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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

きれいな裏地 汚れた裏地

2012年09月26日(Wed) 07:05:26

え?あたし?もうすませちゃったわよ。
吉田エイ子はいつもの野太い声で、美恵子にそういった。
だれも気づいていないかもね。あたし、出席番号がいちばんさいごだから。

来校する吸血鬼たちに処女の生き血を提供しているこの女学校では、
なんらかの理由で処女を喪失した女子生徒は、出席番号を抹消されて、席も教室のいちばん窓際に並ばされてしまうのだが。
もともと最末席で窓際に陣取っているエイ子のばあい、だれも彼女の変化に気づくことはないのであった。
もっともそれも、女子生徒の供血行為が一巡するまでのこと。
自分の順番が飛ばされることで、彼女は”大人”になっていることを、周囲に知られてしまうはずだった。

ねえ、エイ子さん。
下校の道すがら声をかけてきた青年に、エイ子は「なに?」というように、ぞんざいな態度でにらみ返す。
親たちの取り決めで婚約相手となったその青年は、いつもは傲岸だとうわさされていたけれど、
エイ子のまえではひどく、おずおずとしていた。
うわさ・・・聞いたんだけど・・・
青年が言わんとしていることを、エイ子はすぐに見抜いたらしい。
学校に来る吸血鬼のことね?なにもないわよ。ほら。
彼女はむぞうさに、制服のスカートをたくし上げる。
白のスリップのレエスの縁取りと、スカートの黒光りする裏地を、ためらいもなく曝け出して。
彼女の指し示した真新しいウールの生地には、一点の曇りもなかった。

吸血鬼どもが女学生を弄ぶと、スカートの裏側を自分の精液で白く濁らせてゆく。
きっとエイ子の許婚が耳にしたのは、そんなうわさなのだろう。
エイ子のためらいもない行動に、青年はびっくりしたらしい。
目を白黒させながら、あいさつもそこそこに、足早に立ち去っていった。
あのひとね、自分の評判だけが気になるのよ。
エイ子は不満そうに、鼻を鳴らしていたけれど。
美恵子の胸中は、ひとの結婚相手どころではなかったのだ。
ほかでもない、彼女のスカートの裏側こそ、白く濁った粘液の痕を、ありありと残していたのだから。

相手は、ほかならぬ母親の愛人だった。
あしたのあなたのお相手ね・・・
そんなふうにこっそりと、母親から打ち明けられた時の、
息がとまるほどの驚きを、美恵子はいまも忘れない。
母を汚した男が分泌する、忌まわしい体液が。
スカートの裏側と、清楚に足許を透きとおらせていた黒のストッキングとを濡らしていくのを、
彼女はだまって、耐えていた。
ごわごわになったスカートと、糸の一本一本にまで淫らな液をしみ込まされたストッキングとをまとったまま、たどる家路。
そんな家路をいくたび、美恵子はたどってきたことだろう?

処女を守ることと、引き替えに。
自分の身にまとう制服を、もてあそばれて。
身体の奥で受け止めることになるはずだった体液をまき散らされて、制服を濡らす。
そんな不文律が横行するこの学校ではむしろ、身体を許した生徒の制服のほうが、きれいな状態になっているのだった。


ただいまぁ。
いつになくくたびれた声をしている、と、美恵子は自分で思った。
はぁい。
応じる母親の声色も、どこかけだるげだった。
姿を見せない母親の背後に、男の影を感じて。
美恵子はとっさに、黒のストッキングの足許を、嫌悪にすくめていた。

どうしたの?いつもお世話になっているんでしょ?ごあいさつくらいなさい。
母親に促されて、ぶきっちょに投げた挨拶を、男は軽々と受け止めていた。
よほどご執心のようね。きょうはね、あなたのために来て下さったのよ。
娘が選ばれたことにウキウキとしている母親の態度が、いつになくいとわしい。
けれどもねっちりと注がれてくる好奇の視線にわが身を晒すことに、いっぽうではえもいえれない快感を覚えはじめた美恵子でもあった。

制服がいいのかしら。
だれに訊くともなく美恵子がぽつりと漏らすと。
あらいやだ。わざわざ家までお見えになったんだもの、着替えなさいよ。
このあいだ買ってあげたよそ行きのワンピース、あれがいいわ。
母親にそう促されて、美恵子はいかにも気がすすまないという態度で、起ちあがった。

・・・・・・まずかったかな。
・・・・・・そんなことないわよ。
・・・・・・美恵子ちゃん、嫌がってるじゃないか。
・・・・・・女の子はね、嫌そうなそぶりをするものなのよ。
・・・・・・あの子が怒ってるようなら、出直すぜ?仲良くしたいだけなんだから。

男はどうやら、ひどく遠慮しているらしい。
美恵子の脳裏になぜか、さっき行き会ったエイ子の許婚のことがよみがえった。
おそらく彼を家に招んだのは、ふたりの交際に積極的な母親のほうかららしい。
母の相手から身を守るために、制服を汚されることを許している日常。
危うい均衡はそのままにしていても、崩れるのは時間の問題だったが。
母親はあえてそれを、いますぐにでも崩そうと試みている。
共通の秘密を作ることで、不倫をおおっぴらに愉しむつもりなのか?
嫌悪のどす黒い感情が、彼女の潔癖な胸を染めた。

悪いね。
男はみじかいことばを少女に投げると、サッとにじり寄ってきた。
両肩を掴まれて、身を揉んで抗おうとしたけれど、
手慣れているらしい彼の猿臂は、少女の身をこ揺るぎもさせなかった。
むぞうさに這わされた唇が、首すじに生温かく沁みた。
いつの間にか、母親の姿はない。
美恵子がどうすることもできないでいるのをよそに、男はワンピースの背中に腕を回して。
薄い皮膚をこともなげに、カリリ・・・と噛んだ。

ぬる・・・っ
血潮の生温かさが、皮膚を這った。
すかさず男の唇が、血潮のほとびを蔽うようにとらえていく。
どうやら、血を愉しんでいるばかりではないようだった。
美恵子の気に入りの、真新しいワンピースを汚すまいと、けんめいに唇を擦りつけつづけているのだった。

その日は夕食もそこそこに、退勤してくる父親と顔を合わせるのを避けるようにして、美恵子は床についていた。
着換えの時に履き替えた、真新しい黒のストッキングは、いつものようにチリチリに噛み剥がれてしまったけれど。
いつになく従順に応対して破らせてしまったのを、美恵子自身が自覚していた。
きっといちぶしじゅうをどこからか視ていたであろう母親は、素知らぬ顔をして夕餉の支度についていた。

翌週の水曜日。
きちんと折り畳まれた美恵子の着替えのいちばん上には、真っ赤なパンティがそっと置かれていた。
母さんからのプレゼント。気に入るかな?
すでに共犯者の笑みを満面にたたえた母は、意味ありげな目配せを娘に送ってくる。
あの日以来、自分でもびっくりするくらい、反抗的な態度のとれた美恵子は、
そんな母親から目線をはずし、それでも真新しい赤のパンティを無言で足首に通していった。
帰ってくるときにはもう、一人前だね。今夜のごはんは、お赤飯にしておくね。
母親は悪戯っぽく、小手をかざして手を振って、登校していく娘を見送った。

おはよ。席隣になったね。
エイ子がいつもの野太い声で、美恵子をふり返ったのは、翌日のこと。
出席番号を抹消された少女は、はにかんだようにエイ子を見た。

婚約解消したエイ子は、いまの相手と一緒になる気だという。
吸血鬼と人間が結婚するの、ここではふつうのことなんだもの。
嫁入り前の不倫はどうやら、花婿との婚前交渉に塗り替わるらしい。
わたしのばあいは、どうなんだろう?
美恵子は反芻してみる。
十五も年上のあのひとは、筆おろしの相手は母だといっていたけれど。
そういえば父も、母とはずいぶん齢が離れていたっけ。
あるいは、おなじことがくり返されるだけなのか。
みんなが視線を向けずに美恵子を注目する教室で、先生の熱心な授業は、彼女の耳を素通りしていった。


あとがき
操を守ろうとした少女のスカートの裏地は汚れているのに、
すでに処女を喪っている少女のスカートの裏地はきれい・・・そんなあたりを描こうと思っていたのですが。
(^^ゞ
いろんなものを、盛り込みすぎましたかねぇ。
(^^ゞ
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