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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夕暮れのカップル

2013年10月15日(Tue) 07:45:48

夕闇が迫ってくると、良太の本性があらわになる。
吸血鬼としての本能がしぜんと芽生えてきて、
自分という生き物が内面からそっくり入れ替わってしまうのを感じるのだ。

夜が更けてしまうと、若い人間の生き血を吸うことが難しくなる。
そんな時間に出歩いている男女は、たいがいろくでもないものだ。
そうした人種の血を喫(す)うと、時には身体をこわすことがある・・・
だから、この刻限がもっとも重要なときなのだ。

ふと目に留まったのは、夕暮れの街を歩くカップルの姿。
仲睦まじそうに寄り添うふたつの人影が彼の網膜を刺激したのは、彼女の足許。
デニムのショートパンツからにょっきりと伸びた発育のよい脚は、黒の薄々のストッキングになまめかしく染められている。
気の毒だが、俺の目に触れたのが運の尽きだ。

きゃあーっ!
悲鳴をあげる彼女のまえで、良太はまず男のほうの首すじにかぶりついていた。
不意打ちを食らった彼氏は、手足を羽交い締めにされて、身じろぎもできないままに、
目を白黒させながら、生き血を吸い取られていった。

ふー。
若い血は、やっぱり旨い・・・っ!
眩暈を起こしてその場に尻もちをついた彼氏を背に、良太は彼女のほうへと身体を向ける。

彼女は気丈にも、その場から逃げ出そうとはしなかった。
いい子だ。彼氏のこと見捨てないんだね。
おひざがガクガク震えていて、立っているのもままならないのを見透かしながら、
良太は軽く、彼女の臆病さにフォローを加えてやる。
すぐに楽にしてやるよ。目をつぶっていな。
掴まえた細い肩は、見てくれ以上に弱々しかった。
咥えたうなじの皮膚はひどくなめらかで、恐怖のあまり上ずった息遣いを伝えてきた。

やめろ!やめてくれえ・・・
弱々しい懇願が見あげてくるのをつとめて受け流しながら、良太は女のうなじを咬んだ。
ずぶ・・・
恋人の血に染まった牙が薄い皮膚を突き破って、なま温かい血液がドクドクと溢れてきた。

生き血と引き換えに体内にそそぎ込んだ毒液が、恋人たちの理性を狂わせはじめていた。
幸せな理性崩壊―――良太たちがそう呼んでいるたぐいのものだった。
人間の心の奥底に眠るマゾヒズムを、瞬時に目覚めさせる。
男は自分の女が吸血鬼に支配されるのを目の当たりにすることで、性的昂奮を掻きたてられて。
女は彼氏の目のまえで吸血鬼の意のままにされることに、見せつける快感に目覚めてしまう。

きょうの彼女は、しっかり者らしい。まだ理性が残っているほうだった。
涙ぐみながら懸命にいやいやをするのをなだめすかして、
路上に身を横たえて薄ぼんやりとなってしまった彼氏のまえ、
羞じらいながらすくめる太ももから、黒のタイツをびりびりと噛み破いてゆく。
小気味よく裂き散らしたタイツのすき間から、白い脛をいやというほど露出させてしまうまで。
薄手のナイロン生地のしなやかな舌触りをなんども愉しんだあげく、
彼氏の目のまえで、装いもろとも辱めを加えてゆく。
恋人たちにとってはおぞましいかぎりの、そして良太自身にとっては至福の刻だった。

お似合いだね、おふたりさん。
冷やかす彼に、
もうっ!
むくれて見せる彼女。
血の撥ねたTシャツ、悪くないかもよ。
まじめな口調の彼に、
ほんとう・・・?
ちょっぴり本気になる彼女。
なんでだろう?悔しいけれど、ゾクゾクするんだ。
口ごもる彼氏に、
じゃあ~、もっと見せつけてあげる。
陽気に笑う彼女。
お兄さん、彼女のタイツもっと破いてみてよ。
呼びかける彼氏に、
ま~ぞ♪♪
あくまで愉しげな彼女。

ちっともおかしくなんかないよ、全部おれのせいなんだから。
口ごもる吸血鬼に、
俺の彼女、奪(と)らないでくれよな。
せつじつな顔つきの彼氏は、ついでにつけ加えた。「守り切れなかったやつに、言う資格ないけど」
そんなことないよ。
良太は男を慰めていた。「相手がすこし悪すぎただけさ」
さっきから彼女の素肌を舐めくりまわして・・・正直妬ける・・・
俯く彼氏に、
好きになっちゃったわけじゃない。おれの目当ては彼女の生き血だから。
会話の成り立つ相手に対して、ほんのすこしだけ、嘘をついてやる。
タイツもでしょう?
すかさず彼女が、図星を突いてきた。

時どき逢ってくれると約束したら、無事に家に帰してやるよ。
ああ、よろこんで・・・彼女さえよかったら。
あたしはいいわよ。マゾな彼氏もいっしょでよければ。
見せつけて愉しむの?
そう、見せつけちゃうの。嬉しいでしょ~?
なんとでも言ってくれ~。
自暴自棄になった彼氏に、彼女は容赦なく、追い打ちをかける。
帰りにタイツの穿き替え買ってよね。弁償だよ~。
彼女がタイツをねだった相手は、あくまで彼氏のほうだった。
その代わり、あなたの気に入ったやつ穿いてあげる。
・・・こんどこのひとに逢うときに、見せつける用に。

あはははは・・・
星が瞬きはじめた夜空に、女の笑いはどこまでも虚ろに響いていく・・・


あとがき
こないだたまたま路上で見かけたカップルの姿から、こんなお話が浮かびました。
どこのだれとも知れない、あのお二人さん。
まさかこんな話の主人公にされてるなんて、夢にも知らないだろうなあ。
(^^ゞ
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コメント

出ましたね!どこか憎めない吸血鬼!(笑)
偶然目にしたカップルからこのようなお話を考え出してしまう柏木さんには脱帽です。
by あさみ
URL
2013-10-19 土 00:44:35
編集
>あさみ様
吸血鬼氏が、ひど過ぎないように。
彼氏が、あまりみじめ過ぎないように。
そして彼女が、天衣無縫なように。
そんなことを考えながら、描きました。
「憎めない」と感じていただけて、とても嬉しいです。
(*^^)v


つかぬお伺いですが。
あさみさんは、男女どちらでいらっしゃるでしょうか?
いえいえ。
襲われる彼女と。
彼女を襲われちゃう彼氏と。
どちらにおなりになりたいかな?^^ って、思ったので。

選択肢から、吸血鬼氏を抜いたのは。
きっとおなりになりたいのは、彼氏か彼女のどちらかではなかろうか?って、感じたからです。
フラチなお尋ねだったら、ゴメンナサイ。
(^^;)
by 柏木
URL
2013-10-19 土 13:04:26
編集
>柏木様
流石分かっていらっしゃいますね…
それはもう襲われる彼女の立場一択です(笑)
言ってしまうと、襲ってもらえるのであれば誰かに見られてなくとも十分嬉しいです(^_^;
by あさみ
URL
2013-10-19 土 15:44:29
編集
> あさみ様
襲われたい!などという態度は、けして取ってはなりません。
浅ましいと思われてしまうと、吸血鬼氏が興ざめしてしまいます。
このお話の少女のように、あくまでいやいやをしながら、やむなくお相手を強いられる・・・という風情をとらなくてはいけません。
それが淑女のたしなみであり、ひいては提供する血潮の値打ちを高めるふるまいになるのです。

・・・って、この吸血鬼なかなか、めんどくさいやつですね?
(^-^;)
by 柏木
URL
2013-10-19 土 21:44:29
編集

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