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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ご退院、おめでとうございます。

2012年09月28日(Fri) 07:26:40

ご退院、おめでとうございます。
病室に入ってきた白衣姿が、改まった態度で丁寧に頭を垂れた。
いつも面倒を見てくれた看護婦の樋口夕子が、退院を告げてきたのだった。
夕子は俺とおなじ年恰好。つまり四十そこそこの、一見して冴えない中年の看護婦だった。
血なし病と名づけられた俺の病に、数名の看護婦があてがわれたが。
入院以来つきっきりになってくれたのは、彼女ひとりだった。
血なし病とは、いい名前をつけてくれたものだ。
本来は、病気でもなんでもない。ただたんに、俺の正体が吸血鬼だということを隠すための、擬態にすぎなかったのだ。
俺は片っ端からこの病院の看護婦を襲い、女の生き血というやつを口にし続けていた。
量はさして、必要なかった。
食事はふつうの人間とおなじだったし、たまの発作さえ訪れなければ、正確には半吸血鬼と呼ばれる俺の正体は、だれにもわかりようがなかったから。
女の素肌を噛んで血を吸う・・・という行為をしんそこ愉しむ、一種の心の病だと診断された。
治る病では決してなかったのに、退院とはどういうことだろう?
俺は夕子に付き添われるままに退院手続きを取り、彼女の運転する車に乗って、見知らぬ街角に降りたっていた。

案内されたのは、ほかでもない夕子個人の家だった。
一戸建ての古い家は、周囲の家とは深い生垣や雑木林によって、隔絶されていた。
社会復帰するまでの間は、ここでお過ごしください。
血が欲しくなったら、いつでもお相手いたします。
そのあいだ、病院はどうするのか?と訊いてみたら、
これは治療の一環ですというこたえが、かえってきた。
いずれはここからも出て、ふつうの社会人に戻るということなのだろう。
そう、独りぼっちの世界に。

それまでのあいだは・・・
夕子は生真面目そうな地味な目鼻立ちにちょっとだけ戸惑いをよぎらせながら、
いつものように白衣のすそをたくし上げて、白のストッキングの脚を垣間見させてくれた。
渇いた俺は本能のままに夕子を押し倒し、
夕子は、厭・・・厭・・・と呟きながらも、
白のパンストにくるまれたふくらはぎを俺のいたぶりにゆだね、パンストを噛み破かれていった。

入院中、どれほどくり返されたかわからない行為。
一般家庭という風景のなかで、二人きりでそれを演じることに、ひどく刺激を感じた。
いつもより多く血を吸い取った女体は、さすがに肩で息を点き、ほつれた髪をつくろう横顔は、色を喪っていた。
こういうことで、よろしいのですよ。
女は苦しい息をはずませながら、ふたたび俺に組み敷かれていった。

俺の相手をするときには、夕子はいつも白衣姿だった。
血の着いた白衣は、手術後の看護婦のそれに紛らせて、院内のクリーニングに出してしまうのだという。
もとより一般の患者も多い病院内で、俺の存在は秘密にされていたし、接する看護婦も限られていた。
離婚歴もある冴えない四十女が、どうして俺にあてがわれたのか?
その理由はいまでもわからないし、じつはとっくにわかっているような気もする。
勤務から戻ると夕子は、家のなかでも白衣に着替えて、あの薄々に透ける純白のナイロン生地で、自らの足許を染めてゆくのだった。

あたしより、何年か長生きしても。
そのあいだたまにでいいから、思い出してくださいね。
もしそういうふうなお約束をしてくださるのなら、わたしはよろこんで、最後の一滴まで血をあげます。
苦しい息の下でそう告げてくる女の、いつしか俺は抱きついて、涙を流していた。

首尾よく社会復帰を果たした俺は、いまでは院長の紹介で、そこそこの大企業に勤めている。
時には若くて美人なOLを籠絡して、女たちの生き血に酔い痴れる日々―――
しかしそれでいて、あの古びた邸にひっそりと暮らす女のところに、通う足取りが絶えることはなかった。
いつかふたたび、いっしょに暮らすようになるのだろうか・・・?
夕子は今夜も、白衣姿で俺を出迎える。
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