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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

たまたま居合わせたからさ。

2011年10月19日(Wed) 07:40:08

どうして妻を、襲ったんだ?
そう訊くわたしに、男は無表情に応えた。
たまたま居合わせたからさ。

病院の待合室でのことだった。
提供された看護婦の生き血に飽き足らず、病室を抜け出したこの吸血男は、
たまたま待合室に居合わせた妻を襲って、妻の生き血を気絶するまで吸い取ったのだった。
それ以来、妻は熱に浮かされたようになって、男の棲み家を定期的に訪ねるようになっていた。

そういうほうが、まだしも気が楽だろう・・・?

男は相も変わらず、無表情だった。
たしかに、男のいうとおり。
その無感情な雰囲気が、まだしも救いになっていることを、いやというほど自覚させられながら。
体内の血液を無感情に摂取されている妻の、生き地獄のような日常を、思わずにはいられなかった。

痛がって帰ってくるときもある。

そうだろうな。なんども噛みつくからな。

服が血で汚れたまま、街をさ迷い歩いていることもある。

そうかもしれないな。俺に血を吸われると、ぼうっとなっちまうからな。

せめてもうすこし、なんとかならないだろうか?

奥さんの苦痛を和らげたい・・・って?

そういうことさ。

わかった。

男は短くこたえて、わたしとの会見を打ち切った。
ふたりのあいだを取り持ってくれた婦人会に、わたしがお礼をいっているあいだ。
男はあともふり返らずに、立ち去っていた。

吸血鬼と共存しているこの街では。
いちどできてしまった関係は、黙認するしかなかった。
すべてを喪って、本気で移り住む気にならなければ。
妻にはむろん、そんな気はなかったし。
わたしもそうした妻と、別れようとするつもりは毛頭なかった。

つぎの日から。
妻の顔つきが、変わっていた。

これから献血に行きますからね。

ショルダーバッグを提げ、花柄のスカートのすそをひるがえして出かけていく妻。
行く先に待ちうけている毒牙は、妻の理性を狂わせたらしい。
時には性的な交わりも、あるらしく、
すそを汚したスカートを、夫に視られないようにこそこそとクリーニングに出している気配が、まざまざと感じられる。

苦痛を伴う、無感情な採血行為と。
愉悦を伴う、淫らな献血遊戯と。
夫としては、どちらを受け容れるべきだったのだろうか?

すまないな。
おれはけっきょく、あんたの奥さんを、食べ物としてしか視ることができない。

もういちど逢った時の男の言い草が、なぜか無上の慰めのように思われた。
彼はわたしには、明らかに友情を感じている―――
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コメント

おはようございます
>おれはけっきょく、あんたの奥さんを、食べ物としてしか視ることができない。

これは友情の印としての言葉なんですね。

奥様は・・・どうなのかしら。
生きていくためには必要な「食べ物」ではあるけど・・・そこに感情はないだろうし・・・。

最近なんだか「言葉の裏の意味」を考えすぎていけないわ。
by 桜草
URL
2011-10-22 土 10:25:06
編集
おひさしぶりです♪

このお話、ちょっとひねくり過ぎたところがありましてね。

身体だけの浮気なら、まだしも我慢できるだろう?
それとも奥さんの心まで、あんたは奪われたいというのかい?

彼はきっと、こう言いたかったのだと思うのです。
ま~。
あんまり深く考えるほどの意味は、ないとおもいますよ~。
たぶん。^^
by 柏木
URL
2011-10-22 土 21:43:54
編集

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