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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

薄っすらとほほ笑む彼女。

2013年05月16日(Thu) 07:46:39

頬骨の輪郭をくっきりにじませた白くて薄い膚に。
きみは精いっぱいのほほ笑みを泛べて。
だいじょうぶだよ。ちょっぴり貧血なだけだから。
いつものように強がりをいうきみを抱き寄せると、
華奢な肩幅が、いっそう狭まったような気がした。

トモヤひとりで相手をするのは、無理じゃん。
夜な夜な訪れる悪友のことを知った彼女は、
同性同士の逢瀬を気味悪がることもなく。嫉妬することもなく。
ただ、ボクの身だけを気遣ってくれて。
若い女の血が欲しい・・・臆面もなく呟く彼にも、臆することなど思いもよらず、
あたしはいいよ。トモヤが嫌じゃなければ。
いよいよ血を吸い取られるという直前になってさえ。
彼女はボクのことだけを、気遣いつづけてくれていた。


一夜あけて。
おはよう。
薄っすらとした優しいほほ笑みは、夕べまでの彼女と、なにひとつ変えられていなかった。
さすがに堪えられなくなって、自ら気絶するまで血を与えたあとの貧血は。
われにかえったボクのことを、眩暈で苦しめはしたけれど。
それ以上の苦しみは、ついに訪れることがなかった。
なにが起きたのか。
どこまで許したのか。
どれほど奪われたのか・・・
そんなどす黒い妄想を、力のこもらない声が、一瞬で拭い去っていった。
あのひとね。トモヤの恋人だから、よかったんだって。
さいごまでトモヤに、感謝していたよ。


か弱げなくらいにほっそりとした首すじに、紅い斑点がふたつ。
それは、ボクと彼女にしか、目に映らないもの。
皮膚の奥深く、あの鋭い牙を滲ませられて。
身体の隅々にまでめぐる、うら若い血潮を。
一滴余さず舐め尽くされると。
身体の隅々にまでいきわたる、淫らな毒液が。
どれほどひとの理性を狂わせるのか、ボクは知り尽くしてしまっている。

きみは俺のもの。俺はきみのもの。
だからきみの最愛のひとを、すべて奪い尽くしてしまいたい。
そんな言いぐさで、彼女の血を欲しがる彼のことを、断り切ることはできなかった。
いつかうわ言のように、口にした言葉―――
彼女の血がきみのなかで、ボクの血といっしょになるんだね。
嬉々として呟いた言葉に、彼女はおっとりと肯いて、いった。
仲良くなろうね。三人で・・・


浮気、してくるね。
血を吸われちゃうのも、浮気のうちだよね?
トモヤは、怒らないよね?彼のこと。
でも、あたしが戻ってきたら、いやらしい女だって、叱ってね。
口許に、淋しげに浮いたえくぼ。
薄っすらとしたか弱げなほほ笑みが、温もりとなってボクの胸を衝いた。
その切っ先は、吸血鬼の牙よりもはるかに優しくボクの胸を浸して。
あとからじんわりと、甘美で危険な毒をしみ込ませてきた。

朝になったら、戻るから。
気になったら、あとを追いかけてきてね。
羞ずかしいけど、覗いてもいいよ。彼も、いいって言ってる。
でもできれば、来ないでね。ほんとうに、羞ずかしいから・・・
それでもやっぱり、来るかな。来ちゃうかな?無理しないでね。

愛してるから。

表情を見られまいとして、サッと肩を翻す彼女は、
背すじをすっくと伸ばし、あとをふり返らずに歩みを進める。
彼女のか細い身体から、なけなしの血潮を啜ろうとする男の待つ部屋へ。
色の薄いロングスカートから覗く足首が、グレーのストッキングに透けていた。


やっぱり来るかな。来ちゃうかな。
羞ずかしいけど、覗いてもいいよ・・・

優しい彼女の誘い水が、今夜もずうっと、ボクを呻吟させ、
そして救いの手を差し伸べてくる。
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いつも、きみといっしょにいるために。

コメント

生々しくない寝取られ
ひと月のご無沙汰をしてしまいました。
お元気ですか?
実は、わたくしも先日原稿を校正しながらこの話は歪んだ<寝取られ>だなぁとおもったお話があり、この爽やかなストーリーにもいたく感じ入ってしまった次第です。
自らが組敷くのではなく、他者に組敷かれ奪われるその様を見たり聞いたりすることで昂る男心をほんのわずかですが、知ることができたような気がしました。

ふふふ、柏木様はいつもこんな想いを望んでいらっしゃるのですね。
by 祥子
URL
2013-05-20 月 09:38:36
編集
>祥子さま
こちらこそ、ごぶさたしております。
(^-^#)

>歪んだ寝取られだなぁと思ったお話
が、気になります。^^
ま・・・このジャンルのお話は、たいがい多かれ少なかれ、歪んでいると思うんですがネ。
^^;

彼女と交わる歓びと。
だれかと交わる彼女を視る歓びと。
もちろん等価ではありませんが、
いずれも彼女に対する愛情の濃淡に、優劣はつけがたいのだと思います。

しっかし。
このごろ祥子さまが寝取られに関心をお持ちになっていらっしゃいます。
柏木的には、じつにまさかの展開です。
(^^)
by 柏木
URL
2013-05-21 火 05:59:27
編集
柏木様
実は電子書籍の第6巻は「蝉時雨の庭外伝」なのです。
支配人のお話を校正しながら、書いていた時にはそう意識していなかった<寝取られ>感が高まって行くのを感じまして(笑)
随分とその面で加筆修正をいたしました。

まさか、わたくしがそんな属性でお話を一つ書いていたとは・・・
我ながらびっくりです。
by 祥子
URL
2013-05-21 火 09:21:55
編集
> 祥子さま
祥子さまの健筆がもどってきたのは、御同慶の至りです。
それにしても・・・
コチラのジャンルには手を染めないだろうな・・・と思っていたのですが。
もしかして、芸域が広くなられたのでは?

いろんなモノに、ぜひぜひ挑戦してみて下さいね☆
by 柏木
URL
2013-05-23 木 23:18:18
編集

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