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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

おりく

2012年05月22日(Tue) 07:00:16

はじめに!
珍しく、時代モノです。


1.
おりくは、書見をしている夫の部屋のまえ、三つ指をついて、
障子ごし、ひっそりと声をかける。
若妻だったころとおなじように、おずおずとした声色で。

お見えになりました。
庭先を、お借りいたします。

障子ごしに、肯定ととれる身じろぎを感じ取ると、
初老の妻女は白髪交じりの髪を撫でつけて、それをむぞうさに、ほどいていった。
蛇がとぐろを巻くように、するすると乱れ落ちる髪―――
女はひっそりと笑んで、夫の居間をあとにする。



2.
他国から嫁いできたおりく殿に、当家の作法を教え込むのはいかがかと思いましたが。
五十を過ぎたというのにまだうら若さを帯びた姑は、ホホ・・・と笑んだ口許を手で軽く抑えていた。
妾(わたくし)は参りますよ。ご家老様のお召しですからね。
楚々とした立ち姿をそのまま、脂ぎった家老の猿臂にゆだねてしまうのか。
おりくは白い目で、姑の後ろ姿を見送った。
間もなくおりくの相手も、この屋敷に現れるのだろう。
相手は夫の下僚である、若侍だった。

貞操を女の誉れと教え込まれてきたおりくにとって。
乱倫を極めたこの城下町の気風は、衝撃以外のなにものでもなかった。
自害をせぬかと案じて、みなで寝ずの番をしたのですよ。
おっとりと嗤う姑は、あの忌まわしい夜。
必死でもがき泣き叫ぶおりくの両腕を抑えつけて。
己の情夫であるご家老が、息子の嫁の着物をはだけていくお手伝いに、余念がないふうだった。

それ以来。
お手伝いにうかがいます。
義父にそう告げる姑に従って、ご家老の屋敷に往来する日常が待っていた。
ふすま越しの姑の、あられもないうめき声を、かしこまったまま耳にし続けて。
いいかげん、気がおかしくなりそうになったころ、
しどけない格好で寝所を出てきた姑に、抱きかかえられるようになかに入れられて。
息荒くのしかかってくる夫の上司の言うなりに、身体を開いていった。
姑は悩乱をする嫁のようすを、逐一窺いながら。
真っ赤な腰巻をふたたび、ご家老を狂わせた細い腰に、巻きつけていった。

姑が真っ赤な腰巻を着ける日は。
忌まわしい歓びが待つ日だった。
やがて。
婚礼を控えた夫の妹が、玉の操を散らした後、嫁いでいって。
そのあとを追うようにご家老は居所を移して。
姑もまた、まな娘の不行儀に、せっせと加担するようになっていた。
取り残されたおりくは、出入りの魚屋と契りを結び、
それをきっかけに出入りの町人たちをつぎつぎと敷居をまたがせて、
緋の腰巻をほどいていった。


3.
いい魚が入りましたよ。だんな様にいかがです?負けときますぜ。
威勢のいい魚屋の言いぐさに、おりくは小銭をすこしよけいにはずんでやって。
夫もまた、「精が出るな」と、魚屋をねぎらっている。
どこのお武家でもありそうな光景。
けれども夫は、すべてを心得ているようだった。
逞しい猿臂に酔った自分の妻女が、しとやかな武家装束のすき間から、白い脚をあられもなくむき出して、
組み敷いた男の言うなりに、精を吐き出されている日常を。
そういう晩には必ず、夫は激しく求めてくるのであった。


お子が生まれたあとは、ぞんぶんになさいませ。
姑は厳粛な顔つきで嫁の不行儀を赦すと。
おりく殿はしもじものものが、お好きだそうな。
たいがいに、慎まれませ。
去り際、ウフフと笑んだ横顔が、言葉を裏切っていた。


らっせい。らっせい。
きょうもシジミ売りが、威勢の良い声をあげて武家屋敷を過ぎてゆく。
シジミ売りは自分の声に耳を向けさせようとして、
時折商売となんの関係もない、他愛のない冗談をおり交ぜてゆく。

お奉行の妻女のおりくさまが、きょうも魚屋と逢い引だよ~

塀ごしに呼ばわる声におりくは頬を赤く染め、あわててシジミ売りを家にあげて、お代はいくらと問うのであった。
夫はそういうときも、知らん顔をして書見を続けていた。


4.
庭先を、お借りいたします。
そう夫に言い置いて、おりくは白足袋の足を、沓脱ぎ石におろしていった。
あれからなん年、経ったことだろう?
女の操を汚されるという、あるまじきことを。己の歓びと変えてから。
やはり同じように年老いた魚屋は、そんなおりくのしぐさを、固唾をのんで見守っていた。

庭先にひざまずいている魚屋と、おなじ高さの目線に降りると。
ふつつかですが。
おりくは雨上がりの庭先の地べたに、ひざを突いて。
着物を泥に浸しながら、女は身分ちがいの男に、頭を垂れる。
どうぞお情けを、くださいませ。
泥に堕ちよう―――
そう心得た女は、あえて夫の在宅のときを選んでは。
魚屋を相手に、衣装を泥に浸してゆく。
身分ちがいの男を、そうそう屋敷にあげることは、かなわなかったから。

はぁはぁ・・・ぜいぜい・・・
荒い吐息は、お隣のお邸まで届いているだろうか。
はだけた着物からあらわになった両肩に、かわるがわるあてがわれる唇に酔い痴れながら。
女は姑のことを、思い出していた。
いま着ているこのお召し物も、姑のものだった。
母が侵されているような気がするな。
ふと言いかけた夫が、言いかけた言葉を決まり悪げに飲み込んだことがあった。
姑も、この魚屋の相手をしたことが、あるのだろうか?
そういえば、うす紫のこの着物に袖を通すとき。
あの魚屋は昂ぶりようを変えているような気がする。

さ。ぞんぶんになさいませ。
おりくはいつか、姑の声色になって。
喉を引きつらせて首すじにかぶりつく魚屋に、われとわが身をゆだねていった。


あとがき
意味不明なお話・・・?
描きたいことが、いろいろとあり過ぎたのですよ。^^
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