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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

妻の墓詣り

2012年02月07日(Tue) 07:57:08

招かれない家に上り込むことはできないという習性は、たしかにそのとおりだったけれど。
吸血鬼が太陽の光を避けるなどと、いったいだれが思いついたのだろう?

眩しいほど照りつける陽射しの下。
細い参道が白々と、どこまでも延びている。
植込みの木の葉は、さやさやと淫らな葉擦れをたてながら。
忌まわしいほどぎらぎらと、輝いていた。

オレンジ色のスーツは、墓詣りにはいかにも、不似合いなはず。
だってわたしの妻が未亡人となって、まだ半月と経ってはいなかったから。
けれども解放された人妻は、夫の血を吸った男に狙われて。
なき夫があがり込むことを許してしまった自宅のなか、我が物顔に抑えつけられて、
首すじをがぶりと、噛まれてしまっていた。

あっという間に喪服をはぎ取られた未亡人は、
清楚な黒のストッキングを、淫靡に輝かせながら。
夫を弔うための装いを、ふしだらに着くずれさせていって。
二着持っていたフォーマルスーツを、二着ながら。
夫の仇敵の手慰みに装って、まとったわが身から、破り取らせてしまっていた。

あなたのために着る喪服は、もうなくなっちゃった。
テーブルのうえに置かれた、小さな写真立てを両手に取って。
わたしの写真にしみじみと語りかける妻を、隣室から覗き見てしまうと。
わたしの去ったこの家の主人がだれなのか、自覚せずにはいられなかったけれど。
その感情は決して、居心地の悪いものではなくて。
むしろ相棒の手並みの鮮やかさに、わたしは惜しみない称賛を覚えていた。

きょう、妻が手を引いているのは、わたしの面影を宿した少女。
おさげに結った長い髪を、墓地の風にたなびかせて。
無機質な巨石のまえ、神妙に手を合わせる。
回れ右をして、墓域から出ようとすると。
彼は母娘のまえ、道を遮るように立ちはだかっていた。
劣情をたぎらせる飢えた吸血鬼を前にして。
肌色のストッキングに包まれた、ふっくらとした白い脛が、いともおいしそうに映ったものだった。

驚く少女を、母親は制していて、
己の情夫に、ていねいにお辞儀をすると。
娘の頭を軽く抑えて、おなじ動作を促していた。
佇む少女のまえ、母親はまるでお手本を見せるかのように。
オレンジ色のフレアスカートをちょっぴりめくって、
あらわにした太ももを、男の唇に侵させていた。

所在無げに佇みながら、血を吸い取られてゆく母親を見つめる少女は、
純白のワンピースの上に、黒のカーディガンを羽織っていた。
こぎれいな装いをした母娘のなか、娘の黒のカーディガンだけが。
なき人を弔っているように、はた目に映る。

肌色のストッキングに走る伝線が、
ひざ小僧を通過して、脛をよぎって、足首にまで届くのを。
女はちょっぴり照れながら、見おろしていて。
それから娘のほうを振り返ると、
怖くはないのよ。こっちへいらっしゃい。
手招きをしていた。

娘はちょっとためらいながら、脚をもじもじさせている。
ひざ小僧のすぐ下まで、お行儀よくぴっちりと引き伸ばされた白のハイソックスは。
ストッキングみたいに薄い生地ごしに、ピンク色の脛をジューシィに滲ませていた。

娘の背丈に合わせて、ちょっぴりかがみ込んだ妻は。
少女の両肩を軽く抑えて、身じろぎを封じると。
男はおもむろに、少女の足許にかがみ込んで。
母親にそうしたように、ハイソックスのふくらはぎに、唇を這わせていった。

ちゅう…っ。
ひそかな音が、耳元間近に響いたような錯覚がした。
きゃっ。
少女はちいさく叫んで、脚を飛び退かせようとして。
抑えつける母親の腕にあやされながら、生き血を吸い取られてゆく。

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ…
少女が白い目をむいて、母親の腕に身をもたれかけさせてしまったあとも。
男は少女の脚を、離さずに。
白い長靴下にバラ色のシミを拡げつづけていった。

無邪気な笑いをはじけさせた少女は、
母親に促されて、頭を撫でられながら。
血を吸っていただいた小父さまに、お行儀よくお辞儀をすると。
ハイソックスに撥ねたバラ色のシミを、ちょっぴり気にかけながら。
母親とつないだ手を、握り返して、足取り軽く立ち去っていく。

分け前だよ。
重ね合わされた唇ごしに、洩れてきた血しおは。
うっとりするほど、いい香りだった。
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