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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

2013年11月11日(Mon) 15:30:33

最初に夫が咬まれて、しかし堕落からはかろうじて踏みとどまった。
つぎに息子が咬まれて、その場で意気投合という形での堕落を遂げた。
やがて妻も咬まれて、けれども一線だけは守り抜いていた。
夫はそんな妻に宥恕を与えるために、自ら咬まれて堕ちていった。


薄暗い電燈は、都会の明るい室内に慣れた目にはことさら昏かったが、
築数十年を経たこの古びた一軒家には、似つかわしいぬくもりを秘めている。
半開きのふすまの向こう、息子のトシオは祖父ほどの年配の男と向かい合っていた。

男は黒衣に身を包み、銀色に輝く髪をふさふさとさせていた。
顔色はわるく、ほとんど土気色をしているが、秀でた目鼻立ちには怜悧さと知性とをかいま見させている。

少年は学校帰りの白のワイシャツに濃紺の半ズボン。
目にも鮮やかな真っ赤なハイソックスが、ひざ小僧の真下までぴっちりと引き伸ばされている。
色白の頬に朱を刷いたような唇は、どこか少女のように小造りだったが、
控えめな輝きを帯びた大きな瞳は、大人しい見かけに似ずはっきりした意思の持ち主であることを窺わせた。

年輩の男は少年の足許に指を這わせて、足首からすーっとせり上げてゆく。
それから唇を近寄せて、しなやかな肉づきを帯びたふくらはぎに、ハイソックスのうえから吸いつけていった。
ちゅうっ・・・
唾液のはぜる音が、妙になまなましい。
「ぁ・・・」
少年は、喉の奥から、引きつるような呻きを洩らした。
ヒルのように醜く爛れ膨れあがった唇が、ナイロン生地の舌触りを確かめるように念入りに這い回って、
生地の表面に縦に流れるリブを、毒々しく浸してゆく。
「やらしい・・・なあ・・・」
虚ろな声色の下、老紳士は掴まえた脚を放そうとはせず、舌までふるいつけて、ハイソックスを濡らしつづけた。
ひざ小僧の真下を締めつける口ゴムからつま先まで整然と流れるリブが、踏みしだかれるようにグネグネと歪められてゆく。
「赤のハイソックスなんて、女の子みたいだろ?小父さんが言うから履いてあげたんだからね・・・」
少年の呟きに男はなん度も肯きをみせ、やがて口許から尖った犬歯をむき出しにした。
「アッ。やめて・・・っ。」
切迫した制止の声は、どこまで本気だったのか。
ねじ曲げられたリブごしに突き立った牙は、ふくらはぎのいちばん柔らかなあたりにずぶずぶと埋め込まれていって、
ほとび出た血潮を蔽うように、唇があてがわれる。

くいっ・・・くいっ・・・

しのびやかだが露骨に喉が鳴る音が、静かな室内に響いてゆく。
少年はほんのりと頬を染めていたが、やがて顔色を白くしていって、くらりと頭をおおきく揺らがせた。
老紳士は少年の両肩を支えると、崩れる姿勢を抱きとめてやり、しずかに畳のうえへと寝かせた。
うつ伏せの姿勢のまま、トシオ少年はほんのりと瞼を開くと、いった。
「もっと吸いなよ。かまわないから」
吸い取った血潮を牙に光らせたまま、男は少年の足許に四つん這いになると、
無傷なほうの靴下のうえに唇を吸いつけてゆく。
「小父さん、ほんとにやらしいなあ・・・」
少年は甘苦しく笑みながらも、自分の身体から血液を吸い取ってゆく男の行為を制止しようとしない。
人の生き血を吸いたいという彼の衝動に、嫌悪の情を感じないらしい。
むしろ彼の願望を好意的にかなえてやろうとしているようすだった。

「どう?おニューのハイソックスの舌触り」
からかうような口調のトシオに、男はこたえた。「格別だね」
「母さんの穿いているストッキングほどじゃないだろうけど、少しは愉しんでもらえたかな」
ククク・・・
返事の代わりに卑猥な含み笑いで応じると。
男は顔をあげ、少年と目線を交わらせた。
痩せこけた頬にはかすかに血色が戻り、目つきもギラギラとしたものをたぎらせている。
頬にべっとりと着いた自分の血のりを、少年はいとおしげに撫でて、指先に着いた血を唇で吸った。
「ボクの血、おいしい?」
男は無言で頷いた。真実味のある目の輝きが、少年の好意に応えていた。
「なら、よかった」
少年は安堵したように呟くと、
「父さんと母さんから受けついだ、大切な血なんだからね。あんまり服を汚すのに無駄遣いしちゃダメだよ」
まるでイタズラな弟をたしなめる兄さんのような口調でそういうと、目を瞑る。
首すじを噛んでいい・・・という、合図だった。
男は当然のように、少年の好意に甘えてゆく―――
シャツに飛び散った血のりに苦笑しながら、自分の血を飲み耽る男がゴクゴクと喉を鳴らすのに、嬉しそうに聞き惚れている。

「力づくで征服されるのって、案外快感かも」
ふすまの向こうからいちぶしじゅうを覗き見する瞳の主の脳裏に、トシオの呟きがよみがえった。



「親孝行な息子さんだね」
不意にかけられた声に、女はびくっとふり返った。
年のころは四十前だろうか。
束ねた黒髪はまだ若々しく、控えめな目鼻立ちはさっき毒牙にかけられた少年とよく似ている。
「あの・・・息子は今・・・?」
おずおずともの問いたげにする母親の肩を、薄緑のカーディガンのうえから掴まえると。
「あんまり母さんの血を吸わないでね。母さんは明日生け花教室だから・・・喉が渇いているなら、ボクの血をたっぷり飲んで」
少年の口真似を、女の耳朶に吹き込むように、囁きかける。
「真っ赤なハイソックスも、美味だった。あれはお母さんのお見立てかな?」
男は女をからかうようにそういうと、さっそく女をねじ伏せにかかる。
ダイニングキッチンでのことだった。
女はエプロンをはずすいとまも与えられずに、古びたフローリングのうえに押し倒された。
「あうっ!」
首すじを咬まれるのを、立て膝をして身を硬くしながら、応じていった。

ずるっ。じゅるうっ。

ことさら汚らしい音をあげて生き血をむしり取ってゆくのを。
覗き見の瞳の主は、狂おしい目線で見守っている。
自分の妻から抵抗の意思を奪うため、わざとのように立てられる忌むべき吸血の音―――
「観念するんだな、房子」
男はとどめを刺すようにそう告げたが。
女はまだ気丈にも、
「房代です」
呼び間違えられた自分の名前を訂正する気力を残していた。

房代夫人は、なんとか逃れようとする意思を持っていた。
フローリングの床を背にしながら、必死に這いずって、男の毒牙を避けようとする。
けれどももちろん、はかない抵抗に過ぎなかった。
男は女の足首を掴まえると、肌色のストッキングのうえからふくらはぎを吸った。
「スケスケの薄いストッキングというやつは、いたぶると愉しいものだな」
ぼつりとした呟きが、女の羞恥心に拍車をかけた。
「あなたとお逢いするの・・・主人に・・・悪くって・・・」
切れ切れに、この逢瀬が気の進まないものだという女の訴えを、
男はこともなげに受け流す。
「きょうのやつはいちだんと、なよなよしておって、そそられますねぇ・・・」
なおも、房代夫人の足許を辱める行為をやめようとしないのだった。
「厭っ!!」
もういちど首すじを咬もうとしてのしかかってくる男に、房代夫人は腕を突っ張って抵抗した。
「あしたの約束が待ちきれなかった男に・・・あなたもつれないことをするんだな・・・」
男は膂力にまかせて、グイグイと、房代夫人のか細い腕を圧倒してゆく。
「お望みなのは・・・お望みなのは、生き血だけではないのでしょうッ!?」
身をおののかせて震える声をあげた房代夫人の両肩を、男は羽交い締めに抱きすくめようとした。
女はそうはさせじと、必死で腕を振りほどこうとする。

無言の抗いは、意外な展開ですぐに熄(や)んだ。
瞳の主が、のっそりと身を起こして、ダイニングに足を踏み入れる。
そうして、自分の妻のうえにのしかかっている吸血鬼を制止しようとするのとは裏腹に――――妻の腕を抑えつけていた。
「あ、あなた・・・ッ!?」
夫の手でねじ伏せられた細腕は、それ以上の抵抗をやめた。
二、三度かぶりを振ってほつれた髪を肩先から追いやると、身体の力を抜いて目を瞑る。
これ見よがしな接吻が、夫の目のまえで遂げられた。


「マシュマロみたいな唇ですな」
振る舞われた地酒に舌鼓を打つような問いに、
「自慢の家内ですからね」
振る舞った地酒を褒められて満更でもない・・・という態度の応えががえってきた。
「太ももといい、ふくらはぎといい、むっちりと佳い咬みごたえがするね」
「熟れた三十路妻ですからね」
「生き血の香りも、ほどよく熟しておられる。さすがはトシオくんのお母さんだ」
「母子ともども、お気に召されてしまったようですな」

家族を売ったという想いは、彼にはなかった。
むしろ、提供した血液を気に入ってもらったことへの、ある種の歓びが彼を支配していた。
「男ものの靴下では、興を殺ぐことでしょうが」
夫はスラックスの下の靴下を、目いっぱい脛のうえまで引き伸ばすと、
「わたしも同じように、していただきましょうかね・・・」
さすがに目のまえで姦られるのを、しらふで見届けるわけにはいきませんから、と、言い訳がましくつけ加えたが。
彼自身がすでに、咬まれて血を吸い取られる快感に、真っ先に目覚めてしまっていたのだった。

息子の履いていた真っ赤なハイソックスのリブごしにそうしたように。
男はその父親の、長めに履かれたビジネスソックスのリブごしに、牙を埋めてゆく。
房代夫人は夫が堕ちるところを、首すじにつけられたばかりの傷を抑えながら、声を失って見守っている。
チクッと刺し込まれる感触が足許に滲んだつぎの瞬間―――
彼は、ああやっぱり・・・と思った。
こんな咬まれかたをされたら。こんなふうにゴクゴクと生き血を飲み耽られたら。
だれだって、夢中になってしまうはず。
妻を咎める資格は、俺にはもうない・・・


やはり、働き盛りの血は、精がつきますな・・・
こんなに吸っていただけるとは、咬まれたかいがあるというものですね・・・
では奥方を、遠慮なく頂戴しますよ。
ほかの男に支配されてしまうのは癪なんですが・・・貴男ならまあ、よしとしましょうか。
交し合った目色にそんな感情を滲ませて。
やがて夫の目からは力が失せて、その場に尻餅をついてへたり込んでしまった。

「ご主人の血も、息子さんの血も、それに貴女の血も・・・わしの中で仲良う織り交ざっているのですぞ」
「は・・・はい・・・」
「今少し、この老人の渇きを慰めていただけるかな・・・?」
「は・・・はい・・・よろしければ・・・」
房代夫人は夫が意識を失っているのを確かめると、もういちどだけ夫のほうへと謝罪に満ちた視線を投げた。
「では、いまいちど、誓いの接吻を・・・」
「なにを誓えと仰るのですか」
「今夜娼婦に堕ちること。そしてわしに末永く服従すること。亭主のまえであられもなく乱れ果てること」
どうじゃ、といわんばかりの目つきに、房代夫人はもういちど潔癖そうに目をそむけるが、もはや抵抗する意思は消え果ているらしい。
まだ破かれていない肌色のストッキング越しに、飢えた卑猥な唇がヒルのようにヌルヌルと這わされるのを、どうすることもできなくなってゆく。

―――お目当ては、あんたの女房の穿いている、薄々のストッキングなのだよ。
さいしょに俺の血を吸い取ったあと、たしかにやつはそういった。
夫の脳裏を、狂おしい嫉妬が駆け巡った。
血の抜けた身体は動かすこともかなわなかったが、目の前で行われていることは、逐一彼の網膜を染めている。
這わされてくる唇に、肌色のストッキングがふしだらな引きつれをよぎらせるのも、
なすりつけられてくるべろに、上品なナイロン生地が唾液にまみれてゆくのも、
たっぷりと、見せつけられるはめになっていた。
けれども夫としての嫉妬は、彼の心を害することはなかった。
すでに血液中に紛れ込まされた毒液が彼の理性をほど良く痺れさせてしまっているために、
ちくしょう、ハラハラさせやがって。
そうは思うものの、男を憎み切るほどの強い感情は湧いてこない。

ほしいままに、肌色のストッキングを咬み破らせて。
男の言うままに首すじをゆだね、生き血を吸い取らせて。
吸い取ったばかりの血に濡れた唇を重ね合わせてくるのに応えあって。
そしてゆっくりと、房代夫人は脚を開いてゆく・・・
ひざ小僧の下まで破れ落ちた肌色のストッキングを、しわくちゃに弛ませたまま。

「うぐっ!」
挿入の瞬間。
妻は眉をキュッと引きつらせ、白い歯並びをむき出しにした。
初めて咬まれたときと同じくらい、悔しげなしかめ面。
しわくちゃにたくし上げられたタイトスカートが、太ももから腰つきまでのラインを、むざんなまでに浮き彫りにする。
ぐい、ぐい、ぐい・・・と、妻の股間に肉薄した逞しい腰が、もう遠慮会釈なく沈み込んでゆく。
幾人もの女を娼婦に堕とした、魔性を帯びた肉の柱が。
いま、妻の秘奥を貫いてゆく。
びゅうっ。
聞こえるわけはないのに・・・射精した音さえ耳にしたような気がした。
「ううっ・・・ううっ。。。うぐうっ!」
声にならない声を振り絞り、妻はなにかを耐えようとしている。
キュッと強く結ばれた瞼には、光るものが滲んでいた。
ああ、房代が、妻が征服されてゆく・・・
彼はジリジリと焦れながら、不覚にも股間の昂ぶりをおぼえた。
いままさに、毒を含んだ魔性の精液が、じわじわ、じわじわと、妻の肉襞に浸透していこうとしているときに。
「あぐうっ!ウ・・・ウ・・・あうっ!」
腰の動きが、はげしくなった。
妻は必死に、なにかをこらえている。
しかしそれも、つかの間のこと・・・

あはぁん・・・

彼の耳には、確かにそう聞こえた。
堪えられなくなった妻が洩らしたもの・・・それはあきらかに、よがり声だった。

もう、ふたりとも、無我夢中だった。
組んずほぐれつ、ひたすら抱きすくめてしつようなまでに身体を密着させてくる情夫にたいして、
房代夫人はぶきっちょな抱擁で、応じていった。
さいしょはおずおずと、背中に腕を回すていどだったのが。
やがて大またを開いて。四つん這いになって。転げるようにいくたびも、体位を変えながら。
「いくっ!いくっ!イクウッ!」
と、夫婦の営みでもめったにあげない声さえ洩らしはじめていくのだった。


おめでとう、よくがんばったね。
彼に気に入られるなんて、わたしも誇らしい気分だよ。
時どき逢っていただきなさい。
生け花教室・・・あれはきみと彼とが逢瀬を遂げるための、口実だったのだろう?
彼から聞いたよ。
さいごまでわたしのことを気にしてくれて、操を守り通してくれていたって。
それで・・・きみの不服従について、ぼくは罰を受ける気になったんだ。
きみを目のまえで辱められ、お熱いところを見せつけられる・・・っていう罰をね。
え?だって、そうだったじゃない。とても息があっていたよ。
きみたちはたぶん、セックスの相性もバツグンなんだ。夫のぼくがいうんだから、間違いないさ。
時どき、抱いていただきなさい。
見せつけたくなったら、遠慮なくぼくを呼びなさい。仕事中でも、かまわないから・・・



房代をひと晩、独り占めにさせてくれないか?
いいとも。でもぼくが夜勤の時には、いつもそうしているんだろう?
いやいや、今回きみにおねだりをしたかったのは、「お持ち帰り」というやつさ。
房代をわしの家に連れていって、ひと晩お預かりしたいと言うわけさ。
うぅん・・・
彼は少しだけ、考え込んだ。
けれども、約束は守る、という男の言葉を信じて、妻をゆだねることにした。
約束とは・・・
生命は奪わない。
離婚もさせない。家族離散もない。
だって、わしはお前の夫人のまま、房代を辱め抜きたいからさ・・・
そういう忌むべき約束だった。


見慣れたよそ行きの、黒のワンピース姿の妻。
その妻が、いま男に手を引かれるままに、自宅を立ち去ろうとしている。
ククク。ご近所の衆が皆、この家の様子を視ているようだね。皆さん息をひそめて・・・
男の言いぐさは、そのとおりらしかった。
ご近所の評判が気になったのか、妻は羞じらいの色を泛べ、夫を見返る。
夫は妻に軽くキスをして、なるべく早くに帰っておいでと囁いた。
ふたりの間を遮るように、男の猿臂が房代の肩越しに、なれなれしく廻された。
房代は俯いて頷くと、男の言うなりに、玄関に置かれたハイヒールに、黒のストッキングのつま先を収めてゆく。
コツコツ・・・と遠ざかるハイヒールの足音が、彼の鼓膜にいつまでも響いた。


たまりかねて鳴らしたインターホンを、男はとっくに予期していたようだ。
「ああ、やっぱりね」
妻を独り占めにさせるために、情夫の家に一泊させる。
服従のための儀式に耐えきれない夫は多いという。
「房代は・・・?」
「ああもちろん、くつろいでもらっているよ。まだいただいていないがね」
いただいたのは、キスだけさ。こちらのほうは、濃厚に、ねっとりと・・・
もう、ガマンならなかった。

隣の部屋に、布団を用意してあるからね。
そこで気がすむまで、物音だけを聴いているがいい。
だれもきみのことを、咎めたりはしないのだから―――

男の言うなりに、ひと晩、妻が情夫と逢瀬を遂げるその部屋の隣室にいて。
夜明けが訪れるころ、夫は身も心もマゾヒスティックな奴隷となっていた。
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