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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

貞操喪失の夜。

2011年10月19日(Wed) 06:10:53

午前1時17分、貞操喪失―――

冷たい響きのする事務的な声で、悪友は妻の運命を告げてきた。
受話器を握り締める掌に、思わず力がこもっていた。
時計を見ると、もう二時をまわっている。

ずいぶんしつこくやったんだね。

夫としては穏やか過ぎる苦情に、一転して彼の声はくだけていた。

いやぁ、さいしょは厭がって抵抗されたんだけどね。
さいごはノリノリになっちゃったよ。
奥さん、いい身体してるんだね。うらやましいや。
時々デートに誘うけど、いいだろう?
ああ、いま奥さんに代わるから・・・

受話器を通して、電話口が入れ替わる気配。
いったいなんと、声をかければいいのだろう?

ああ、あなた・・・?
ごめんなさい。なんて言ったらいいのかしら・・・言葉が思いつかない・・・

妻の声は切れ切れで、まだ息遣いがおさまらないらしい。
ぼう然自失のていなのは、無理もないだろう。

よかったの・・・?
よかった。

短いけれど、ハッキリした声色だった。
口走ってしまって、思わず自分の口を手でふさぐ気配がしたけれど。
わたしはかまわず、つづけていた。

うまくやっていけそう?
怒らないの?
できてしまったものは、しかたがないさ。でも、ちゃんと家に戻ってくるんだよ。
そうね・・・明日はケンイチのテストの日だったわね。

声色がようやく、母親を取り戻しかけたとき。
妻ははっとして、口をつぐんだ。
後ろからまわされた掌が、妻の乳房を掴んで揉んでいる・・・
受話器を通してなんとなく伝わる、熱っぽい気配。

キモチ・・・いいの?
ゴメン、くせになりそう・・・
じゃあ、おめでとう。
いいの・・・?
ああ。本当は・・・俺のほうからきみのことを彼に頼んだんだ。
ずるい。

妻ははじめて、クスッと笑った。
ホテルにいるあいつに、荷物を届けてほしい。
わたしがそういって、なにも知らない妻に持たせたのは
―――妻じしんの着替えだった。

愉しんじゃうからね。

宣言する妻に、

朝までゆっくりしておいで。

売り言葉に、買い言葉。
悪友が割って入った。

受話器、このままにしておくからさ。
気の済むまで、聞いてていいよ。

ああ・・・うちの家内と、仲良くね♪

一家の主婦を汚された家の受話器は、明け方まで置かれることがなかった。

帰宅した妻は、わたしの持たせた服に着替えていた。
こざっぱりとしたワンピースは、すこししわになっていて、
別れぎわまで彼女におおいかぶさっていた熱情が、ほの見える思いだった。
帰ってくるなり、抱きすくめて。
そのまま土間に、押し倒していた。
息子はまだ、すやすやと健康な眠りにおちている―――

よくわかったわ。
あなたたち、ほんとうに仲がいいのね。

乱れ髪を掻き除けながら、起きあがった妻―――
別人のようにさばけた顔つきをした女が、そこにいた。

木曜の夜、お誘い受けているの。
あなたにはナイショ・・・って言われたんだけど、いちおう話しておくね。

妻は妻なりに、わたしに忠実さをみせようとしていた。

あれ以来。
週にいちどか二度、妻は彼の誘いに応じている。
ときにはわたしにも告げずに、逢っているらしかった。
家に招んでいるときも、きっとあるのだろう。
わたしも妻も、もちろん息子も吸わない煙草の煙が、
帰宅したばかりのリビングにたちこめていることもあったから。
けれども妻はいつもひっそりと笑い、おかえりなさい―――というばかり。
今週はなん着、遠くのクリーニング店に服をだしたことだろう?
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