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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血居酒屋

2014年01月06日(Mon) 04:21:50

「キャーッ!だめぇ・・・」
ショートカットの髪を掻きのけられて、真由美は俺の目のまえで、首すじを吸われていった。
きょう一緒に酒を飲むやつ、人間の生き血を吸うやつなんだぜ?
俺がそういって、暗に遠慮するように言ったのに。
真由美はどういうわけか、ひどく積極的だった。
分け隔てをするのが嫌いな性格が、かえって「吸血鬼」呼ばわりされる男のことを不憫に感じさせたらしい。
居酒屋のこあがりで、いきなりそんなことするわけないじゃない。
そういって堂々と、俺の行きつけの居酒屋ののれんをくぐったのだ。
オレンジ色のワンピースに、陽灼けした膚。キビキビした足どりをした脛も、肌色のストッキングが白っぽくみえるほど、小麦色に灼けていた。
おいおい、そのイデタチは、やつのためにあまりにも刺激がきつ過ぎるぜ・・・
思った時には、すでに後悔が始まっていた。

遅れて現れたやつは、真由美のことを、例によっての巧みな話術で引き込んだ。
社交的な真由美は黒い瞳を輝かせて、意識してか無意識か、ウキウキとした視線をやつに投げる。
あー。あー。いけないパターンだ。
知らず知らず蜘蛛の巣に引っかかったチョウを狙うジョロウグモのように、やつの目つきがただならなかった。

血を吸うって、ほんとなんですか?彼が言うんですけど。
ああ、もちろんほんとうだとも。
嘘!ウソでしょう?
じゃあ、試してみるかね?
エエ、やってみて。

売り言葉に買い言葉。
いや、ジョロウグモの投げた罠だったに違いない。
やつはまんまと、真由美の無防備な首すじに唇を近寄せて・・・吸いつけてしまった!

ちゅう・・・っ
驚きに目を見張る真由美が引きつらせた頬に、頭をこすりつけるようにして。
やつはなおもしつっこく、唇を蠢かせる。
バラ色のしずくが伝い落ちて、オレンジ色のワンピースのえり首を浸す光景に、俺は思わずイッてしまっていた。
そのまま押し倒されていって・・・冒頭のような仕儀に相成ったのだった。

ちゅちゅっ・・・じゅるじゅるっ。
やつはあからさまな音を立てて真由美の血を啜り取ると、やおら身を起こしてハンカチで口許を拭いている。
慣れたやり口だった。
無理やりキスを奪っておいて、次の瞬間は紳士面 というやつだ。
真由美も真由美で、のしかかってくる体重が去ったとみるや、遅れまいとするように素早く身を起こしている。
「失礼」
やつが取り澄ますのに負けないように、
「いえいえ、どういたしまして」
さすがにちょっと俯いていたが、まんざらでもなかったのだろうか?
口許にちょっぴりよぎった微笑が、まぶたに残った。
追い打ちをかけるようなひと言が、鼓膜にも残った。
「お口に合ったようで、嬉しいです」

三人連れだって、居酒屋をあとにすると。
そのあとふくらはぎまでねだられて噛ませてしまった真由美は、ストッキングの伝線をひどく気にしていたけれど。
「こんどご一緒するときは、穿き替え用意しなくちゃね」
次回があることを、しっかり期待しているのだった。

おいおい、カンベンだぜ。一回きりの約束だぜ。
真由美とは秋に、結婚するんだからな。
俺の抗議などものともせずに、やつは真由美の血を吸いたくてたまらない・・・と、しきりに催促する。
きみ抜きで逢っても、かまわないかね?
そうまで言われてしまうと・・・あの居酒屋に連れ出すしかなかった。

「お猪口をふたつ」
え?と訊きかえす俺に、
「このひとは要らないでしょ?」
こないだだって、ひと口も飲まないんだもの。お酒がもったいないわぁ・・・
真由美は伸び伸びとした口調で、うそぶいている。
「こちらのお目当ては、あたしの血ですものね」
肩をすくめてふふ・・・っと笑う。
さ、どうぞ と言いたげに。
真由美はうなじを差し伸ばした。
いつの間にか、俺の隣をすり抜けるようにして、やつの隣へと移動している。
やつの牙が、これ見よがしにむき出されて、真由美の首すじに咬みついていった。

ちゅうっ・・・じゅる・・・っ
恋人の生き血を啜られる音を耳にしながらのお酒は、やけにほろ苦かった。

「やだ・・・あ・・・っ。貧血ぅ・・・」
ホテルの密室で俺相手のときにしか洩らさないような声色で。
真由美は生き血を、吸われつづける。
とうとうミニのワンピースのすそをまくって、太ももまで許してしまった。
圧しつけられる唇の下、肌色のストッキングがパチパチと裂ける。
「新しいのおろしてきて、よかったあ。恥掻くとこだった」
形の良い唇がヘンな安ど感を洩らす下、真由美の穿いているストッキングが、唯々諾々と破かれていく。
裂け目はじょじょに拡がって、整然と流れるナイロン糸が、引き破られた蜘蛛の巣のようにいびつに歪んでいった。

へろ・・・へろに、なっちゃいましたっ。
勝手なものだ。
逃げるように座を移してきた真由美は、俺の肩によりかかるようにして、とろんとなってしまっている。
「どうするんだ?これから」
「それはこっちが訊きたいぜ」
男二人はちょっとの間にらみ合ったが、もとより悪友同士のことだった。
それに、知らないわけではなかった。
やつらのルールでは、いちど血を吸った女は、親友の妻であっても犯すことになっているんだと。

「ほらほら、選手交代!きみが寄っかかるのはこっち」
しきりに甘えかかってくる真由美を支えてやりながら、こんどは俺のほうから席を替えてやる。
「あらー、冷たいわねん」
奇妙な巻き舌で拗ねてみせると、隣に来たやつの肩にもたれかかった。
「男ならだれでもいいんだろう」
畳み掛ける俺に。
「そんなことないもん。ユウタとこの人だけだもん」
すでに俺は、やつと同列になっていた。
そんな俺の気分を察したのか察していないのか。
やつは悠然と、真由美を抱きとめていた。
「もう片方の脚も、パンスト破り愉しませてもらおうか?」

真由美はじっと息を詰めて、自分の太もものあたりを見おろしている。
きょうのワンピースは、真っ赤なミニ。
まるで先手を打つように、
「子供っぽいでしょ」
と口をとがらせて照れてみせていたけれど。
ゾクッとするほどの風情だった。
そういえば、吸血鬼に襲われる淑女は、たいがいこんな服装をしていたかもしれない。

とっくに気がついていた。
真由美がきょう、穿いているのは。太もも丈のストッキング。パンストではない。
たくし上げられたワンピースのすそから覗いた健康そうな太ももから、
ゴムをちょっぴりだけ降ろして、素肌のうえから咬ませてやっていた。
「首すじだって、じかに咬むんだもん。脚だって意味は同じよ」
あとで真由美はそう言ったけれど。
絶対、意味深であったはずだ。
そのあと坂道を転がり落ちるようにして・・・
真由美は俺にしか許したことのなかった茂みの奥に、やつの毒牙を埋め込ませてしまったのだから。
いや、案外と。
「意味は同じ」
だったのかもしれない。
そう。
やつに真由美の首すじを咬ませた瞬間、すべては塗り替えられてしまったのだろう。

あお向けになって、白目を剥いて。息も絶え絶えに肩を上下させている女を前に。
やつは上目遣いに、俺を見る。
「いちど血を吸うと、親友の奥さんでも犯すことになるわけだが・・・」
分かり切ったことを、念押しするような、口調だった。
「かまわないさ」
つとめてサバサバとした口調で、俺は応える。
「さいしょから、結婚前の身体をあんたに進呈するつもりだったんだからな」
語尾が震えたのは、屈辱のせい?それとも、さっきからしきりに胸をそそり続ける妖しい昂ぶりのため?
結婚前の身体・・・といっても、すでに真由美とはセックスを経験している。
だからこそ、気楽に捧げられるものなのかもしれない。
彼らの間では処女は尊重されていて、みだりに犯すことは許されていない。
けれどもセックス経験者が相手の場合には、必ずといっていいほど、女は凌辱をも受け容れさせられるという。

たしかお袋が、そうだったな・・・
目のまえに居る男が、昼下がりから、書斎にこもりきりの亭主の目を盗んで、お袋を抱いていた。
あるいは親父も、すべてを知った上で、書斎に陣取りつづけていたのかもしれない。
親子二代、同じ男に嫁を寝取られるのか。
ほろ苦いものが胸をよぎったが、未来の牧岡夫人を籠絡した吸血鬼が彼女の身体のあちらこちらを想い想いに牙で侵しつづけていくのを、熱っぽい視線で見つめてしまっている自分がいた。

不埒な腕の中でいびつな夢をむさぼっている女は、半開きになった唇から、淫らに輝く白い歯並びを覗かせている。
ああ・・・ああ・・・だめぇん・・・
半ば意識が朦朧となりながらも、されていることだけは自覚しているらしい。
ハイソックスと同じ丈までずり降ろされた太もも丈のストッキングを、ふしだらにたるませながら。
女はゆっくりと、下肢をひらいてゆく。
あしたになったらおそらく―――
「あなた夕べは、しつこかったね」
しらっとそんなことを、口にするのだろう。
まくれあがったワンピースを着た真由美の身体に、やつの臀部が筋肉を緊張させて、ググ・・・ッと沈み込んでゆく。
あー、モノにされちまう。おれの未来の女房が・・・
思わずそんなことを口走ると、やつはこっちを見て、ニヤッと笑う。
俺もほろ苦い笑みを返しながら、頷き返してやる。
おめでとう。今夜はたっぷり、汚してくれ。
それからこれからは、うちの嫁をよろしくね。末永く・・・
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