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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

雨の情景

2012年04月22日(Sun) 22:58:32

花曇りの空を、雨滴がびたびたと、唐突に濡らしはじめた。
ばたばたばたばた・・・
乾いた地面を打つ大粒の雨がたてるかすかな砂埃で、あたりが薄っすらと煙たくなる。
白の頭巾に割烹着姿の女が屋内から駆け出してきて、あわただしく洗濯物を取り込んでいった。
二往復、三往復・・・
さいごの洗濯物を取り込んで、濡れはじめた頭巾を頭から取り去ったとき―――
背後から伸びた黒い影が、だしぬけに女を押し包んだ。

あ・・・っ!
女はちいさく叫び、とっさに逃れようとしたが。
すぐに傍らの納屋に、引きずり込まれてしまう。

あっという間の出来事だった。

納屋のなかに敷かれた藁のうえ。
女は脚をばたつかせながら、組み伏せられていって。
もの慣れたやり口で突っ張る両腕を取り除けられつぃまうと、
もの欲しげな唇を、もううなじに這わされてしまっている。

あっ・・・あっ・・・

女はなんどもみじかく叫び、けれどもかなわないとみるとすぐに、大人しくなった。
きゅうっ・・・きゅうっ・・・
押し殺すような吸血の音に女は身をよじったが、影は女を放さなかった。
雨脚が、はげしくなった―――

つかの間のにわか雨は、すっかりあがっている。
女は脱いだ頭巾でうなじのあたりを拭いながら、ふらふらと屋内にあがりこんだ。
居間に入ると夫と目が合って―――女は小娘みたいにどぎまぎして、あわてて目線をそらしてしまった。

なんだ、噛まれちまったのか。
えー、やられちゃった。(^^ゞ
女は照れ隠しに威勢よく、手に持っていた頭巾を洗濯機に投げ込むと、すぐにずたずたと荒々しい足音を立てて、階段をあがっていった。
だんなが顔をあげて、雨上がりの庭をふと見ると。
黒影が低く口笛を吹いて、男の注意をひいた。

こら。
傍らのちゃぶ台に取り残されていた箸置きをだんなが投げると、
影はそれを素早くキャッチして。
陶器でできた箸置きを割れないように縁側にそっと置くと。
もう、姿を消している。

梅雨どきは、もうすぐ―――
だんなはうさん臭げな目線をちらと庭先に投げると、もうそれ以上は追及しないで、
ものぐさそうな手つきで、キセルに煙草をつめてゆく。
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