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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

落花狼藉のなかで。 ~許された姦関係~

2013年06月18日(Tue) 04:08:29

宴のあと・・・というよりも。
落花狼藉のあと・・・といったほうが、ふさわしかった。

白布を巻いた丸テーブルはことごとく倒れて、
脚の折れたテーブルを蔽う白布の向こうには、放恣に伸び切った女たちの脚が覗いていた。
婚礼の間のはずのその席は。
侵入してきた吸血鬼たちによって、瞬時に乱倫の場に、塗り替えられていた。
花嫁は無事なのか・・・?
そんな懸念など念頭にあがらないくらい、すべてが差し迫っていた。
わたし自身が、当事者だった。
部屋に入り込んできた吸血鬼のひとりがわたしを後ろから羽交い締めにして、首すじに噛みついてきたときから。

おびただしく吸われた血の量にわたしが卒倒すると。
やつは立ちすくむ妻に、襲いかかっていた。
金切り声の主の、着飾ったワンピースが血のりに濡れるのを、目の当たりにしていながら。
わたしは自分のシャツに撥ねた血のりを、ひどく気にかけていた。

昏倒したわたしがわれにかえったとき、わたしたちを襲った者の正体がわかった。
この村に招かれて泊められた家のあるじだった。
薄ぼけた感じのする、さえない中年男に、わたしは無性に親しみを感じていたのに。
いまその彼は、わたしたち夫婦の血潮で、口許を真っ赤に染めている。

だれかれかまわずじゃなくって。
男は言った。
喜美代さんを襲ったのは、相手が喜美代さんだったからだ。

そういえば。
男はおずおずとだが、夕べも妻と話したそうにしていた。
陽気にワイングラスを傾ける妻は、内気で陰気な中年男のそんなようすに、まったく気づいていなかったみたいだったけど。

男の囁きはつづいて、そのことばはわたしを焦がれさせる力を持っていた。

それからね。
喜美代さんを襲ったのは、それがあんたの奥さんだったからだ。
あんたの奥さんだから―――辱めてみたい。

妻には男の言いぐさが聞こえているのだろうか?
失血に蒼ざめた頬は無表情で、ただ事務的に身づくろいをつづけるばかり。
くり返しくり返し、乱れた着衣に、血に汚れた膚に、掌は行き来するけれども。
ワンピースを不規則に彩るバラ色の水玉もようは、もうどうしようもないにしても。
振り乱した髪も、乱れたワンピースのえり首も、いっこうに整わないのだった。

男は妻の脚を掴まえて、吸った。
妻は無表情のまま、そして脚も床のうえにむぞうさに、投げ出したままだった。
肌色のストッキングのうえから這わされた唇は、ヌルヌルとしたよだれを薄いナイロン生地に沁み込ませていったけれど。
妻の無表情は、変わらなかった。
それを承諾と取ったのか、男はやおら口許から牙をむき出しにすると、
それを二本ながら、ずぶずぶと埋め込んでいくのだった。
ほとび散る血も、ブチブチと裂けるナイロン生地も。
妻の顔色を変えさせることは、なかった。

家内の生き血は、お口に合ったかな?
わたしは皮肉とも本音ともつかない口調で、曖昧に笑った。
男も笑った。妻から吸い取った血潮を、満面に光らせながら。
たまたま・・・わたしが履いていたのがストッキング地の長靴下だと思いだした。
女ものには比べようもないだろうね。
わたしは苦笑を泛べながら、スラックスのすそをたくし上げる。

いいえぇ。慎んで・・・
男は神妙に頷くと、そのままわたしの足許に、唇を吸いつけていった。
痺れるような痛み・・・そして、妖しい疼き。
同性のわたしですら、耐えかねるほどの、濃い疼き―――
これを妻は、経験してしまったのか・・・
血を吸われるわたしの傍ら、妻はいつまでも無表情に、はかどらない身づくろいを続けている。
ブチブチと音を立てて裂けるナイロン生地から素肌が露出するのが無性に面白くって、
わたしはもう片方のスラックスを、たくし上げていった・・・

失血の眩暈が、すべてを覆い隠していた。
さいしょはじたばたと、激しく暴れる気配がした。
やがてそれは静かになって、男の荒い息ばかりが聞こえてきた。
そして、傍らに大の字にあお向けにされた妻が、時おりうめき声をあげるのを、たしかに耳にした。

強姦、ですよ。そう思ってください。そうじゃないと奥さんが、かわいそうです。
さいごまで必死になって、節操を守り抜こうとした―――そういうことにしておきましょう。
男の無表情は、妻のそれに似通っている。
ふとそう感じた。


あのひとのところに、行ってきたの?
湯あがりの妻は、小ざっぱりとした花柄のワンピース姿。
わたしは蒼くなった顔色を、さらに蒼く深めて部屋に戻り、妻はブランデーのグラスを片手に出迎えてくれた。
気付け薬よ。あなた、しっかりなさって・・・
念じるような口調でわたしの顔を覗き込むと。
矢のようなはやさで、囁きかけてきた。
――――こんど行くときは、あたしもごいっしょさせて。

いますぐ、行こう。
戸惑う妻の手をひくようにして、わたしは宿のあるじの部屋に向かっていた。
湯あがりなのに?とためらう妻に、ストッキングまで穿かせて・・・

いいんですか?
彼の念押しは、ある意味苦痛でもあった。
自分がしようとしている恥ずべき行為をまえに、われにかえらせてわけだから。
ああ、かまわない。わたしたち夫婦は、もうあなたの奴隷なのだからね。
友人ですよ、と、男はやんわりと訂正すると。
わたしは妻の後ろから、彼女の両肩を抑えていた。
目をつぶっておいで。
妻は童女のような素直さで、目を瞑る―――
男は妻の唇を奪い、奪われた唇は唇同士のまぐわいに、積極的に応じ始める。
下腹部がジリジリと焦げる思いで、それを見守るわたし・・・
やがて男は凶暴な目になって。
妻の首すじを、咬んでいた。

落花狼藉の、真っ最中である。
妻は嬌声をあげ、腰をくねらせながら、相手の慾情に応えつづける。
あなた・・・あなた・・・視て。見てぇ。御覧になってぇ・・・
あくまで見せつけようとする妻。
悩ましく乱れる肢体に、われ知らず目線を集めてしまうわたし。
おしゃれな妻がなん着も携えてきたスーツやワンピースは。
帰宅するまえにきっと、すべて台無しにさせてしまうつもりなのだろう。
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