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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

両親の帰宅  ~屑籠のなか~

2012年02月13日(Mon) 07:50:46

父と母が、帰宅してきた。
家に戻ってきたのに、すぐにリビングには入ってこずに。
子供たちに見えないところで、ごそごそと身づくろいをしているようだ。
しゃらりしゃらりとブラウスの胸ひもを解いて、床に落として。
スカートも同じように、母の足許で輪を描いた。
その前に脱ぎ捨てられた黒のストッキングは、そのまま屑籠へ。

貴男のワイシャツはクリーニングに出せばなんとかなるわね。
いい服着ていくと、いつもこうなんだから。

母の言いぐさは多少愚痴っぽかったけれど、どこかウキウキとはずんでいる。
父は相手をいたわるような声色だったが、なにを話しているのかよく聞き取れない。
受け答えする母は、父を軽く小突いたらしい。
いっそう声をひそめた声のほうが、なぜか鼓膜に残った。

い・や・ら・し・いっ♪

父もズボンの下に履いていた長靴下を、屑籠にむぞうさに放り込む。
長く伸びた黒の靴下は、ストッキングみたいに薄かった。

クリーニング屋と洋服屋が、大繁盛だな。彼らのおかげで。

父の言いぐさは、いかにも勤め人らしかった。
暖かな声色に、イタズラっぽさがこもっている。

切れ切れに聞こえる言葉の破片を総合すると、
親戚の結婚式に闖入した顔見知りの吸血鬼に、夫婦ながら襲われたということらしい。
応対は・・・きっと慣れているんだろう。

ボクはふたりのやり取りを、素知らぬ顔をして受け流し、
そろって浴室に消えると、置き去りになった屑籠のなかを、覗き込む。
脱ぎ捨てられた黒のストッキングと、ストッキング地のハイソックスとが、絡み合うようにとぐろを巻いて。
まだ、押し当てられた唇に込められた情念を、宿しているようにみえた。

ひざ小僧の下まで引き伸ばして履いている、紫のラインが二本入った白のハイソックス。
ふくらはぎにべっとりとついた赤黒いシミを、つるりと撫ぜたあと。
ボクは思い切りよく、ハイソックスを脱ぎ捨てて、
父と母の捨てたストッキングのうえに、重ねていった。

父さんと母さんの血をすうまえに、ボクの血も愉しんでいったんだよ。
ふと口にしたつぶやきに、
こちらへ戻ってきた足音が、ぴたりと止まる。
人の気配に気づかなかったふりをして、ボクは二階の部屋にあがってゆき、
背後の人影が屑籠のなかを覗き込むのを、くすぐったく受け流した。

まぁ。まぁ。

あきれたような、母の声に。

そういうものだろう。

たしなめるような、父の声色が重なっていた。
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