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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

録画をまえに ~夏休みさいごの日~

2012年09月01日(Sat) 11:02:53

薄暗く閉ざされた密室のなか。
少女は目を凝らして、映し出される録画に見入っている。
―――お前が公園で、初めて襲われたときのビデオを見てみないか?
そんないけない誘いに、つい頷いてしまっていた。

映し出された画面のなかの自分の姿を、越水若代は無心に見つめていた。
少女は公園のベンチに腰を掛けて、人待ち顔にしているのだが。
―――これじゃあ、だれも声かけないよね?
本人が笑っちゃうくらい、その顔つきはこわばっていて、目つきはとげとげしいのだった。
夏休みの最終日。
空色のTシャツにデニムのスカートというラフなスタイルで。
少女は黒髪を夕風にたなびかせていた。
とうとう彼氏ができなかった夏休みを悔やみながら、
「だれか来ないかしら?」って。
この日の夕方、若代はあてのない人待ちをしていたのだった。
―――顔つきさえなかったら、だれか男の子が声をかけてくれたかも。
けれども夏休みも最終日ともなれば、同年代の男の子たちは宿題に追われていて、ほとんど公園などに姿を見せることはないのだった。

ハイソックスだけは、見映えがしたんだ。
少女は苦笑いを、抑えきれない。
デニムのスカートからはみ出た太ももに、夕陽がツヤツヤとしたてかりをもたらしていて。
白のハイソックスにおおわれたひざから下は、日陰にかくれて薄暗い。
けれども真新しい白無地のハイソックスは、眩しいほどの存在感をもっていた。
おニューのハイソックスが、いけないおじ様を引き寄せたのね?
若代は傍らに音もなく寄り添ってきた黒い影を振り返ると、イタズラっぽく笑いながら、お尻を軽くつねっていた。

そのハイソックスの足許に。
ベンチの背後から忍び寄った影が、そう・・・っと、手を伸ばしてくる。
飢えて節くれだった指が、革靴のかかとに触れ、つま先を撫でまわし、それでも少女は気づかない。
あら、あら。あんなにされていたのに、あたしったらぜんぜん気づかなくって。
少女は自嘲交じりに、くすっと笑い、笑った口許を見られまいとして、あわてて口を片手で隠していた。

ベンチの下から伸ばされた手に、ハイソックスの足首を、いきなりがっちりとつかまれちゃって。
少女はあわてふためきながらも、抵抗らしい抵抗をすることもできないで、
まんまとふくらはぎを、噛まれちゃっている。
痛~っ。
ハイソックスごしに牙がめり込む瞬間を思い出したらしい。
少女は頭をかかえて照れながら、それでも血を吸い取られてゆく自分の姿から目を離せない。
血を吸い取られた少女はじょじょに身体を傾けていって、きちんと合わせたおひざまでもが、ふしだらに弛められてゆく。

ベンチの下からいきなり脚をつかまれた少女は、ハイソックスのふくらはぎを噛まれながらも、あわてふためいてじたばたしている。
あたし、こんなに暴れたっけー?
いまは仲良くなっている吸血鬼のおじ様を振り返ると、
蹴ったりしてたんだ。痛かったよねっ?ごめんー!
なんて、謝罪のポーズで両手を合わせちゃったりしていた。

どさり、と、ベンチのまえに倒れ臥したところまでは、たしかに記憶が残っている。
記憶が尽きたあとも、画面のなかの若代は、草地にあお向けになりながらも、激しく抵抗を続けていた。
脚をじたばたさせて、暴れて手こずらせて、
太もものあいだを膝で割られて脚を開き切ってしまうと、のしかかってくる厚い胸を隔てようと、腕を突っ張っていた。
半そでのTシャツからむき出しになった細い筋肉を、目いっぱい緊張させて。
その腕も折られてしまうと、こんどは激しくかぶりを振って、首すじを噛ませまいとした。
「がんばれ。がんばれ」
もみ合うふたつの影をまえに、若代は小声で呟いている。
どっちを応援しているんだ?
黒い影が訊くと、
どっちもよ。
若代は頬をきらきらとさせて、そう答えた。
でもどちらかというと、おじ様のほうかな♪
そう、ウキウキとした目線は、脚を抑えられ腕を折られ、うなじにかぶりつかれてゆくところを目の当たりにしながらも、「美味しそう♪」なんて、呟いてしまっているのだから。

そういえば・・・目のまえで風に吹かれる芝生の葉先が、間近に滲んで見えたっけ・・・
うつ伏せの姿勢のまま、キュッと目を閉じた少女。
少女が抵抗をやめると、吸血魔のおじ様はうなじのつけ根から牙を引き抜くと、
吸い取った血潮を少女の着ているTシャツに、容赦なくふりかけた。
そうしてふたたび舌なめずりをすると、少女の耳もとにかがみ込んでなにやら囁くと、
ふたたび若代の足許をつかまえて、ずり落ちかけたハイソックスになおも執着するように、少女の脚を噛みつづけていった。
なんて呟いたのよ?
少女が黒影をにらむと、
―――俺の勝ちだ。愉しませていただくよ。^^ って言ったのさ。
吸血鬼はぬけぬけと、そう応えている。

あーあ。やっぱりいちころだよね。
少女は半ばあきらめたような口ぶりで、画面のなかの自分に見入っている。
画面のなかの少女は、もうされ放題だったから。

真っ白なハイソックスのふくらはぎに、牙をなんども刺し入れられながら。
若代は黒い髪を揺らしながら起きあがって、ようやくのこと、ベンチに自分の身体をもたせかけている。
はぁ、はぁ・・・
ベンチにしがみつきながら、失血のために荒くなった息遣いを、けんめいに鎮めようとしているのが画面を見ていてもよくわかる。
なに話しかけたのかな、わたし・・・?
小首をかしげる彼女には、定かな記憶が残されていないらしい。
「そんなにあたしの血がおいしいの?」って訊いてきたんだ。
で、なんてこたえたの?
気に入った・・・ってこたえたら、「じゃあもっと噛ませてあげる」ってさ。
嘘ではない証拠に、若代はずり落ちかけたハイソックスをひざ小僧の真下まで引っ張り上げると、
恐る恐るではあったけれど、自分から脚を差し伸べてゆく。

こんなことしたっけな。あたしよく覚えていない。
でも、たしかにしたんだ。あたし、案外立派♪
あー、また噛まれちゃってるぅ。
画面のなかの事態が進展していくにつれて、少女の声色はいつまでも無邪気にはしゃぎ始めていた。


あとがき
ずいぶん前に描いた「夏の終わり」の続編です。
この夏とうとう彼氏のできなかった気の強い少女が、夏休みさいごの日に吸血鬼に出逢ってしまう・・・というお話です。

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