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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

余所から嫁いできた女

2012年05月22日(Tue) 05:05:52

1.
だいじょうぶ。怖くはありませんのよ。
首すじや脚を、ほんのちょっと噛まれるだけなんですもの。
ミチオも治子も。治子の旦那様になるひとも。
ええもちろんわたくしや、おとうさまも。
みんなあの方に、血を吸われているんですもの。

吸い取られる血の量だって、かわいいものよ。
ちょっぴり貧血に、なるだけの話ですから。
この土地の人間はみんな、献血なんだと割り切っておりますのよ。
ええもちろん・・・よその土地から嫁(き)た未央子さんに、無理強いするつもりはありませんのよ。


2.
薄々感じていたことだけれども。
やっぱりほんとうのことだったと知らせてくれたのは。
ほかならぬ義母のミツだった。
ころころと愉快気に、嗤(わら)いながら。
この村では人と吸血鬼とが共存しているのだと、面と向かって教えてくれたのだった。

夫のミチオはそんなこと、ひと言も彼女に告げなかった。
エエ。男のひとからは、申さないことになっているのですよ。
とくに、よその土地から嫁(き)たひとにはね。
こうして女どうし、伝え合うものなのですよ。
気心のおけない相手には、告げぬがしきたり。
あなた・・・もっとわきまえてくださいな。
わたくしが報せた・・・ということを。

姑は心地よげにそういうと。
あとはあなたの思案です。無理強いはしませんよ。くれぐれも・・・
そういって、割烹着を着けた着物姿の背を向けた。
キリリと結い上げたまだ黒い髪のすぐ下。
あらわにむき出された白い首すじにはくっきりと、赤黒い噛み痕がつけられていた。


3.
よしてッ・・・ここから出ていってくださいッ!
未央子は戸惑い、取り乱していた。
父親ほどの年配にみえるその初老の男は、未央子の声など耳に入らぬように、
広い和室の片隅に、未央子を追い詰めようとしていた。
法事の手伝いで、洋装の黒の礼服姿で訪れた親類の屋敷でのことだった―――

いつも顔を合わせている、その男は。
みんなが口裏合わすようにただ、「小父さま」とだけ、呼ばれていた。
女学校に通っている姪―――夫の長兄の娘―――さえもが、
まるでお見合い相手に逢うようにウキウキとして、
「小父さま」が家にやってくるその日には、
制服が夏ものに変わっても、決まって黒のストッキングを脚に通すのだった。

「小父さま」が来るときにかぎって。
この家の男たちはどうして、家からいなくなるのか。
みんなどうして、ストッキングの穿き替えを気にするのか。
その理由がやっとわかったとき。
和室の壁を背にした未央子は、脚に通している黒のストッキングを、噛み破られようとする直前だった。


4.
ああああああッ・・・
必死の絶叫もむなしく、未央子は畳のうえに、押し倒されてゆく。
姑も、義姉も、義妹も。そして姪さえもが。
声が届かないはずはないのに。
いつものように笑いさざめきながら、食器の片づけをしているのだった。

必死で逃れようとして、
あと一歩で部屋から出られるところで、足首をつかまれて。
ばったりと、大きな音をたてて転んだのに。
だれも助けには、来てくれなかった。
「小父さま」はうひひひひひ・・・ッと、舌なめずりをして。
黒のストッキングを履いた未央子のふくらはぎに、
脂ぎった唇を、なすりつけてきたのだった。

ちゅうっ・・・
ヒルのように吸いつけられた、唇が。
そのすき間からぬめりつけられてくる、舌が。
淡いナイロン生地越しに、淫らな唾液をしみ込ませてくる。
あきらかに・・・洋装の女が身に着けるストッキングの舌触りを、愉しんでいるのだった。
ふだんは思いつくこともなかった、「辱め」ということばが、
どす黒い衝動を伴って、未央子の胸を突き刺した。

う、ひ、ひ、ひ。
ええ舌触りじゃ。
たまの浮気もよかろう。え?え?

噛み破られたストッキングごしに触れる外気の空々しさが、
女をすこしだけ、大胆にしていた。
かすかに身じろぎをして、吸いつけられてくる唇に、うなじを差し伸べてやると。
かりり。
さっき刺し込まれたばかりの尖った異物が、じわじわと皮膚を侵してくるのだった。

ごくん、ごくん、ごくん・・・
その身をめぐる血液を、思い切りむしり取られていったあの感触が。
ひどくいとおしいものに思えてきたのは、きっと錯覚なのだ。
未央子はしいて、自分にそう言い聞かせようとしたけれど。
部屋の隅にしつらえられていた籐椅子に、じぶんから腰かけて。
にじり寄ってくる卑猥な唇に、もう片方の脚も噛ませていって。
黒のストッキングにむざんな裂け目が入るのを、
ころころと笑いこけながら、面白そうに見おろしている自分に。
未央子はなぜか、ひどく納得がいっていた。

それとなく家を離れたとみえた男どもが。
じつはひっそりと、帰宅をしていて。
どきどき感じ始めてしまっているこの初体験の場を。
ふすまのすき間。壁の小穴。
そんなあちこちから、覗き込んでいるのを。
聞き取れないほど低い声色が夫を揶揄し、
夫がくすぐったそうに、それに応じてゆくのを、未央子は聞き分けると。
いまではすっかりいとおしくなってしまった「小父さま」に求められるままに・・・
裂けたストッキングを穿いたままの両脚を、ゆっくりと開いていったのだった。


あとがき
街ん中で、黒のストッキングの女性を見かけましてね。
肉づきのむっちりとした脚が、薄黒のナイロンに、よく映えているんですよ。
それで思わず、こんなお話を妄想しまして。
今朝がたモノになりそうだ・・・っって思って、パソコンに向かったのでした。
吹く風も爽やかないまの季節。黒のストッキングが街を闊歩する、つかの間の時候でもありますねぇ。
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