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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

愚かな娘。

2014年01月06日(Mon) 05:01:17

ヘビに睨まれた蛙のようなものだったに違いない。
娘の真奈美が学校帰りに、初めて吸血鬼の餌食になったときには。

この街に棲む吸血鬼は、好んで脚から吸血する。
娘のときも、そうだったという。
寒風に頬ぺたを真っ赤にした少女は、路地裏に追い詰められて。
キャーとひと声叫んだのもつかの間、あっさり首すじを咥えられていた。
貧血を起こしてその場にへたへたとへたり込むと。
男のお目当ては、娘がいつも学校に履いていく、紺のハイソックスだったらしい。
丸太ん棒みたいに横たわった肉づきのよい太ももやふくらはぎは、やつらにとって好餌以外のなにものでもなかったろう。
太っちょな真奈美は、父親よりも年上の飢えた吸血鬼相手にうら若い生き血を気前よく振る舞う羽目に遭っていた。

妻が餌食にされたのは、娘がハイソックスを一ダースほども破かせてしまったあとだった。
うかつにもほどがあるというほどの、警戒心のなさだった。
娘の家庭教師を自薦してきたその男を、不用意に家にあげてしまうと。
いつものように紺のハイソックスをびりびりと破きながら娘の生き血を愉しんでいる光景を垣間見てしまった妻は、
すぐに自分の穿いている肌色のストッキングも、男の毒牙に引き裂かれてしまっていたのだった。

ゴメン。あなたと別れたい。
思いつめた顔をしてそう切り出されたとき。
わたしになにができたというのだろう?
吸血鬼の情夫のもとに走るという妻を止めだてするには、ふたりの交際を認めてやる以外に道はなかった。
「奥さんは純情だったんだね。ご主人の英断に感謝するぜ」
男の言いぐさは決して嬉しいばかりのものではなかったけれど、最初に餌食にされた妻が、娘の手前とはいえ凌辱を免れ、以後三度も男のその方面の欲求を容れなかったことだけでも、自尊心を満足させるしかなかった。
「あんなに堕ちない女は、珍しい。まず貞淑なほうだと自慢していいと思うぜ」
男はそういいながら―――妻を日常的に、犯している。


ただいまぁ。
娘が学校から、戻ってきた。
見るからに、あまり悧巧そうではない顔つきだと、父親ながらにそう思った。
そばかすの浮いた、赤ら顔。
善良そうなどんぐりまなこに、うそのつけない性格。
両親のどちらに似たのだろうか?

お母さんは?
寝室で小父さまの御相手だよ。じゃまするなよ。
意味深にわたしが呟くと、すぐにそれと察していた。
「ふたりのじゃまはしないように」というわたしの言いぐさをどう受け取ったのか、ちょっと尊敬したようなまなざしを投げると、黒タイツの脚を二階の自室に向けた。


遠くでキャーッという声がする。
声の主は二階の勉強部屋にいた。
いまごろ、通学用の黒タイツを噛み破らせているのだろう。
ひとの娘を掴まえて、クチャクチャと下品な音をたてて生き血を啜る男のにんまりとした笑みが、目に浮かぶようだった。
入れ替わりに現れた妻は、わたしの腕の中。
皮肉にも、男との関係が生じてから、夫婦のセックスも復活していた。
同時に二人の男に抱かれても、罪悪感を持たない女になっていた。

なによりもこたえられないのだよ。
愛し合っている夫婦の間に割り込んで、亭主公認で奥さんを寝取るのが。

男の勝手な言いぐさに、苦笑いで返すことができたのは。
きっと・・・妻が自分の手に戻ってきたからに違いない。
だれかと共有する・・・という形であったとしても。
昏い世界に身を浸しているとき以外は、仲の良い夫婦。和やかな幸せ家族。
そんな平穏が戻ってきたのは、吸血鬼の出現がきっかけだったとは。

皮肉な想いを押し隠して、わたしは熱情を込めて妻を掻き抱く。
階上の部屋からは、生き血を啜られる処女の、妙なる声色が漏れつづけていた。
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