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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

血ィ、吸われて来い。

2012年05月01日(Tue) 07:49:10

種原美保が下校してきたのは、ちょうど家庭訪問のさい中だった。
黒革の鞄を茶の間の隅に置くと、そのまま仕事場に向かおうとする娘を、
わたしと面接していた父親が呼び止めて。
そして、信じられないようなことを、口にしたのだった。

きょうは家の手伝いはエエから、羽根村のご隠居のとこさ行って、血ィ吸われて来い。

買い物に行って来い、というくらい、こともなげな言いかただった。

処女の生き血が三人分、要りようだて、今朝回覧が回ってきたで。
サッちゃんとゆき坊は、先に済ませたはずだから、独りで行(え)ぐんだぞ。

父親が投げるぞんざいな言いぐさを背中で聞いて。

あーうんうん。

少女のほうも平然としていて。
履いていた靴下を脱いで洗濯機に放り込むと、傍らに干してあった黒のストッキングをとりあげて、
むぞうさに脚に通してゆく。

紺のスカートの下目映く輝くふくらはぎを、薄手の黒のナイロンが、大人びた翳で染めてゆくのを、
男ふたりはしばし、じいっと視ていたが。
少女は男どもの視線など気にするそぶりもなく、

じゃ、行ってくるね。

言い捨てるとそそくさと、放り出したばかりの黒革の鞄を手に、玄関を出た。


当番といいましてな。
きょうみたいに急にまわってくることもあるんですよ。

あくまでこともなげに口にする父親に。
わたしはただ、言葉を喪っていた。

窓辺に遠く、娘たちがすれ違うのが見えた。

向こうから帰ってくるのは、サッちゃんとゆき坊と呼ばれた少女たちだろう。
塾なんだって?ずるいなー。
あっけらかんとした少女の声が、ここまで聞こえてくる。
部活で帰りの遅くなった少女はひとり、村はずれに棲む年配の吸血鬼のところに、血を吸われに行くのだろう。
二人連れの少女は左右に分かれて、美保をはさむようにすれ違いざま、
バトンタッチするように、掌どうしを触れ合せた。
こちらに向かってくる少女たちの足許をみると、真っ白なハイソックスに、赤黒いシミが散っていた。

素足で帰ってくるよ、あの子。
ストッキング噛み剥ぐの、みんな好きなんだから。いけ好かない。
そういいながらも母親は、にこやかに娘の後ろ姿を見送っている。

いったいこの村は、どうなっているのか―――
都会から転任してきたばかりのわたしがそう感じたのも、つかの間のことだった。

ひと月後、妻が生き血を吸い取られ。
血を吸われた近所の男のところに夜な夜な出かけてゆくのが習慣となって。
三月もすると。
わたしの血だけじゃ、足りないの。
そんな口実から、中学にあがったばかりの娘まで連れて、出かけるようになって。
半年たったころには、義母が。
そしてさらに半年後には、わたしの母までが。
いまでは夫婦同伴で、いかにも都会ふうの装いを、田舎の風になびかせるようになっている。
もちろんそのだれもが、脚に穿いたストッキングを、見る影もなく噛み剥がれる習慣を身に着けていた。
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まとめtyaiました【血ィ、吸われて来い。】
種原美保が下校してきたのは、ちょうど家庭訪問のさい中だった。黒革の鞄を茶の間の隅に置くと、そのまま仕事場に向かおうとする娘を、わたしと面接していた父親が呼び止めて。そして、信じられないようなことを、口にしたのだった。きょうは家の手伝いはエエから、羽根村...
2012-05-01 Tue 17:33:22
まとめwoネタ速suru