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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

家族で献血。

2012年09月10日(Mon) 08:03:28

客間のたたみの上で。
太っちょのおばさんが、でーんと大の字になって、ぶっ倒れている。
ほかでもない、俺のお袋だった。
傍らには親父よりもちょっと年上な五十がらみのおっさんと、俺よりは五歳ほど年下の、十代はじめくらいのその息子。
親父はお袋たちとも俺ともすこし離れたところで、俺とおなじように、けだるそうに寝そべっていた。
俺がつけられたのとおなじ、寸法までぴったりな、ふた組みの噛み痕を首すじに滲ませたまま。

引っ越してきてすぐに仲良くなった、隣家の親子。
どうやらおっさんは、やもめらしくって。
奥さんを見たことは、いちどもなかった。
きょうもふたりは、いつものようにうちに遊びに来て。
お袋は留守にしてたので、代わりに俺がお茶を淹れにたった隙に、
初めて本性をあらわにして、親父の首に、噛みついていた。

げっ。
お茶碗を載せたお盆を取り落しそうになって。
あわててちゃぶ台にお盆を置いているうちに。
ふたりは俺の前後にまわっていて。
おっさんは右の首すじに。
息子はTシャツからむき出しにした二の腕に。
かぶりついてきたのだった。

ひりひりとする痛みを滲ませた傷口から、
ちゅうちゅうと、音を立てて生き血を吸い取られて。
眩暈をこらえて身体を支えているうちに。
身体が斜めになっていくにつれて、痛さや恐怖よりもくすぐったさのほうが先に立って。
横倒しに寝そべった時にはもう、けらけら笑い声を立てていた。

吸血鬼だったんですね。と、親父。
はぁ、すいません。と、おっさん。
明らかに恐縮はしているようだったけれど、悪びれる感じはなかった。
この街では吸血鬼と人間が共存している・・・って、うわさでは聞いていたけれど。
まさかお隣さんがねぇ・・・
俺までそんな、のんきな感想を漏らしちゃっていた。

家内はたぶらかされて、家出しちゃいまして。
そうだったんですね。
たまに思い出したように帰ってきては、息子の血を吸っていくんですよ。
へぇ、そうなんですか。
そのうち私や家内ばかりか、息子も血を欲しがるようになって。
かなり危ない傾向ですね。
えぇ。仕方ないので手近なご近所や親類に頼んで、血を分けてもらっているんです。
あなたがたに血を吸われた私どもも、吸血鬼になっちゃうんですか?
いや、都会のかたが血を吸われて吸血鬼になったって、聞いたことありません。
じゃあ、血を吸われっぱなしかー。なんか損な役回りですねー。

おっさんと親父とのやり取りは、どこか間が抜けていた。
大人二人の間抜けな会話を傍らで聞いていた息子くんは、
お兄ちゃんの血をもっと吸いたい、って言い出して。
しょうがないなぁ・・・って言いながら、俺はTシャツの襟首をくつろげていた。

男の血じゃ、おいしくないでしょ?と、親父。
でも、分けてもらえるだけで十分助かりますから。と、おっさん。
うちの女房や娘なら、まだ話が分かるんですが。と、親父。
実現したら、嬉しいですねぇ。と、おっさん。
はぁ、いちおう四十代人妻と、女子高生ですからな。と、親父。

おいおい、それ、誘ってないか?と思う俺は。
五つも年下の少年くんの手にかかって、齢不相応の強い力で抑えつけられて。
ずいずいと血を吸い取られて、また眩暈を起こしていた。

奥さん法事で出かけてるんですよね?と、おっさん。
ああ、よくご存知ですな、と、親父。
お宅のことは逐一筒抜けですからね、と、おっさん。
田舎は怖いですね・・・と、親父。
法事のお手伝いしているのをお見かけして、ゾクっときました。と、おっさん。
それでうちにいらしたんですか?と、親父。
まぁ・・・そんなところですよ。と、おっさん。

空き巣に来たんですがよろしいですか?って訊いてくるお人よしな泥棒に。
それならいついつにどうぞ、って答えるお人よしな主人の会話。
「お父さんいい人なんだねえ」って感心する少年くんに、
「俺の親父だからな」といったら、素直に「そうだね」と彼は言い、
頬ぺたにべっとり着いた俺の血を、手拭いで無造作に拭き取っていた。



お袋が戻ってきたのは、そんなときだった。



ひえぇぇぇぇぇぇ・・・
聞いてるこっちのほうが恐怖でのけ反りそうな悲鳴をあげて。
夫と息子が吸血されているところを目にしたお袋は、その場で気絶してぶっ倒れていた。

しょうがないね。腰を打ったんじゃないかな?と、親父。
担いましょうか?土間じゃ背中が、痛くなりますよ。と、おっさん。

血を吸ったものと吸われたものとは手を貸し合って、
太っちょなお袋の身体を、いとも重たそうに持ち上げる。

法事帰りのお袋は、黒の礼服に、薄黒のストッキング。
口を半開きにしたまま気絶していて、正直なところあんまりかっこよくなかった。

さて。どうしますか・・・
声を合わせる、男ふたり。
本人の同意を得るべきでしょうな。と、おっさん。
まぁ、寝かせたままちょっと、様子見てみましょう、と親父。
医者に診せなくていいのか?って、俺が口をはさんだら。
あとでみんなでかかるんだよ。親父は噛まれたうなじを抑えながらそういった。

一時間後。
お袋はまだ、気絶している。
そのあいだもずうっと、俺たち親子は時折唇を吸いつけてくる来客相手に、傷口を吸わせてやっていた。
待っててもらちがあきませんね。と、おっさん。
そうですね。お飲みになりますか?と、親父。
さすがに俺たちふたりでは、貧血になってきた・・・

しかめ面をしたまま仰向けになっているお袋のうえに、かがみ込んで。
黒の礼服のえり首から覗く首すじの一角に、おっさんは唇を吸いつけていった。
あ、痛うぅ・・・
かすかに首を振って、痛みをこらえるお袋に。
おっさんは獣のようにのしかかり、体重をあずけていって。
ギュウッと立て膝をした、黒のストッキングを穿いた脚は。
だらりと力を抜いて、たたみの上に投げ出された。

ちゅうちゅう・・・きゅうきゅう・・・
ひとをこばかにしたような音を立てながら、おっさんがお袋の血を吸っていると。
息子くんは目を輝かせて、鋭い声をたてていた。
「ボクも小母さんの血を吸いたい」

おっさんは顔をあげると息子を手招きして。
「いただきなさい。旨いぞ」
親父や俺のことをまるきり無視して、お袋の首すじにつけた噛み痕を、息子に明け渡すと。
自分は黒のスカートの足許に這い寄るようにして、
こんどは、薄黒いストッキングに包まれたふくらはぎに、唇を吸いつけていった。
ヒルのように這わされた唇の下。
お袋のストッキングがパチパチとかすかな音を立ててはじけ、裂け目を拡げていくのが、
むしょうに悩ましく、記憶に残った。

吸血鬼の親子を相手に、
自分でも知らないうちに、
わが身をめぐる生き血を、気前よくご馳走する羽目になったお袋は。
自分の置かれた立場を自覚しないまま、顔色を蒼ざめさせてゆく。
「母さん、きっぷがいいからね。そのうえ元気ものだから、しょうしょうのことではへこたれんよ」
親父は妙なところで、お袋自慢を口にした。
「こうしてみると、満更でもないものだねぇ」
とか、
「女房の喪服姿も、わりと捨てたもんじゃないね」
とか、
しきりに女房自慢を口にする親父に、
おっさんは馬鹿律儀にも、
「いやおきれいですよ」
とか、
「だから法事の席で目をつけたんですよ」
とか、
必ず顔をあげて応えてくる。
食べ盛りの息子くんは、とてもそんなゆとりはないようで、
ブラウスに血を撥ねかせては、めざとくそれを見た父親に、小声で叱声を飛ばされていた。
「クリーニングに出しゃ、済む話ですから」
親父の言いぐさは、ひどく寛大だった。

息子くんは、どうやら気が済んだらしい。
指先についた血を舐め舐め、いまどきの子らしくゲームに熱中し始めた。
おっさんはまだ、もの足りないらしい。
どうやら靴下が好きらしいおっさんは、
親父にねだってスラックスを引き上げてもらい、長めのビジネスソックスを噛み破ってみたり、
「部活のユニフォームのやつしかないぜ?」と念を押す俺に、
「それでけっこうですから」といって、
ラインの入ったブルーのハイソックスをわざわざ履いて、ふくらはぎを噛ませてやったりしていた。



お袋が正気に返った。


いや、正気に返った・・・というべきなのだろうか?
長すぎた昼寝から目が覚めたように、ひどく眠たげに顔をあげると、
「おや、お客さんいらしてたの?」って、親父に訊いた。
「なにされたか、わかってねぇの?」親父にそう指摘されて、
「ぁ・・・」
息子くんが血を撥ねかせたブラウスはべとべとだったし、
黒のストッキングは片脚だけ、みごとに噛み剥がれてしまっていた。
たしかな意識といっしょに、貧血までが戻ってきたらしい。
額に手を当てて、くらくらとするのをこらえていたら。
俺の足許から顔をあげたおっさんが、ふたたびにじり寄っていった。

もの欲しげな顔つきに、お袋も相手の希望を察したらしい。
「自分の血なんだから、好きにしなさい」
そういう親父に小声で、
「すみませんね・・・」
そういうと。
まだ噛まれていないもう片方の脚を、差し伸べていった。
「パンストですから。片方破けちゃったらもう穿けないのよ」
台所の椅子に腰を下ろしたお袋の足許にかがみ込んで、
おっさんは、黒のストッキングのうえからなぞるように、唇を吸いつけてくる。
そんな様子に、お袋はさすがに顔をしかめていたけれど。
圧しつけられた唇の下で、薄手のナイロンがぱりり・・・と破けてしまうと。
あとはいつもの気性そのままに、わが身をめぐる血潮を、惜しげもなくチュウチュウと飲(や)らせてしまっていた。

時々伺っても、よろしいですか?と、おっさん。
エエ、いつでもどうぞ・・・と、親父。
じゃあ喉が乾いたら、声かけますね。と、おっさん。
ハイ、ご遠慮なく・・・と、親父。
お袋は惚けたほうな顔をして、緩慢な動作で身づくろいをしていたけれど、
ふと男どものほうを、振り向いて、
ふつうに生活してるんですから、そう年中は困りますよ。
さすがに主婦らしい、クギの刺しかただった。

あ、はい・・・はい。恐縮するおっさんに、
もうお帰りになるのかしら?のんびりとした声で訊くお袋。
そうですね。さすがにそろそろ・・・座を起ちかけるおっさんに、
もうじき娘が、帰ってきますわよ。やっぱりのどかな声色のお袋。
え??
親父も俺も、ぎょっとして声をあげたけれど。
「お姉ちゃんも血を吸わせてくれるのかな?」
息子くんは、声色までもがワクワクとさせていた。

セーラー服で帰ってくるんですよ、
世間話でもするような、のんきな声色の裏に。
善意の献血に応えたい・・・という、俺たちの素朴な目論見以上のものを滲ませていた。
これから三日にいちどは、献血するのですから。
ごあいさつはいっぺんに済ませたほうが、おだやかですからね。
主婦らしくてきぱきと段取りを組むお袋に、
俺は妹の勉強部屋に布団を敷きに行ったし、
親父はがたがたと雨戸を閉めて、悲鳴が漏れないように心配りを始めている。

そんな俺たちのようすなど、目にも留めないで。
お袋はのんびりと、おっさんに話しかけている。
靴下破くのが、お好きなのね?
いけないご趣味ですわね・・・
今朝娘が出ていくときは・・・白無地のハイソックスでしたけど。
ハイソックスはお気に召さないですか?
私もストッキングがちりちりになるまで噛まれて、打ち解けることが出来ましたけど。
真っ白なハイソックスが真っ赤になるまで、血を吸ってあげたら。
あの子もあなたがたと、仲良くなれるんじゃないかしら?
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