昼間の福々しい顔とは裏腹に、夜目に映る彼の面貌はひどく蒼白く、怜悧に尖っている。
ああ、まったくだよ。怪しまれるったら。
少年は吐き捨てるようにそういうと、声もなくにじり寄って来た吸血鬼のまえ、紺の長靴下の脚を差し出していた。
革靴の足許に手を巻きつけて、男は愛撫するように、むき出しになった少年の太ももを唇でなぞり、舌を這わせる。
ちぇっ、いやらしい。
堕ちた少年は露骨に舌打ちをしながらも、伯爵の痴態ともいえる仕打ちに、脚の向きをかえて応じていった。
気品を感じさせる紺の長靴下にくまなく唾液が染み透るまで、伯爵がその行為をやめないと知っているからである。
噛むんだろ?ほら、ちょっと手をどけなよ。
ジャックはずり落ちてきた長靴下をひざ小僧のすぐ下まで引きあげると、そのままうつ伏せになっていく。
お昼に巻き散らしたわら束は、この妖しい逢瀬の褥に変わっていた。
ジャックの脚は、咬みごたえがいいね。
田舎教師のからかいにめげずに少年は、
そうだろう?都会育ちだから、その辺の子とは出来がちがうんだ。
リッチフィールドの血だな。
伯爵はそうやりかえした。
ちゅ、ちゅう~っ。
人をくったような、あけっぴろげな音をたてて。
少年の生き血が、吸い取られてゆく。
かすかになってきた視界の彼方。
邸の灯りが薄ぼんやりとなってきた。
お行き。そして、もっと新鮮な血をわしに分けてくれ。
男の言いざまにこくりと頷くと、ジャックは言った。
マシューの長靴下を、ボクに履けって言うんだろう?
丈の長い靴下を噛み破りたがる変態な吸血鬼や、やっぱり長い靴下をやたらと好む弟と違って、ジャックはそういう趣味はまるでなかったけれど。
いまはその趣味に付き合ってやってもいい気分になっていた。

遅くに戻った長男のことを、母親のべスは怪しむふうもなく、食卓にあげようとした。
今夜は食欲がないからといってジャックが寝室に引き取るときも、風邪をひかないようにね、とねぎらっただけだった。
あけっぴろげな母さん。こういうときには警戒心がなさ過ぎるんだね。
少年の目にはもはや母親さえも、獲物のひとりにしか映らなくなっている。
軽蔑と憐憫の入り混じった目で母親を見返ると、息子の本心を知ってか知らずか、彼女は金髪を揺らして、グンナイ(good night)と囁いて小手をかざして息子を見送った。

どうしたの?こんな夜中にひざ上の靴下履いて来いなんて。
弟の活き活きと輝く蒼い瞳に、引き込まれそうになったのは。
彼の白い皮膚の下に脈打つ血潮が、そうさせたのだろう。
眠れないんだ。話をしよう。昼間みたいに制服着ておいで。
長い靴下も、忘れないようにね。
兄弟ひとりひとりにあてがわれた寝室を抜け出して、
兄の言いつけどおりのスタイルで訪れた弟は、
自分の身に向けられた邪悪な意図に、すぐ気づくことになる。
もっとも気づいたときにはもう、ひざ上丈の長靴下のあちこちに、いくつも噛み痕をつけられて。
それでも妖しい闖入者を相手に、もっと・・・もっと・・・って、呻きつづけるようになっていたけれど。

ほら。どうだい?ボクの腕前は。
真夜中の納屋を訪れたジャックがそんなふうに、弟を仕留めた腕前を伯爵に自慢したのは、つい夕べのことだった。
弟が好んでひざ上まで引き伸ばして履いた丈の長い靴下も、逞しくしなやかに成長した兄の脛をおさめるとひざ小僧の下まで届くのがやっとだった。
血の味だけじゃなくって、靴下の味まで違うかい?
ジャックは伯爵と初めて逢って以来のからかい口調を、おさめようとはしていない。
少年の血を味わったあとになっても、伯爵はかれの悪口をうすら笑いで受け流しながら、うら若い血を愉しむようになっている。
きょうもまた、田舎教師は少年の訪問を受けていた。
淡いブロンドの髪の輝きを抱きすくめながら、首筋を突き刺し、白い皮膚を噛み裂いてゆく。
おや―――
両腕のなかに埋もれたブロンド髪が、昨晩のそれよりもやや濃い栗色を帯びているのに、伯爵は気づいた。
きみは、だれ・・・?
ひざ下までの濃紺の長靴下を自慢そうに引っ張り上げているのは、弟のマシューのほうだった。
兄さんが、代ってくれっていうものだから。
そうかね。感心な弟さんだ。では兄さんは今夜はベッドでぐぅぐぅかな?
ううん。
マシューは大人しげにかぶりを振った。
小父さん知っているんでしょう?あの伝説を話してくれた帰り道、ボクを送ってくれた執事さんのこと。
彼・・・ほんとうは、ギルバート叔父さんなんだよね?
いまごろは兄さんが、彼の相手をしているよ。
兄弟で、相談したんだ。たまには違う味のほうが、飽きないだろうからって。

田舎教師の講釈で語られたギルバート・リッチフィールドは、13歳で供血の歓びに目ざめ、一族では最年少の14歳で、吸血の愉しみに耽るようになったという。
彼、ボクを最年少にしてくれるつもりみたいだね。
ボクが田舎にいるあいだに、血をぜんぶ吸ってくれるって約束してくれたんだ。
初めて執事さんの牙を享けたのは、お邸に戻ってすぐのこと。
ママの帰りはまだだからって、寝室に案内されて。
そこがそのまま、ふたりの褥となっていた。
咬まれた首筋にジンジンとした疼きを覚えながら、自分の生き血でゴクゴクと喉を鳴らす親類の叔父さんを、マシューは素直に受け入れていた。
血が欲しいんだね?もっと吸ってもいいよ。ご先祖はきっとそんなふうに、伯爵さんを助けてあげたんだろう?
半ズボンから覗く太ももに牙を埋められながら、彼は初めての射精を経験した。
濡らした半ズボン、ママはなにもいわないで、洗ってくれたよ・・・

その晩の伯爵は、ひざ丈のキュロットの下、しなやかな脛をやはり長靴下で蔽っていたけれど。
いままでの白ではなくて、薄々の黒だった。
伯爵の今夜の靴下、なんだか女もののストッキングみたいだね。
マシューはそういって伯爵をからかった。
伯爵は真顔になって、告げたのだった。
これはきみの父上からいただいたものだよ。その昔べスが穿いていたものなんだ。
今夜が彼女の息子の血を吸い尽くすのにふさわしい夜だろうと思ってね―――


親愛なる息子たちへ
きみの母さんに求婚したとき。わたしは初めて一族の生い立ちを知らされた。
それでもべスを愛するのか?ときかれて、わたしは即座に、血をぜんぶ捧げると約束した。
だからきみたちが生まれたとき。父さんはとっくに身体じゅうの血を失くしていたのだよ。
もっともこの手紙を読んだ、いまごろは。
きみたちも父さんと、おなじような身体になっているのだろうね。
そうして田舎と都会とを行き来するだろうことは、父さんにも察しがついている。
べスの実家の人たちとおなじくらい、わたしの家の血も美味しいことを、だれもが身を持って証明してしまったのだから・・・

最年少記録更新、おめでとう
                      ―――父さんより。


あとがき
この二作、じつは今月の初旬にすでにほぼ描きあげていたのですが。
なんとなく画像といっしょにしたくなって、画像の都合であっぷが遅れ、
それから気分であっぷが遅れ・・・
それほど気を持たせるような内容では、ないはずなんですがね。(^^ゞ

縮小加工080522! 005 あっぷ110819
前の記事
オフィス・プレイ
次の記事
母さんも仲間に入れて♪

コメント

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
by -
2014-03-18 火 23:06:30
編集
> 匿名希望さま
こちらこそはじめまして。
ヘンなブログですが、興味を持っていただきありがとうございます。
ハイソックスお好きなんですね。^^
コチラにはそのテのお話が数多くひしめいておりますので、お気に召したお話がありましたら、ソチラへのコメントもお待ちしております。
「少年のころ」や「少女」のカテゴリに多いです。

たとえば、こんなのが。

「吸血ごっこ」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-325.html
お父さんの郷里に遊びに行った姉と弟が、そこで仲良くなった吸血鬼の男の子に・・・。^^


「軟弱な新入部員」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2405.html
吸血鬼の男子のチームに負けたあとに待っていた「祝賀会」での出来事。

「スクールハイソックスに魅せられて」
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-2740.html
ハイソックス好きの少年と同好の吸血鬼との、ほほえましい交流?

画像つきのお話があまりなくって、すみません。
また、リブタイプのハイソックスの画像つきのお話は本編くらいですが、懲りずに?あっぷしてみたいです。
(^^)

画像についてでうが、リンク先のいちばん下にある「妖艶なる吸血」掲示板にハリコが可能です。
by 柏木
URL
2014-03-20 木 07:57:13
編集

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/2601-ab429199