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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

赴任先の工場主

2012年09月04日(Tue) 07:30:10

都会の本社からその村の事務所に赴任するときに。
あらかじめ、言い渡されていることがある。

  夫人同伴で赴任すること。
  嗜血癖のある村人がいるので、夫婦ともに供血行為に協力すること。

それって・・・注射器を使った献血でしょう?それくらいならわけないですよ。
と言った人は、失格。赴任する資格も取り消しになることがある。
えっ?映画に出てくる吸血鬼みたいに、首すじから吸うのですか?
たいがいのものはそういって驚くけれど。
奥さんもそんなふうに、血を吸われちゃうんですよ。それでもよろしければ・・・
そう言われてはっきりと「否」というこたえが返ってこなければ、即赴任が決定する。

わたしの場合も、即赴任の組だった。
借金がかさんでどうにもならなくなり、高額な手当てがつくというこのポストには、なんとしてもありつきたかったのだから。
「血を吸われるっていうんだけど、いい?」
そう妻に念を押したけれど。
「そんなこと言っている場合じゃないよね?」
そういう返事が返ってくる状態だった。

赴任したわたしは、取引先の工場主に血を吸われた。
着任一週間後、お得意さんがきみの赴任祝いをしてくださるそうだ・・・上司にそういわれてついて行って。
上司はすぐにその場をはずして、工場主は自分の正体をすぐ告げてくれた。
でっぷり太った赤ら顔の工場主は、きれいな白髪をしていた。

いきなり首すじだと、シャツを汚しちまうからな。
工場主はそういうと、わたしのスラックスのすそを引き上げた。
ストッキング地のハイソックスごしに、脛を蒼白く透けている。
ハイソックスは、着任した日に手渡されたものだった。
毎日これ履いてくることになっているから。ま、制服みたいなものだから。
そういう上司も、スラックスからのぞく足首を、女みたいに透きとおらせていた。
うつ伏せにされて、いきなり唇を吸いつけられて。
自分の親くらいの年配の親父は、ふくらはぎに噛みつくまえ、
まるで女もののストッキングをもてあそぶように、
しばらくのこと、ぐにゅぐにゅと薄いナイロン生地に舌をなすりつけていた。

妻は、村の婦人会に参加させられていた。
そこで地元の女性たちと交わって、性格や相性、外貌などから供血相手と縁づけられていくという。
わたしが噛まれて数日後のことだった。
退勤後家にもどったわたしは、ちゃぶ台のうえの置手紙で、妻の帰りが遅くなることを知った。
そういえばいつになく、同僚のひとりが飯を食っていこうと、わたしを誘い出していた。
「家で用意があるから」というわたしに、
「いや、たぶんないと思うよ」 彼は涼しい顔をして、そういった。
その日が妻にとって特別な日になるのでは?わたしはすぐに察しをつけて、ふだんはたしなまないビールまで二、三杯ひっかけて、家路をたどったのだった。

小一時間ほどして、妻は戻ってきた。
まるで法事に行くような、黒の礼服姿だった。
法事のときとちがうのは、いつもよそ行きのときにはきちんとセットして出かける栗色のショート・ヘアが、ひどく乱れてぼさぼさになっていたこと。
ひざ丈のワンピースのすそから覗く足許を染める黒のナイロンストッキングが、幾筋も太い裂け目を滲ませていたことだった。
「噛まれちゃった」妻は照れ隠しに、えへへ・・・と笑う。
指差された首すじは、ショート・カットの栗色の髪の生え際にふたつ、赤黒い痕を滲ませていた。
「それから」もっといいにくそうに、妻は言う。
「最終的に、犯されてしまったんですわ」
妻はすまなさそうに、やはり照れ笑いをつづけている。

「わたし、あなたの奥さん続ける資格あるのかなぁ」と、妻。
「なにを言い出すの?それくらいのことで・・・」と、わたし。
「ほんとにそう思っている?」と、妻
「献血がエスカレートすると、そうなるらしいね」と、わたし。
「なんだ、知ってたんだ」と、妻。
「きょう、会社のやつから聞いたよ」と、わたし。
「つづいちゃうよ・・・?」探るように、妻。
「知らなかったことにする」と、目をそらしたわたし。

「抱いて」
いきなり妻は、わたしの肩に腕を回した。
抜き差しならない距離が、ふたりをすぐに、夫婦らしい結論に導いていた。
目のまえに迫った首すじに、吸い残された血が、チラチラと光っている。
わたしは思わず、妻の血を喫(す)っていた。
「もっと・・・吸って」
傷口に吸いつけた唇に力がこもり、妻の血を吸い上げた。
酸い香りが口腔のなかに満ち、わたしは吸い、なおも吸った。
あの晩工場主に吸い取られたぶんの血を補うように、貪欲に。せつじつに。
男の衝動のまま、ワンピースの奥、探り当てた場所に。
妻はパンティを穿いていなかった。

相手は工場主だと妻に告げられて、ああそうか、と得心がいった。
彼はさいしょにわたしをたぶらかして、そのうえで妻を狙ったのだ。
もとより、妻に執心を抱いたほうが、さきだったのだろう。
わたしは翌日、工場主の呼び出しに応じて、例のストッキング地の靴下を脚に通して、出かけていった。
ひなびた面相を形作っている不細工な大きなまなこは、畳のうえに抑えつけた妻に迫った目。
齢不相応に脂ぎった分厚い唇は、妻の素肌に這わされその血潮を吸い取った唇。
その唇から時折覗く舌は、妻が脚に通していた黒のストッキングを、しわくちゃになるまでもてあそんだ舌。
けれどもわたしは、そんなことはひと言も言い得ないで、求められるままに畳のうえにうつ伏せの姿勢になって、引き上げられたスラックスの下さらけ出したストッキング地の靴下のうえから、吸血を許していく。
妻が呼び出されるのは、きまってそうしたことのあった日の晩だった。

「きょうも残業・・・?」と、妻。
「ああ、そうなるね」と、わたし。
「わたしもお招きがあるの」と、妻。
「気をつけて行っておいで。先様によろしくね」と、わたし。
「抱かれちゃうかもよ」と、妻。
「目いっぱい、尽くすといいよ」と、わたし。
「愉しんじゃうかも♪」と、妻。
「そこは妬けるな」と、わたし。
「いけない奥さんね」と、妻。
「いけない旦那にお似合いかも」と、わたし。
「帰ってきたら、しようね」と、妻。
わたしはウフフ・・・と笑って、それ以上応えない。

犯されてくると、妻は罪滅ぼしのようにわたしに抱かれる。
そういう夜の営みがいつもより濃密になるのだと、彼女はいつ知ったのだろう?
借金の返済はとうに終わったというのに、わたしたち夫婦の赴任期間は、いまだに継続している。
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