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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「ご奉仕デー」

2013年05月25日(Sat) 05:44:24

入学したばかりの女生徒たちは、だれもが林檎色の頬っぺたをしていて。
都会ふうのこ洒落たブレザーの制服に身を包んでいても、やっぱりお里は知れてしまう。
三年生を受け持っている春原教師は、不慣れな若い女性教師が担任を務めるこのクラスの先導役を手伝っていた。
教師歴は、20年ちかく。その大半をこの村で過ごしている春原教師にとって。
きょうの「ご奉仕の日」は、特段目新しい行事ではなかったけれど。
都会から赴任してきたばかりの女教師には、ちょっと過激な体験だったにちがいない。
この村では日常的行事になっていて、生徒も親たちさえも納得づくでつづいていることとはいっても・・・
なにしろ———村に棲みついている吸血鬼が女生徒たちの血を吸うのの、片棒を担がされるわけだから。

一か月以上もまえから、出席簿に日にちが記されていて。
生徒によっては、相手の名前さえ書き込まれている。
その日になると担任の教師は自分のクラスの教え子たちを引率して、
とくに女性の教師の場合には、率先してお手本を見せることになっていた。
傍らの若い女教師、杉浦教師もまた、いまは首すじに紅い痕を滲ませたまま、
自分のきょうの仕事ぶりを、大先輩である春原教師に、嬉々として口にしているのだった。
———きのうはは佐川さん、左沼さん、須田沼さんを引率したんですよ。
———血を吸われているときのあの子たちの表情って、かわいいんですねぇ。
なんて。

招かれた六人の女生徒は、教師ふたりが手分けして引率をした。
杉浦教師は春原教師のほうをちらと見て、じゃあ先生はこの三人をお願いしますね・・・と、
そのときだけは自分のほうから、仕切りをした。
心のなかでほろ苦く笑いながら、春原教師は任された三人を、杉浦教師がべつの三人を連れて入っていった空き教室のすぐ隣の教室に導き入れた。
もっぱらこういう行事のために利用される旧校舎には、日常的な授業風景は絶えていた。

教室に引き入れた女生徒は、三人。
人待ち顔の先客たちの数も、三人。
彼らはうっそりと俯けていた顔色の悪い顔を生徒たちに向けると、はじめて白い歯をみせた。
だれがだれを・・・という選択は、すでに客人たちのあいだで、あらかじめ決まっていたらしい。
迷わずに相手を択ぶと、有無を言わさぬ勢いでツカツカと女生徒たちに足を向けて、
座りなさい、というように、三つ並べられた椅子に、彼女たちを伴った。
春原教師は教室の入り口に佇んだまま、生徒たちの様子を視ている。
取り乱して泣き出す子をなだめたり、逆に積極的な応対に出て貧血を起こした子を保健室に連れて行ったり・・・が、彼の役目だった。
とくに新入生の場合、初体験で落ち着きを失くす生徒が、多いのだ。

林檎色の頬っぺたをした少女たちは、思い思いに首すじを狙って覆いかぶさってくる客人たちをまえに、従順に目を瞑る。

いい夢を見れる期待に胸をはずませて、くすぐったそうに眼を瞑る子。
仕方なさそうにため息をついて、表情を消す子。
早くも涙目になって相手を見つめ、小声でなだめすかされながら目を瞑った子。

だれもが咬みつかれた瞬間、あっと声をあげて唇を開いた。
血色の好い唇から覗く白い歯を、だれもが透きとおるほど輝かせていた。
三人ともがっくりと肩から力が抜けて、椅子の背もたれに上背をもたれかけてしまうと。
三人の客人はそれぞれに少女たちの顔色を観察し、まだ吸える、と判断すると、
こんどは足許にかがみ込んでいった。
吸い取った血をあやしたままの赤黒い唇が、紺のハイソックスを履いたふくらはぎに、ぬるりと這う。

ちゅう・・・っ。
ちゅう・・・っ。
ちゅう・・・っ。

三人三様にたてる吸血の音に。
少女たちもまた、それぞれの反応を示していった。

「やだァ・・・」
夢見るように目を瞑った子は、くすぐったそうな笑い声を洩らして、

「あー・・・」
仕方なさそうに目を瞑った子は、ハイソックスを破かれる気配に眉をしかめて、

「あ・・・あ・・・」
べそをかいて目を瞑った子は、血を引き抜かれてゆく感覚に慣れないのか、おっかなびっくり相手をし続ける。

ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ・・・
あっ・・・あっ・・・あっ・・・

血を吸う音があがるたび、少女たちの声色は和らぎとくすぐったさを色濃く織り交ぜてゆく。
しまいにはだれもが、くすくすと笑いながら。
紺のハイソックスをずり降ろされひき剥がれてゆくようすを、面白そうに見おろすようになっていた。

「ご奉仕」は、気絶するまで続けられる。
1人目の男が夢見心地の少女を促して保健室に連れてゆき、
2人目の男も諦め気分の少女を誘うと、少女のほうからすすんで起ちあがり、これも保健室に消えた。
残った少女はまだべそを掻いていたけれど、それは甘えるような態度に変わっていて。
保健室に脚を運ぶ余力もなく、その場に尻もちをついて気絶した。

「ご苦労さん」
春原教師は、あいてにぞんざいな声を投げた。
「ご馳走様」
ごま塩頭の男は、春原教師よりも十は齢が上のはずだった。
吸い取った血潮を手の甲でむぞうさに拭うと、拭った手の甲をこんどは行儀悪く、自分のワイシャツにべたべたとこすりつけている。
こんな下品な男に・・・と、ちらと思ったものの。
だれもがそうなんだ・・・という諦めが、脳裏にほろ苦く浮いた。
「お口に合ったかね?」
「んまい・・・んまかった!」
男は目を瞑り、感に堪えたように声をあげた。
「そいつはなによりだった」
春原は皮肉な口調で応えた。
「まだ喉が渇いているんだろう」
「ああ、ひどく旱(ひで)りだったからな」
「男の血じゃ・・・口直しの逆になるかな?」
春原は自分のスラックスを、ひきあげている。
ストッキング地の濃紺のハイソックスが、淡い毛脛の浮いた足許を、性差を埋めるようにコーティングしていた。
「そんなこた、ねえ」
男は強く否定すると、立ったままの春原の足首を掴まえて、薄い靴下のうえからふくらはぎに食いついた。
ストッキング地のハイソックスはぱちぱちとかすかな音をたててはじけ、裂け目が縦に拡がった。
男の吸いかたは、執拗だった。

きゅう・・・きゅう・・・きゅう・・・

よほど喉がカラカラだったのか、少女がその場で尻もちをついたのも、無理はない。
失血で頭がぼうっとなるのを感じながら、春原教師は少女のほうを見やった。
少女は尻もちをついたままの姿勢で気絶をしていた。
さっきまでの悲壮な顔つきは消えて、どこか惚けたように口を半ば開いていた。
いい夢をみているのだろうか、かすかな微笑さえ浮かべていることに、春原はすこしだけ救いを見出す思いがした。
紺のハイソックスは、糸を引いたよだれを光らせたまま、脛の半ばまでずり落ちていた。
淡い嫉妬のような感情をあわてて打ち消すと、理性を保つために荒々しい勢いの吸血に歯を食いしばる。

「この齢になっても・・・いつも気が咎めるんだよ。吸血鬼の片棒を担いでいるんだからね」
ずり落ちたハイソックスは、使いものにならないほど裂け目を拡げていた。
男がもう片方の脚をおねだりするのに仕草で応えながら、春原は独りごとを言い止めなかった。

よその家の娘さんを預かりながら、生き血を吸わせる先導役なんかをやらされて。
まあ・・・どの子もしつけは行き届いているから、さいごにはお行儀よく血を吸われて堕ちていっちゃうものなのだけど。
やっぱりそれは、気が咎めるものだよね?
教師のだれもが通った道で、いずれは自分の番が来るってわかっているから・・・まだ勤まっているのだと思うよ。
その子の血。
よほど口に合ったようだね。
まあむぞうさに吸われて捨てられちまうよりかまだいいか。
あんたがいま血を吸った生徒は、俺の娘なんだからな・・・

いい夢でもみているのだろうか?少女が笑みを滲ませて、おとがいを仰のけた。
静かに輝く白い頬には、ほんのすこしだけ、血色を取り戻しかけていた。
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