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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

献血家族

2011年11月25日(Fri) 07:36:52

いつものように早めに出勤をすると、
事務所の所長がわたしを呼んだ。
単刀直入だった。

おめでとう。きみと、きみのご家族の血を吸う相手が決まったよ。

えっ。
息を呑んだわたしだったが、来るべきものが来た…という雰囲気で。
びっくりするほど動揺もなかったし、平静に受け止めていた。

いや、きみの奥さん。けっこう人気あるんだなあ。
美人で気だてがいいって評判らしくてね。
あと、年ごろのお嬢さんもいるだろう?それもおおきいみたいだね。

所長はひとり言をいうようにそう呟くと、隣室のドアに向かって、入りなさい、と言った。
入ってきたのは、坂尻さんだった。
いつも身近で業務の補助をしてくれる、年配の男性。
たしか息子と同い年の男の子がいたはずだ。

奥様がすでに、村の顔役のお相手をしていてね。
長いこと、家に戻っていなくて、実質やもめ暮らし…そうだったね?

所長の念押しするような問いに、坂尻さんは穏やかにうなずいていた。
身近な人間に家族や自分自身の血を吸われる。
抵抗がなかったといえばうそになるけれど、
不思議な安堵感を覚えたのも事実だった。
いつも黙々と働く坂尻さんには日ごろから好感を持っていたのは確かだけれど、
それは果たして、安どの理由になるのだろうか?
村の顔役に、奥さんを日常的に「お相手」をさせている―――
「お相手」というのはもちろん、吸血行為のことだろう。
案外と、男女の関係もあるのかもしれない。
第三者のまえでそんなことを上司に口にされているのに、穏やかな顔つきのままの坂尻さん。
妻を寝取られているような事実を明かされながら落ち着き払っている彼が、近々わたしとわたしの家族の血を吸おうとしている。
異常な立場なのに、わたしの気持ちはなぜか、ひどくしっくりと、落ち着いていた。

では、さっそく手続きを・・・
私はこのあと出かけなければならないのでね。
あとはおふたりで、よろしくやってください。

所長は無表情にそういうと、そそくさと席を立っていった。
手渡されたのは、黒の長靴下が一足。
女もののストッキングのように、薄いやつだった。
そういえば事務所のなかで、こんな靴下を履くものが、このごろ目だって増えていた。
だれが仲間になったのか。だれがまだなのか。
おなじ装いをすることが、きっと暗黙の諒解を招くのだろう。

薄っすらとしたナイロンに染まったふくらはぎを、たくしあげたスラックスの下からまる見えにさせると。
坂尻さんはスッと屈みこんできて・・・
くちゅっ。
靴下ごしに吸いつけられた唇が、生々しい音を漏らしていた。
ぬるぬるとした唾液を薄い生地にしみ込ませながら。
坂尻さんの唇が、ふくらはぎをなぞるようにして、這い回る。

キモチわるい、でしょう?

ほろ苦い笑みを浮かべて見あげる彼に、いえいえ、お気の済むように…わたしはさばけた応えをかえしていった。
圧しつけられた唇の両端から、チクチクとした硬質な感触が、滲むように皮膚を冒してきた。

ああ…噛むんですね?

すこし痛いですが…じき慣れますよ。

わたしがゆっくりと頷くと、それに応じるようにとがった異物が皮膚を冒してきた。
ア…
めまいを覚えたわたしは、その場にくずおれていた。
うつ伏せになった姿勢のまま、血を吸い上げる音がチュウチュウと、いつまでも鼓膜を振るわせつづけていた。
獣になった坂尻さんは、それはしつように、唇をなすりつけてくる。
ジュルジュルと汚らしい音をたてながらわたしの生き血をむさぼる坂尻さんに、わたしはなぜか同情と共感をおぼえはじめていた。
もっとお吸いなさい。そんなに喉が渇いているのなら―――
暖かい血液が傷口を通り抜けるたび、慕い寄ってくる唇が、ひどくいとおしく感じられた。

帰宅して、派手に伝線した薄い長靴下を洗濯機のなかに放り込む。
つぎの朝、出勤するまでのあいだに、妻はそれを乾かしておいてくれた。
洗濯機の中身を改めた妻は、吸血の痕跡を残した靴下を見て、きっと息を呑んで、そしてあきらめたように笑ったに違いない。
きちんとたたまれた下着のいちばん上にとぐろを巻いている薄手の靴下には、手に取らなくてもわかるほど、派手な裂け目がついている。
きょう…ちょっと出かけてまいりますので。
おずおずと背中越しに投げられる、とってつけたような妻の声。
そう…いってらっしゃい。
それだけではあまりに他人行儀だと…わたしはひと言つけ加える。
気をつけて。
動揺した面差しをあわてて引っ込めて、妻はそそくさと、家事に戻っていった。

あした奥さんとお逢いしますが…立ち会われますか?
それだけはちょっと、ご勘弁。

きのう事務所で交わしたそんなやり取りが、ふと脳裏をかすめる。
そういえば・・・昨夜の夫婦の営みは、ひどく濃密だった感じがした。


あとがき
前作の続きです。
どうも男性が吸血されるシーンばかりつづきますなぁ・・・。
前の記事
父さんの献血。
次の記事
ライン入りハイソックスの放課後~2 全部咬み破る約束

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