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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

いただかれちゃいました。 ~満月の夜空の下で~

2013年09月20日(Fri) 06:09:51

―――いただきました。

男の声色は、にんまりと笑んでいた。


―――・・・いただかれてしまいました。

少女の声色は、消え入りそうにひっそりとしていた。


さいしょの声の主は、もうひとりを組み敷いた姿勢のまま。
さっき吸い取ったばかりの血潮を、持ち主の胸元にぼたぼたとしたたらせていった。

組み敷かれた少女は両肩を抑えつけられたまま、セーラー服の胸を狙ったしたたりを避けようと、むなしくいやいやをくり返した。
けれどもそんな努力も虚しく、制服のえり首に走る真っ白なラインにシミをつけられてしまうと、
身体の力を抜いて、「もう」とふくれ面をみせただけだった。

「月を観ようか」
男は少女の身体のうえから身を躍らせると、彼女の傍らの草地に腰を下ろした。
少女は仰向けの姿勢で横たわったまま、滲んだ涙をしばらくのこと、こらえていた。
「ほら、綺麗だよ。今夜は中秋の名月だ」
優しく諭すような声色に誘われるように、少女はけだるそうに身を起こすと、
こうこうと照り輝く月に、魅入られるように視線を吸いつけた。
月の光に蒼白く染められた少女の頬からは、失血の度合いを窺うことはできなかった。

虚しく草地を掘り返す少女の指先を、男の掌がゆっくりととらえた。
「制服汚しちゃったの、母さんになんて言い訳しようか」
「だいじょうぶ。きみの母さんもきっと、身に覚えのあることだから」
「うそ!」
肩をひっぱたかれた男は、くっ、くっ、っと、おかしそうに忍び笑っている。

「夏服のときなんかに履かないんだよ、黒のストッキングなんか」
拗ねた声色を作ったまま、少女は墨色に染まった脚をみせびらかした。
「破くの好きなんでしょー?いやらしい」
ひくく囁いた声色にかすかに甘えが滲むのを、男は聞き逃さなかった。
「ずいぶんと意地汚く破くんだよね?ゆう子ちゃんも、咲良ちゃんも、こないだ破かれちゃったって、見せつけられちゃった」
「きみの番が待ち遠しかった」
足許に近寄せられた不埒な唇を、いったんは押し返したけれど。
二度めのトライには、手出しをしなかった。

くちゅうっ。
わざとのようによだれのはぜる音を立てて、「お行儀悪い」と少女がたしなめるのにみ耳を貸さないで。
ちゅうちゅう・・・ぴちゃぴちゃ・・・
露骨な音を立てて、肌の透けるナイロン生地をじりじりとしわ寄せていった。
「まあ、いやらしい」
少女は眉をしかめながらも、脚に通した礼装が辱められてゆくのを、そのじつ面白そうに見おろしている。

ぱりぱり・・・っ。
かすかな音を立てて薄手のナイロン生地がはじけ、薄っすらとした裂け目がつつーッと、涙の痕のようにつま先まで拡がった。
「もう」
少女は口を尖らせたが。
あとは荒々しい唇と掌にまさぐられる足許から、ストッキングをちりちりに引き剥かれてしまうのを、男の好きにさせていった。
ひたすら月の輝きに視線を寄せる少女の足許から、薄手のナイロンのゆるやかな束縛が取り去られてゆく。
小気味よい解放感が、いつか少女の胸の奥を浸しはじめていた。

「ひどーい」
ところどころむき出しの脛を露出させた凄まじい眺めに、少女は一瞬口ごもり、
男の頬に平手打ちをくれた。
わざと力を抜いた掌は、男の頬を軽く撫ぜただけだった。
頬に撥ねていた血が、少女の指先に着いた。
「舐めてみな」
「やだ」
「いいから・・・さ」
おそるおそる指先を含んだ唇が、ニッと笑んでいた。
「おいしい?」
男が訊くと、
「おいしい」
少女が応える。
さっきと逆方向のやり取りだった。

「送るよ」
「ウン、家の前までね」
手にした少女の鞄の重たさに、男は「重てぇ。なにが入っているんだ?」と訊いた。
「分厚い参考書。図書館から借りた文学全集。それと・・・女性雑誌」
どうやらさいごのだけが、本音らしい。
あははははっ・・・と、あっけらかんとした笑いが闇に響いた。

「また吸わせろよ」
「もう嫌よ」
「つぎの週末はどう」
「無理強いしないって約束してくれたら」
「抵抗しないって約束してくれたら」
「ばか」
少女は男の尻を、後ろ手で叩いた。
素足の脛が、闇になまめかしく透けていた。
少女の脚から抜き取った黒のストッキングが、男のポケットからはみ出している。
目ざとく見つけた少女はさりげなくそれを、ポケットの奥へと押しやると。
「バイバイ!いやらしい吸血鬼さん」
「おやすみ、ふしだらでかわいいお嬢さん」
「ふしだらってのが、余計っ」
少女は別れぎわもういちど、男をぶつまねをした。

中秋の名月の下。
男は獲たことに。
少女は与えたことに。
ひどく満足を覚えていた。

中秋の名月!03



あとがき
珍しく甘々なお話になっちゃいました。(^^ゞ
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