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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

毒ベビに咬まれた!

2011年11月08日(Tue) 05:55:56

山歩きのさいちゅうに。
藪からヘビが現れて、咬まれてしまった。
痛ッ!
飛び上がったときには、もう遅い。
毒がぐるぐると、全身にまわってゆくのが、ありありとわかった。
あたりには、人っ子ひとり、いなかった。
ここで死ぬのか?
あきらめかけたそのときに、向こうから歩み寄って来る人影。
わたしは懸命に、助けを求めていた。

おや、ヘビに咬まれなすったね?そりゃ大変だ。
男はその場で、わたしのズボンをたくし上げると。
こういうのには、慣れてるんで。
そういうと、傷口に唇をあてがって、毒を吸い出してくれたのだった。
これで助かる―――
その安堵は、つかの間だった。
ちゅうちゅう。ちゅうちゅう。
男はいつまで経っても、吸いやめなかった。

あんた、吸血鬼だったのか・・・?
すっかり顔いろが蒼くなってしまったのが、自分でもわかった。
とにかくきみの生命を救ったのは、間違いないからね。あとは、役得というやつだよ。
男はにんまりと笑いながら、こんどは首すじに唇を吸いつけてきた。
毒ヘビなんかよりももっとたちのわるい、ほんものの毒ヘビが。
わたしの身体にからみついてきた。
ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・

助けてくれたお礼に、都会の家に招待するよ。
家内のことも、紹介するから。
生き血を吸わせてやることのできる女といったら、あいつ意外にあてがないのでね。
そんなわたしの言い草に、男はくすぐったそうに頷いていた。

ごちそう用意しましたのよ。
それともまずは、おビールかしら?
よそ行きのワンピースのうえにエプロンを着けた妻は、
なにも知らずににこやかに応対していたけれど。
男はスッと妻の傍らに影を寄り添わせると。
いきなり両肩を抱きすくめて、咬みついた。
毒ヘビの牙が、妻のうなじに刺し込まれるのを、
みすみす目の当たりにさせられながら。
わたしは手出しひとつしようとせずに、
妻がヒロインの吸血シーンに、見入ってしまっていた。
じんわりと湧いてくる妖しい嫉妬に、胸の奥をとろ火で焦がされながら・・・

男にいわれるままに、妻のうなじにとりついて。
まだ吸い残した血潮に濡れた傷口を、つよく吸って。
山奥で失くした血を、補うと。
いっぺんに吸っちゃ、だめ。
妻はわたしを巧みに制していた。

浮気相手、家に呼ぶから。
私、男の血を吸うわ。
あなたには、そのひとに奥さん連れて来させるから。
あなたたちふたりで、血を吸って。
そういえば、年ごろの娘がいるって、いってたわ。
ふたりで仲良く、山分けしてね。

まさかうちの妻が浮気をしていたなんて、
夢にも思っていなかったけれど。
生き血にありつけると耳にすると、
咎めだてすることをつい、忘れてしまっていた。
それくらいに。
わたしの喉は、渇きに引きつつっていたのだろう。

そのあとは。
あなたのお兄さまをお呼びしましょう。一家そろって。
そうしたら。
私の兄の家族も招待するわ。
このマンションのひとたちも。
おつきあいの親しい順に、お呼びしましょうね。

男が山奥へと立ち去ったあとも。
都会の郊外のこの街なかに。
吸血の病が、ひっそりと浸透していった。
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