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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

愛情表現

2012年06月06日(Wed) 07:28:27

ばたん!どしん!ずどん!ぐゎっしゃーん!
二階から聞こえるもの音に、来客はびっくりして顔をしかめた。
いや、にぎやかですみませんねぇ。
お父さんはのんびりと笑いながら、来客にお茶を勧めた。
ほんにまぁ、娘もお転婆なもので・・・
お母さんも苦笑しながらお辞儀をすると、お盆を抱えて台所へと戻ってゆく。
どうやらもの音の出どころは、長女の勉強部屋からのようだった。

もうっ!嫌っ!近寄らないでっ!
この家の長女ユリは、ヒステリックに叫びながら。
本棚の本といわず、机のうえの筆箱といわず、傍らに置かれた革製の通学鞄といわず、
もう手当たり次第に、相手にものを投げつけていた。
ものを投げられている相手は、場違いなくらい時代がかった黒マントを羽織っていて、
胸元には深紅のリボンタイ。
見るからに吸血鬼とわかる扮装をまとっていた。

至近距離で投げつけられるいろいろなものは、もちろんその多くが彼に命中するのだが、彼はマントで顔を蔽い、大小さまざまな飛び道具を時には払いのけ時には身をひるがえしてよけながら、じょじょにユリとの距離をせばめていった。

手を伸ばせば届くほどの距離に迫った吸血鬼に、ユリは初めて怯えの色を浮かべ、
「キャーッ」
少女らしい悲鳴をあげていた。

「やっと静かになりましたね」
ため息交じりにお母さんがそう言うと、
「ああ、まったくだね」
苦笑交じりにお父さんも、返事をする。
「いったいどういうことなのですか?」
来客が遠慮がちに、訪ねると。
「まぁ、知らぬが花ということにしといたほうがいいと思うがね・・・」
さすがにお父さんは、口を濁した。

薄いピンクのカーディガンに、黒髪を三つ編みに結った少女は。
淡いグレーのチェック柄スカートの下、いつも学校に履いていく薄黒いストッキングの脚を、たたみのうえににょっきり伸ばして。
肉づきのよいふくらはぎに、それは旨そうに唇を吸いつけた吸血鬼は、
脛の蒼白く透けるなまめかしい黒ストッキングを、唾液でびしょびしょに濡らしていった。
少女は悔しそうに歯噛みをしながら、それでも吸血鬼の不埒なやり口を留めだてしようとはせずに、
むしろストッキングを履いた脚を彼が愉しみやすいように、すんなりと伸ばしてやるのだった。

「一種の・・・愛情表現ですな」
言いにくそうにお父さんは、来客に解説した。
いたずらに辱しめられたくはないけれど、許さないというほども冷たい気持ちはないものだから。
お気に入りの黒のストッキングを咬み破かれる代わりに、さんざんにものを投げて溜飲を下げているのでしょう、というのだった。
ほら。聞こえるでしょう?でも、聞かなかったことにしてくださいな。
声をひそめるお母さんが見あげる天井ごしに。
「ああ~ッ」
うわべは無念そうでも、それは気持ちよさそうな声が、かすかに洩れてくる。

しいて重ねられてくる唇を、避けかねて。
少女は幾度かかぶりを振って拒んだすえに、接吻に応じていって。
これ以上は、ダメよ。
純潔を差し上げるの儀式は、カズヤさんのまえで済ませるお約束ですからね。
そこだけは意地でも譲るまいと、けんめいに声色を押し殺して。
婚約者のまえで純潔を散らされる儀式を遂げることを、改めて誓うのだった。

夫やいいなずけのまえで操を立てようという、せめてもの意地なのでしょう。
台所に洗い物に立ったお母さんを見送りながら、お父さんは来客に向かってぽつりと言った。
未来の姑はもう、襲われ済みですからね。
あれが襲われる時にはね、この洋間にお皿やしゃもじが飛ぶんですよ。
割れないお皿を選り分けて投げるんです。
さすがに堅実な主婦ですなあ。
のんびりと、淡々と言い放つ夫は、「あなたそれでもガマンできますか?」と来客を振り返った。
来客は、ユリの未来の花婿だった。
「どうして僕の前で・・・なんでしょうね?」
ひっそりやってしまえば、貴方に対する犯罪になるというのですよ。
なんにも体験できないでしょう?
初めて犯されるときの羞じらう顔とか。
痛そうに洩らすうめき声とか。
身を固くして相手を受け入れておいて、じょじょに慣れて腰を使いはじめるようになるひょう変ぶりとか。
じぶんで姦(や)るのも、ひとに姦(や)られちゃうのも。
視る角度が変わるだけ・・・そういうことで、ご納得いただけませんかな?
義父の言いぐさに、若い男は照れ臭そうにうなずいている。
どうやら僕も、お父さんとおなじ趣味みたいです。
“儀式”はたしか、来週ですよね?わざわざ僕の予定に合わせて日取りを決めていただいて、ありがとうございます。
愉しみに・・・してますね・・・
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男に唇を吸いつけられるとき。
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