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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

献血家族 ~父さんに逢ってくれないか?~

2012年01月10日(Tue) 06:22:32

≪息子の述懐≫
父さんに逢ってくれないか?
いつもボクの血を吸っている坂尻くんが、血を吸う唇をふと放すと。
思い切ったように、そういった。
いつかそう来るだろう―――そう思っていた依頼ごとに。
ウン、いいよ。
自分でもびっくりするくらいあっさりと、ボクはOKの返事をしてしまっていた。
すまないね。
笑いをよぎらせた唇には、さっき吸い取ったばかりのボクの血が光っている。
もう少し、いただくよ。
そういって坂尻くんは、さっきまで唇を這わせていたほうとはべつの脚に、唇を吸いつけてきた。

ハイソックスを履いたまま、ふくらはぎを咬ませる。
同性同士でも、けっこういやらしいものなんだな。
いつものように、微苦笑を泛べながら―――
ずり落ちかけたハイソックスを、ボクはゆっくりと引き伸ばしていく。
ふくらはぎのいちばん肉づきのいいあたりに、帯を巻くように走る二本の赤いラインが。
もっと濃厚な深紅のシミが、不規則に塗りつぶされている。

すまないですね。
初めてお目にかかった、坂尻くんのお父さんは。
白髪交じりの頭をした、初老の男性だった。
よほど齢が離れているのか―――そう思えるほど老け込んでいたのは。
―――このごろ、血を吸っていないんだよ。
傍らから耳打ちしてくる坂尻くんの言う通りなのだろう。
そうでもないさ。
息子の言いぐさを聞きとがめたお父さんは、微苦笑すると、ボクに向かってこういった。

きみのお父さんからは、ときどき血をいただいているんですよ。

そうなんだ・・・

ちょっとびっくりしたけれど。

じゃあ、ボクの血もお口に合うかもしれないですね。

しぜんと、そんな科白を口にしてしまっていた。

―――このごろ吸血を控えていたのは、息子があなたを連れてくると言ってくれていたからなのですよ。
笑んだ唇から、ちらりと漏れた白い歯は。
歯並びのよく並んだ前歯から、ひとつ手前に伸びた犬歯を、きわだたせていた。
やっぱり靴下破るんですか?
わざとちょっぴりメイワクそうに、言いながら。
それでもボクは、真新しいおろしたてのライン入りハイソックスの脚を、見せびらかすように伸ばしていた。

引き抜かれてゆく、生命の源泉―――
それがたいせつなものだということを、じゅうぶんわきまえたうえで。
片方の脚を押し戴くように、両腕に抱え込んで。
優しく吸いつけられたはずの唇に隠れた牙は、
むぞうさに皮膚を破り、血管を食い破っていた。
根元まで埋め込まれた牙が、リズミカルなあの疼きを、妖しくしみ込ませてくる・・・
大事なものを、吸い取らせてもらっている。
そんな想いが伝わってくるような、吸いかただった。

さすがは坂尻さんの息子さん。いい血をお持ちですね。
目を細めて称賛を口にするお父さんのまえで、
ボクは照れくさいような、誇らしいような、不思議な快感に浸っていた。
もちろん、吸わせすぎちゃった貧血の立ちくらみで、頭はくらくらしていたけれど。

そう、坂尻くんに、血を吸われはじめてからのことだった。
身体のなかをめぐる血液の実感を、ある種のいとおしさとともに意識するようになったのは。
そのいとおしさを込めて、ボクはわが身をめぐる血液を、飢えた男たちのために送り出してゆく。
軽い失血がもたらす、あのズキズキとする愉悦に浸りながら。
ボクは、血を吸うものの歓びを知るようになっていた。
まるでボク自身が、イキの良い血を味わっているような。
不思議な快感が、身体じゅうをかけめぐる―――
もっと、吸い取って。
もっと、ゴクゴクやって。

―――こんど、お母様を連れてきてくれますね?
耳元に吹き込まれた、悪魔の囁きに。
ボクはイタズラっぽい微笑をたっぷりと浮かべて、大きくうなずき返してしまっている。
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