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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

これで何度め・・・でしょうか? ~堕ちた男たちの日常~

2014年01月17日(Fri) 05:24:32

供血行為というものは、いちど許してしまうともう、病みつきになってしまうものらしい。
都会からこの街に赴任してきた羽月昂(はつき たかし)の場合も、まさにそうだった。

ほとんどなにも聞かされずに当地に赴任してきたのは、何か月まえのことだろう?
払えないほどの負債を抱えたかれにとって、この地は最良の身の隠しどころになるはずだった。
血を吸われることと引き換えに手に入れることのできた、安住の地。
そういうことが公然と行われるとだけは聞かされていた彼は、妻の帯同だけは当初、かたくなに拒んでいたはずなのだが・・・
いちど血を吸われてしまうと、仲間を増やしたいという願望に克(か)てるものは、もうなにもなかった。

赴任当日から義務づけされていた、不思議な慣習。
それは、勤務のときには必ず、ひざ下丈の長靴下を着用することだった。
ストッキングのように薄手のナイロンに透ける自分の脛を目にしたときに。
なにやら女になったような・・・という妖しい気分に囚われたものだったが。
いまや・・・夫婦ながら、ひとりの血なし鬼の愛人になったようなものだった。
「血なし鬼」。
この街では平和裏に同居している吸血鬼たちのことを、そう呼んでいた―――


血なし鬼たちは、横たわる夫婦の首すじや足許に慕い寄ると、
思い思いの部位に、着衣のうえから、噛みついてくる。
さいしょのうちは服が血浸しになるのに閉口したが、
着衣ごしに刺し入れられてくる牙がもたらすあのたまらない痛痒さ・・・それがすべてを忘れさせた。
服代は正規の給与以外に別途に支給されたから、経済上の不満はまったくなかった。

軽い貧血に、心地よい眩暈と陶酔を催すころ。
昂は傍らに横たわる妻の澪が、悩ましげな吐息を洩らしはじめるのに、いやでも気づかされる。
妻の生き血にご執心な相手の男は、左右の首すじを代わる代わる咬み、
はだけたブラウスごしに乳房のつけ根に唇を這わせ、
ふくらはぎや太ももに食いついて、穿いているストッキングをチリチリに裂き堕としてしまうと。
ショーツを足首まですべらせて、夫の視ている面前で、その妻を男女の営みへと引きずり込んでゆく。

相手は地元の土建屋の親父だった。
禿げかかった白髪頭を、てかてかに光らせて。
えへへへ・・・うへへへ・・・
弛んだ口許から、だらしなくよだれをしたたらせながら。
洗練されたスーツやワンピースに身を包んだ都会妻に、臆面もなく、のしかかってゆく。

人並みの嫉妬はあったけれど。
妻を抱かれてしまうこと。妻を汚されてしまうこと。
夫の前で、着衣をふしだらに着崩れさせて。
鼻息荒く迫ってくる親父の唇を、重ね合わされて。
同じように息をはずませて、応じ合ってしまう身体と身体―――
そんな光景を目の当たりにすることが、いまは妖しい昂ぶりとなっていた。

外が明るくなって、勤務に就くころには。
親父は夕べのなごりなど毛ほどもみせずに、得意先の土建業者に早変わりしていて。
いつも以上にてきぱきと、商談をまとめていって。
得がたいパートナー然として振る舞うのが常だった。
妻の澪もまた、てきぱきとかいがいしく家事をこなす主婦を演じていて。
これまた夕べはなにごとも起きなかったような顔をして、夫に尽くすのだった。
名残りといえば、ひとつだけ残された痕跡―――幾度咬まれても、痕はさいしょに咬まれた一箇所しか残らなかった―――が、首すじに赤黒い痣となって残るのだが。
かなり遠くからでもそれと識別できる熱烈な痕跡は、昂を少なからず苦しめたものの。
自身もまた薄黒い長靴下を脚に通してしまうと、都会にいたころの彼とは別人の、この街の住人としての弁えを発揮してゆくのだった。


親父は三日に一度、いや二日に一度は彼の事務所を訪れた。
もちろん、ストッキング地の長靴下を咬み破って、昂の生き血を吸うためにである。
親父が来訪を告げると、上司にひと言あいさつすると、それまでの執務を捨てて、
衝立で四方を仕切られた打ち合わせテーブルへと向かう。
親父が物欲しげな顔をしているかどうかで、その日の来意がただの商談なのか、生き血目当てなのかがすぐにわかった。
来客の顔色を察すると、昂は黙ってスラックスを引き上げて、薄黒く染まった脛を血なし鬼の口許へと差し伸べてやる。

自宅のほうへは、すでに出入り自由となっていた。
親父は女を抱きたくなると、いつ何時でも構わずに羽月家の玄関のインタホンを鳴らして、澪を呼び出した。
ふだんはさいしょだけでも、親父は夫の取引先としての慇懃な態度を捨てなかったが。
女が着替えて自分のまえに立つと、それまでの擬態をかなぐり捨てて、獣のようにのしかかってゆく。
いつぞやは、女に着替えするゆとりすら与えずに、
エプロン姿のままの澪を鼻息荒くリビングに押し倒していって。
夫の帰宅を背後に感じながら、なん度も股間をえぐりつづけていることもあった。

そんなふうだから、事務所に来る・・・ということは、必ずしも澪をねだりにきたとは限らずに、
むしろ純粋に、昂の血を吸いに来たということが少なからずあった。
もちろん・・・彼の退勤時刻にあわせて事務所に現れて、ひとしきり夫の血を吸ってから、夫の帰宅のあとを追いかけて、その妻までねじ伏せる・・・ということも、ないではなかったが。

すべすべとした感触の、光沢をよぎらせた薄手のナイロン越し。
赤黒く爛れた唇や舌が、ぴちゃぴちゃ、にゅるにゅると、ヒルのようにしつように吸いつけられてきて。
なま温かいよだれが、くまなくしみ込まされてきて。
薄いナイロンの舐め心地を、ひとしきり愉しむと。
こんどは一転して牙をむき、かりり・・・と皮膚に咬みついてくる。
パチパチと裂ける靴下ごしに、刺し込まれる牙の熱さを覚えながら。
昂はなん度となく、失禁した。
それくらい、親父の牙に帯びた毒は刺激的で、濃厚だった。

昂の事務所に来たからといって、親父が澪までも求めるとは限らなかった。
当然そうなると思い込んで、血を吸わせていたら。
悪酔いしたみたいにふらふらになったころ。
もうええ、きょうはあんたの血だけで、じゅうぶんたんのうした。
親父はそういうと、昂の頬にキスまでして、来たとき同様ふらっと事務所から出ていってしまうのだった。
たしかにそういうときの咬みかた舐めかたは、じつにいやらしくしつようなものではあったけれど。

かと思うと、サーヴィスのつもりで澪がいつも穿いているナイロンハイソックスを脚に通して出勤したときには。
ひと舐めしただけで、「これ澪さんのだな?」と見抜いてしまうと。
やはり貧血で酔いつぶれたようになった彼の耳もとに、「きょうの仕事はもうええから、あとで家に来い」と囁き残して、やはりぶらっと事務所をあとにして、
言われたとおり会社を早引けして帰宅してみると、夫婦のベッドの上、親父と澪とが、いまや組んづほぐれつの真っ最中・・・ということもまた、厳然としてあるのだった。

一度などは。
澪に言われるままに、彼女の黒のストッキングを穿いて、家で彼を出迎えたことがあった。
透ける足首を視ただけで、親父は炯眼にもそれと察して。
薄いナイロン生地に透けた彼の足首にキスをすると、たちまち彼を気絶させて。
身体から力の抜けた彼を気絶させるなり、澪の手をひいて夫婦の寝室に引きずり込んでいた。


上司殿は上司殿で、相も変わらずふんぞり返っていた。
自分のところに、やはり昂のところと負けず劣らずの頻度で現れる彼の得意先が来ると、
昂と隣り合わせの打ち合わせテーブルに向い合せになって、気前よくスラックスのすそをひきあげてやる。
彼の妻はそれなりの年配のはずだったが、彼の取引先に言わせると、絶世の美人だということだった。
「あいつら、血を吸わせてくれさえすれば、どんな不細工な女だって絶世の美女というわけさ」
上司殿はエラそうに背すじを伸ばすと、飼い犬にエサでも投げ与えるようにして。
「ほれ」と言うと、スラックスをたくし上げた脚を、来客の前に投げ出すのだった。
上司殿の得意先もまた、上司夫人にぞっこんだった。
彼の場合は必ずといっていいほど、夫人相手のセックスにもつれ込む。
しつような吸血に遭った上司殿が酔いつぶれたようになって、打ち合わせテーブルに突っ伏してへたり込むと。
「なあに、だいじょうぶ。すぐにしゃんとおなりになるさ」
そう言い捨てて、一路上司夫人の待つマンションへと、直行するのだった。
「服を脱がされるのを視られるのが嫌」
夫人のそんな想いを容れてか無視してか、彼女の夫が帰宅するころには、夫人は素っ裸になって、来客へのもてなしに余念がなくなっているという。
「いつもいつも、ちょうどいい按配のときに戻られるんだな。これが」
取引先の得意げなうそぶきに、昂はわかったような相槌を打ってしまっている。

上司殿の夫人が、日常的に輪姦されている―――そう聞いたとき、昂は安堵と共感を覚えていた。
親父がこのごろ、彼に無断で澪のことをお寺や公民館に連れて行って。
彼自身の得意先相手に、澪にセックスのサーヴィスをさせている・・・そう聞いてしまったものだから。
「羽月の奥さんは、なん人相手にした?」
露骨に訊いてくる上司殿に、「6人だそうです」と応えると。
上司殿はくすぐったそうに肩をそびやかして、「あんたの奥さんも、好き者だな」とかいいながら。
「うちのやつは二けたに乗ったぜ」なんて、ヘンな自慢をするのだった。
「おめでとうございます」
昂が神妙に頭を下げると、
「奥さんが二ケタに乗ったら、お祝いに一杯行こうか」
上司殿は完全に、地酒の毒にやられているらしい。
もっとも昂にしても・・・上司殿の陰口など、いえた義理ではなかったけれど。

「あのひとがしつこかった日の夜って・・・あなたも激しいのね」
けだるそうに呟いた澪の悩ましげな顔つきが、ありありと記憶によみがえってきた。
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