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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ある人妻と家族の記~夫・ミチオの場合

2012年07月31日(Tue) 05:40:34

吸血鬼と人間が共存する街―――といっても、そこには一定のとっかかりが必要だ。
だれか一人を襲って腑抜けにしてしまい、あとは芋づる式に供血者の輪を広げてゆく。
それが俺たちのやり方なのだ。
げんに俺だって・・・そういう輪の端っこにいて、とある吸血鬼に血をプレゼントしてしまったのだから。

その人妻は、美智子という。
もちろん、仮の名前と思っていただいてけっこうだ。
その美智子をもう少しで毒牙にかけようとしたときに。
女は正体を明かさない俺のことをあらかじめ見通していたかのように、言ったのだった。
―――夫の血を吸っていただけないでしょうか?
と。

え・・・?
訊き返した俺は、もう本性を隠すのは野暮だとばかり、あとはなんの説明もしようとはしなかった。
夫が邪魔なんです。この世からいなくなって欲しいの。
血を吸われて死ぬのって、ウットリしてそのまま逝けるそうですね。
まぁせめて・・・楽に死なせてあげたいわ。
女の言いぐさは恐ろしいものだったが、俺にいなやはなかった。
だって女はさいごにつけ加えたのだから。
お礼はわたしの血―――ということで、いかがでしょうか?って。

深夜の路上で、美智子の夫・ミチオは、髪を振り乱し息せき切って逃げ惑った。
けれども勝負はもちろんのこと、あっけなくついてしまったのだった。
首すじをがぶりとやられた彼は、そのまま動けなくなってしまい、
貪欲な俺の唇にちゅーちゅー飲(や)られながら、じょじょに身体の力を抜いていった。
楽な仕事だ―――そう思いかけたとき。
男は息荒く、しかし低い声で言ったのだった。
最後のお願いです。うちの家内の血を吸ってください!

え・・・?
意外な言いぐさに、俺はぽかんと口をあけ、間抜けな顔つきになって男に訊き返した。
あんたの奥さんの血を吸って、いいと言うんだな?

エエ、エエ。あの女は悪魔です。いえ、悪魔に魅入られてしまったのです。
あいつは浮気してます。相手は近所の男です。
わたしが死ぬのなら、妻も道連れにして・・・そう、あの男の手の届かないところにいっしょに連れて行きたいのです。

男の言いぐさは、もっともだった。
あんたの奥さんのことはよく識っている。必ずそうしよう・・・
俺がそう応えてやると、男は満足そうに、苦しい息の下、みじかいお礼を洩らしてくれた。
礼には及ばない。お前の女房は美人でいい身体をしているからな。
知らなかったのかね?
吸血鬼が女の血を吸うときは、犯してやるのがならわしなんだぜ?

俺があからさまに、あんたの女房を犯す・・・と告げてやると。
男は悔しそうな顔をして・・・そしてなぜか、くすぐったそうな笑みをよぎらせた。
それが男の死に顔になった。
四十代の男は、その身体から働き盛りの血を全部抜かれて、あの世とやらに旅立とうとしていた。
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