FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

秋まつりの予定。

2012年09月15日(Sat) 07:09:28

干からびたような細腕が、さっきからせわしなく携帯をいじっている。
もはや老女といっていいほどの年かっこうのその女は、去りかけた色香をまだ、顔の輪郭にとどめている。
白髪交じりのは見の生え際から覗く首すじは、不ぞろいに陽灼けしていて・・・
そして、夕べつけられたばかりのものらしい赤黒い咬み痕をふたつ、鮮やかに滲ませていた。

ふん。まったくうちの子らときたら・・・

なにか言いたげに口をもぐもぐさせながら、
老女は年かっこうに似ず慣れた手つきで、携帯をまさぐりつづけていた。

長男に宛てたメールには、こう書かれてあった。

今年の秋まつりは、ぜひいらっしゃい。
お隣の源治さんが、珠代さんに執心なのよ。
リョウくんは、大学で彼女出来たかしら?
梨佳も高校に入学できたから、今年は来れるよね? 母


つづいて次男宛てのメール。

今年の秋まつりは、どうするの?
瑤子さんの誕生祝い、するんだよね?
女旱(ひで)りの村の男衆5~6人声かけとくから、覚悟しなさいよ。 笑
佑香もさとみも、そろそろ男を覚えてもいい年頃だね?期待してるから。 母


それから三男宛てのメール。

今年の秋まつりは、来れるかな?
彼女はできた?
まだお付き合いが始まってなくても、村まつりに連れてお出で。
連れてさえ来たら、母さん話をまとめてあげるからね。 母


長男の返信は、速かった。

ビビッ・・・と鳴った着信音に、老女はうたた寝を中断して、
さっそくもの欲しげな手つきで、携帯をまさぐった。

家族そろって、伺います。
源治さんには、どうかお手柔らかにとお伝えください。
息子に彼女できました。
ご両親と一緒に来ると言ってくれているそうです。
梨佳は2年前のことがショックだったので今年は遠慮しましたが、
優しい人がいたら今年もお願いします。


ほほ・・・さすがに孝行息子だこと♪
老女は嬉しげに、ほほ笑んだ。
口許から覗く犬歯が、ちょっぴり尖っている。
おととし孫娘の首すじに、初めて突き立てたときのことを愉しげに思い出しながら、
彼女は指先で、犬歯の切っ先を撫でている。
肉親なら、襲って血を吸ってもいいことになっているのだった。


今年は、リョウくんで我慢しとくか。
彼女を襲われているときには、気が気じゃないだろうからね。

よからぬことを口にしながら老婆は、つづいて鳴った着信音に気を奪われた。

次男の返事―――

ご承知のとおりわたしは、今年の春から単身赴任です。
瑤子は子供たちの受験準備で忙しいし、佑香は高校受験、さとみも中学お受験の真っ最中です。
留守宅には言い含めておきますので、都会まで出てくるお人があったら、お報せください。
その際には、あまり家のなかで物音を立てないようお伝え願います。

まあ、冷たい子だこと。
老女は不平そうに頬をふくらせたが、

物音くらい、どうってことありゃしない。
女に飢えた村の衆を5、6人、入れ代わり立ち代わり送りつけてやる。
夜這い自体は容認なんだから、ご近所への顔は立つか・・・

三男の返信は、かなり遅かった。


上司の紹介で親類の娘さんとお見合い中ですが、どうも僕自身引っ込み思案のせいなのか今回もうまくいきそうにありません。村のお祭りの話をしたら興味を持ってくれたみたいで、ご一緒しましょうか?って言ってくれてはいるのですが、ご両親が娘さん想いなのでいっしょにくるといってききません。二人きりにならないとお互いの意思を確かめることは難しいと思うし、ともかくいつもご両親同伴なのでつい気を使ってしまいます。村への帰郷のことはもう少し待ってください。彼女の好意をもう少し確認できるまで待ったほうがいいように思うのです。いつも慎重すぎて婚期を逃すと、上司のかたにもお叱りを受けているのですが

改行もしないでずうっと打ち続けた文面は、世見苦しいことおびただしく、老女も顔をしかめて目を細めて文面を追った。
文章の途中で間違えて送信してしまったのか、ここで終わりなのかさえも定かでない優柔不断な文章を見て、老女は怒りに目をあげた。
やおら携帯を取り直した彼女は、直に電話をかけていた。

ばっかも―――んっ!
ぐずぐず言わんで、親もろとも、連れて来―――いっ!!!
前の記事
奪(と)られた妻 ~ひとしの場合~
次の記事
オトナの入り口♪

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/2895-48c95eac