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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

セックスだけが夫婦ではない。

2013年10月22日(Tue) 07:44:41

初めて抱かれてしまう瞬間、きみはひどく悲しそうな顔をした。
相手は吸血鬼だった。
夫の目のまえで生き血を吸い取られて、ひざから力が抜けてその場にくたくたと姿勢を崩したきみに、
彼は慣れたやり口でのしかかっていって、もういちどとどめを刺すように、きみの血を吸った。
眉を逆立てて身を仰け反らせ、必死で相手をもぎ離そうとするきみ。
けれどもねじ伏せる腕力に、きみのか細い筋肉では、抗すべくもなかったはず。

いよいよ挿入・・・というときに。
きみはわたしのほうをチラッと見て。
目線を合わせてしまったことを悔やむかのように、涙ぐむ。
スカートをせり上げられて。
パンストを片方だけ、脱がされて。
ショーツをつま先まで、すべり降ろされて。
あいつはわたしのほうにウィンクを投げ、憎たらしも、「いただきます」としゃあしゃあと言った。
それから、嫉妬に絡みつくわたしの視線を避けるように、きみの首すじの向こう側へと顔を埋めた。
きみのうなじを這う、ひとすじの紅いしずく。
それは涙の痕のようにチラチラと昏い輝きをたたえながら、きみのブラウスにしたたりを伸ばしていった。

スカートの奥に、ググッと刺し込まれたなにかに怯えるように。
きみは立て膝をして、片方だけストッキングに包まれたふくらはぎの筋肉を、キュッと引きつらせる。
きつく噛み合された前歯の白さが、紅を刷いた唇のすき間からもれて、生々し過ぎるほど光っていた。
ピリピリと震えるまつ毛を濡らす涙が、すべてを喪失したことを告げていた。

そこにいるのは、娼婦だった。
嫉妬に満ちた夫の目線をも省みずに、しきりにお尻を突き出しては、もういちど、もういちど・・・とねだる女。
淑女はたったのひと突きで、雌犬にすり替わった。
大きい・・・大きいわあ。
放恣に弛んだ口許から覗く前歯は、さっきまでの悲しみをかなぐり捨てて、歓びの輝きを帯びていた。
貴婦人の品位に輝いていた肌色のパンティストッキングは、片方だけ女の脚に残ったまま、
ひざ小僧のあたりまでふしだらにずり落ちてくしゃくしゃになって、女が堕落してしまったことを修飾しているようだった。

ご主人は控えめに言っても、6000人に一人の幸運な男だ。
あいつは男として男を称賛する目つきをして、わたしを見た。
妻は緩慢な動作で、血液を奪い取られた手足を動かして、身づくろいをしていた。
虚ろにやつれた横顔には、なんの感情も窺えなかった。
どういう意味だ?
尖った声色をなだめるように、男の声はあくまでも柔らかに、わたしの怒りにおおいかぶさる。
処女の女を嫁に迎えるのは、3人に1人。
自分の妻が夫以外の男を識る瞬間を目にする機会を得るのは、たぶん千人に1人。
あとの2分の1は、なんだというんだね?
聞きたくもない講釈を早く切り上げさせたくて、投げやりに訊くと、あいつはそれさえも真に受けて。
サドかマゾか・・・ということだね。これが2分の1。
マゾだとこういうことでも、悦ぶことができる。
わたしが悦んでいるとでも・・・?
深くは追及しないがね。奥さんの前だし。
あいつは妻をかえりみた。自分の女になった身体を、舐めるように見つめるのを、わたしはどうすることもできなかった。

帰宅直前、背後に立ったあいつに羽交い締めにされて。
相手の意図を知ったときには、すでに遅かった。
わたしの血はぞんぶんに吸い上げられて、身体じゅうに毒が回って、理性を痺れさせられていた。
「きみの血だけじゃ、ちょっと足りない」
残念がるあいつのために、いっしょに家に来なさい、家内を紹介してあげよう・・・と、約束をしてしまっていた。
呪われるべき約束は、忠実に果たされた。
このごろ潤いを増してきた三十代主婦の素肌は、新調したばかりのブラウスを引き裂かれて露わにされて、
深夜の訪客の舌と唇とを、ぞんぶんに悦ばせていた。
感極まった妻が女の操まで惜しげもなくゆだねてしまったからといって、どうして咎めだてすることができるだろう?

「献血、つづけましょ。こんどはあなたの番」
虚ろな声で妻は言い捨てると、ふらふらとした足取りでリビングを出ていった。
「賭けてもいい。由里子は着替えに行った。女の洋服を持ち主の血で浸すのを俺が好むと知ったからだ」
男は得意げにそういうと、さっき街灯の下で試みたように、わたしの首すじをもういちど噛んでいた。
自分の生き血が吸血鬼の喉を鳴らす音を聴くのは、悪くなかった。
妻の生き血が刻一刻と喪われていくのを耳にするよりは。
一夜にして夫婦ながら血を吸い尽くされてしまう。そういうわけではないのだと、直感的に得心した。
「どんな服に着替えてくるか、楽しみだな」
男の言いぐさに、わたしは感情を忘れた硬い頬で、頷きかえしていた。

花柄のワンピースに黒のジャケット。プレーンなストッキングにはかすかだが光沢がよぎり、メイクは心持ち濃くなっていた。
「娼婦の血は、いかが?」
「わしの相手だ。淑女に決まっている。決して娼婦ではない」
あいつは妻に向かって誓うようにそういうと、何度めか、妻の首すじに咬みついていった。
ほっそりとした首すじを輝かせる、白磁のような素肌。
むざんに噛み裂かれてしまうのを、妻は唯々諾々と受け入れた。
引き抜いた牙から撥ねた血が、ワンピースの胸を濡らす。
「あはっ・・・お花が咲いたみたい」
姿見に映る自分の姿に妻が惚れ惚れと見とれているうちに、男は妻の足許にひっそりとかがみ込んで。
つややかな光沢をよぎらせたナイロン生地のうえから、ぬるりと唇を這わせてゆく。
「アラ、いやだ」
妻は顔をしかめたが、早くも膝小僧を抱きかかえられて、身動きできなくなっている。
脚に通した女が娼婦であるのを裏づけるように、妻のストッキングはだらしなくよじれて、皺くちゃにされてゆく。
男は妻の足許にピチャピチャとよだれをはぜながら、それは下品にあしらっていった。


由里子に逢せてくれ。
喉が渇いたとき。女旱りになったとき。
あいつは必ず、わたしを通すことにしているようだった。
「だんなさんは、立てなきゃな」
どこまで本気でそう思っているのか、けれども少なくとも表向きは、あいつのわたしに対する態度は、恭謙そのものだった。
「由里子がそうしろというんだ」そう抜かしながら。

長い黒髪をほどいて、背中にユサユサと揺らしながら。
ベッドのうえで四つん這いになって、豊かなおっぱいをたぷんたぷんとさせながら。
食いしばった白い前歯をむき出しにして、ひぃひぃと喘ぐ妻。
そんな妻を目の当たりに、不覚にも失禁をくり返すわたし。
そんな夜が、幾晩つづいたことだろう?
やがてわたしは、妻がわたしを通さずに男と逢うようになっていたことを知る。

ふたりの交際を認めてやるには、方法はひとつしかなかった。
妻をひと晩、男の家にゆだねること。
夕方、近所の家々から洩れてくる視線を一身に受けとめながら、妻は彼の運転する迎えの車に乗り込んだ。
そして翌朝。
はだけたブラウスに、解いた黒髪。
精液を粘りつけたスカートに、ひざ下までずり降ろされたストッキング。
近所の家々の公然たる視線を一身に受け止めて、妻は我が家の玄関先に立った。
「ただいま戻りました」
黒髪をユサッとさせて、頭を垂れる妻に。
「お帰り。お疲れさま」
何事もないような顔つきで、ご近所にはっきり聞こえる声で妻をねぎらうわたし。

あいつはけっきょく、わたしたち夫婦をどうしたいのか?
妻はそれには答えずに、言った。
「セックスだけが、夫婦じゃないでしょう?」

たまにはわたくしのことを、独り占めになさりたいそうよ。
だからわたくし、あのひとの家の主婦業も掛け持ちするって、約束したわ。
たまには招かれた婚礼の席に、わたくしを夫人代理として隣に座らせたいそうよ。
それで苗字もあのひとの苗字に変えて、肥田百合子って書かせたいらしいの。
そうすればわたくしがあのひとの妻同然だと、周囲に広めるようなものだからって。
それにたまにはあなたの目のまえで、わたくしとセックスなさりたいそうよ。
夫の前で妻を征服するのって、男の夢なんですって。
あなたのまえでわたくし、うんと取り乱して、主人のより大きいわあって、言ってあげるの。
週に1,2度のことだから、許して下さるかしら?

でもわたくしは、あなたの妻です。
ゆう子もいるし、俊太もいるし。なによりも、あなたの妻なんです。
だから別れる気はないって、堂々と言ってあげたの。
あのひと、びっくりしてたわ。身体さえモノにすれば、全部手に入るって思い込んでいたみたい。
でもさいごには、OKしてくれた。
あんたと結婚するよりも、人妻であるあんたを征服することで満足するかな・・・ですって。
あなた、わたくしとこれからも、セックスしてくださるかしら?
それ以上にわたくしのことを、信頼して愛してくださるかしら?
あなたがわたくしをあのひとに譲り渡したこと、わたしはいけないことだと思っていないの。
あなたはわたくしを、ほかのひとにも自慢したかっただけ。
わたくしがあのひとと交わるのをみて、自分が交わったときみたいに悦んでくださることができるだけ。
そういうことで、いいかしら。間違いないわよね?
ねえ、これからセックスしない?
こんなわたくしでも、お嫌でなければ・・・

数分後、わたしは夫婦のベッドで、新婚以来かと思うほどの交歓を愉しんでいた。
夫婦でこんな充実したセックスをしたのは、ほんとうに新婚以来かも知れなかった。
妻は息をはぁはぁとはずませながら、それでもあらぬことを口走るのを、やめようとはしなかった。

あのひとに、感謝しなくちゃね。
あなたもあのひとに、いっぱい血を吸わせてあげてね。
貧血になる手前でも、かまわないから。
だってあなたには、わたくしがあのひとに破らせてあげるお洋服やストッキングを買うお金を、たっぷり稼いでいただかなければならないんですから・・・
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