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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ジャンパースカート

2012年08月21日(Tue) 08:11:09

おはよう~!
濃紺のジャンパースカートの丈長なすそを揺らしながら、綾子が声をかけてきた。
風にたなびく制服のすそを、腰のあたりで抑えながら。
俺に気がついて歩み寄ってくるときも、綾子は歩くスピードを変えたりはしない。
クラス一のしっかり者といわれた気丈な性格そのままに、
自信たっぷりにゆったりと、歩みを進めてくる。

綾子は俺の、婚約者。
親同士の決めた結婚で、高校を卒業したら、その春に式を挙げることになっている。
この村では、かなり若いうちに縁談が起きる。
十五を過ぎたころには、十中六、七の生徒は、すでに結婚相手が決まっていた。
縁談の相手が同級生の綾子だと母親から聞かされたとき、俺はそう悪い気はしなかった。
しっかり者を嫁にするのは、人生が安定するような気がしたから。

いつも張りのある声でおおっぴらに「おはよう」を口にする綾子が、ちょっときまり悪げにしているときがある。
そういうときには正直なもので、決まって「おはよう」の語尾のトーンが、かすかに落ちるのだった。
今朝がそうだった。
そういう日に限って、綾子はいつも、黒のストッキングを履いていた。
そんな朝が、週に二、三日は,決まってある。

この学校の女子生徒が黒のストッキングを履くのは、卒業式や入学式など、正式な行事のある時だった。
どちらも冬場のことで、夏の制服と合せることは、ふつうはないはずだった。
キリリと引き締まったふくらはぎを持つ綾子の場合、薄黒のストッキングは決して暑苦しい印象にはならなかった。
むしろすっきりと浮き上がる白い脛が、凛とした涼しささえ感じさせていた。
わるい眺めではない。そんなけしからぬ感想を知ってか知らずか、そんな朝綾子はいつも照れくさそうにしていた。
理由は・・・じつは暗黙の諒解になっている。
俺の親類すじに当たるある家の子が吸血鬼になったので、血を与えに通っているのだった。

その子は俺たちよりも、五、六歳年下で。
まだ稚気を満面にたたえた、利発な少年だった。
あいつじゃ、しょうがないな・・・
俺がそう苦笑いをしたのは。
綾子が生き血を吸い尽くされてしまうわけではないと知っていたからでもあるし、
親同士がその家のあるじと仲が良かったせいでもあったし、
けれどもなによりも、幼いころからなじんでいたその少年に、敵意をもちようがなかったからだった。
少年の名前は、タケルといった。

「おはよう」を告げた少女は立ち止った俺に追いつくと、ちょっとのあいだ歩みを止める。
薄黒く染まった足許を見られたいような、見せてはいけないような。
かすかな逡巡が、伝わってくる。
俺は何食わぬ顔つきで、しれっと言ってのけていた。
うん?黒のストッキング、似合うね。きょうもタケルに噛ませてやるの?
いつも自信たっぷりで堂々としている男勝りの少女が、真っ赤になってふくれ面をした。
もうっ。そういうこと言わないのっ!
俺は綾子のうろたえようがおかしくって、笑いをこらえることができなかったけれど、
「いけない想像、あちら様にも失礼よ」
大人びたたしなめ方をする綾子に敬意を払って、「すまないすまない。失礼だったね」と、すぐに旗を巻いている。

この村の吸血鬼は、首すじ以外に、好んで脚に噛みつく習慣を持っていた。
年上の女学生が自宅の座敷に上がり込むと、
稚気の抜けないタケルは、彼女の手を引いて自室に招き入れて、
彼女の着けている丈長のジャンパースカートのすそをするするとたくし上げて、
黒のストッキングのふくらはぎにむぞうさに噛みついて、
なまめかしい薄手のナイロン生地を、みるかげもなく噛み剥いでしまうのだった。

気丈なうえに潔癖な綾子を、どうたぶらかしたものか・・・
綾子はそういうときにはおとなしくうつむいて、
大人びた制服姿を惜しげもなく、稚拙でイタズラっぽい少年のまさぐりにゆだねていくのがつねだった。


きょうは、俺もついていこうかな。
放課後、待ち合わせるともなく待ち合わせた校門の前、俺はぬけぬけと綾子にそういった。
「いけないわ」
綾子はいつもそういって、俺のけしからぬ申し出を辞退するのだったが、
その日に限ってはちょっともじもじとして返事をためらった挙句、
「ウン、やっぱりついて来て」
柄にもなく口ごもりながら、OKをくれたのだった。
気の強そうな切れ長のめもとを、かすかな羞じらいがよぎるのを、俺は見逃さなかった。
「その代り・・・リョウタもあたしと一緒に血を吸われるんだよ」
羞じらったつぎの瞬間、綾子は面目を取り戻していた。
イタズラっぽい上目づかいで俺を見あげ、両手で俺の利き腕をしっかりとつかんでいる。
放さないわよ、というように。

ちぇっ。けっきょく俺は、添え物か・・・
貧血にうごきの鈍った身体を、畳のうえに芋虫のように揺らしながら。
目のまえで吸血されてゆく許嫁を、目の当たりにさせられていた。
「じゃあお兄ちゃん、始めるよ」
そこまでは、子供のころにいっしょにイタズラをしに近所の農家に忍び込んだ時と、変わらなかった。
そういう時決まって俺たちの背後に現れて、三つ編みに結ったおさげをいからせるようにして悪さをたしなめていた少女は、
折り目正しい制服にしわを寄せながら、素肌を少しずつ、あらわにされていった。

ブラウス、血で汚したらいけないよね?
綾子の着ているジャンパースカートの肩先を、うなじに食いついて滴らせた赤黒い飛沫で赤黒く濡らしたくせに、そんな言いぐさをして。
少年は少女の肩に手をかけて、白のブラウスを剥いでいく。
張りつめたブラジャーの吊り紐が、むぞうさに引っ張られて、断ち切られた。
あ・・・っ。
さすがに狼狽して、あらわになりかけた胸を両手で覆い隠そうとすると、
そのすきに少年は、ジャンパースカートのすそから控えめにのぞくふくらはぎに、唇を這わせていった。
清楚な黒のストッキングは、稚気の満ちたよだれをたっぷりとしみ込まされて、
ヒルのように飢えた唇のむぞうさなまさぐりの下、
張りつめた薄いナイロン生地が、パチパチとかすかな音を立てて、はじけてゆく。

その先に、なにが待ち受けているのか・・・
三人が三人とも、すでに察しをつけていた。
稚ない三人が三人ながら、大人の男女になる日。
この屋敷の家人たちは、わざとのようにだれも居合わせなかった。
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