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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夫の理解

2014年03月10日(Mon) 08:05:04

いつもいつも、済まないですね。
口先では慇懃なことをいいながら、男はウッソリと、玄関をくぐってくる。
勤め帰りのわたしは、まだスーツを着ていて、靴下だけを履き替えていた。
どういうわけか脚に執着するこの吸血鬼を、ほんのちょっとだけ、愉しませてやるために。

透ける足首に目ざとい視線を投げた男は、「いつもいつも、お気遣いをいただいて」
そういいながら、指で自分の唇を撫でていた。
渇いているときの、癖だった。

さいしょに妻が襲われ、それから娘までもが生き血をすすられて。
もはやわたしに残されたのは、一刻もはやく彼と”和解”をすませて、家族の生命だけでも確保することだけだった。
「脚がお好きみたい」
そういいながら、いつもスカートの下でストッキングをチリチリに咬み破られて帰宅する妻。
わたしはある晩訪れた彼のまえに立って、黙って自分のスラックスをひきあげた。
紳士用ですから、お笑い種にもならないでしょうが・・・
よほどうれしい記憶なのだろう。
いまでも彼は、わたしのまえで、その言葉を口にしてみせる。
わたしの口まねまで、たくみにまねて。

彼の好みに合わせて履いたのは、ストッキング地の紳士用ハイソックス。
すべらされてくる彼の舌は、彼がわたしの応対に満足していることを伝えてきた。
欲情にまみれた淫らな唾液を、たっぷりと含ませながら。


「いいですね。じつにいい舌触りです・・・」
寝そべるわたしの足許にかがみ込んで、男はいつものように、薄いナイロン生地のうえから、舌をふるいつけてくる。
「あなたを侮辱している気分になれるのが、まことに愉しい」
そんな腹立たしいことまで口にされながら、わたしは不平そうに舌打ちをしてみせるだけ。

かつての貞淑妻は、淫らな恋に酔いしれて。すっかり男の情婦に成り下がっていた。
そんな妻を、娼婦のようにもてあそび、
ましてや娘の純潔までも、むしり取って行って。
いまでは娘の制服のスカートの裏側は、男の粘液で白ぱくれているという。

それほどまでに、されながら。
どういうわけか伝わってくるのは、男がわたしの妻と娘に抱く情愛の深さばかり。
おなじ女を、好きになったのだ。
おなじ娘を、いとおしく思っているだけなのだ。
たぶんきっと、そのとおりなのだろう。
ただ、愛しかたの流儀が、常識とかけ離れているだけ―――

「嬉しいですね。このなめらかさ。このツヤツヤとした光沢・・・」
男はまだ、わたしの足許にとりついたまま。
ふしだらにしわくちゃにされ、くしゃくしゃにずり落ちてしまった紳士用のハイソックスを、賞玩してやまない。
チクリ、チクリ・・・と、時折牙を忍び込ませて。
みるかげもなく破いてしまうまで、たっぷりと愉しんでみせる。

どうせなら。
愉しみ抜くのが、礼儀というものでしょう?

そんな身勝手な言い草に。
わたしは深く頷いてしまっている。

妻以外の女を抱くのは、たんに血を獲るためだという見え透いた嘘さえも、
妻の身体を気遣ってくれるのだと受け取って。
きみのまえで奥さんを辱め抜くことができるのが、最高のもてなしなんだよ、という要求も、
嫉妬の歓びをわたしに植えつけようとする企みなのだと理解して。
せっかくできたご縁なのですから、妻のことを見捨てないでくださいね、なんて、懇願してみせている。

「あんたの生き血は、オードブルだ。メインディッシュが奥さんと娘さんだ」
そんなことを、いわれながらも。
男がその実、わたしの血を愉しみにしてくることも、気づいてしまっている。
「きみの生き血を吸い取った後、勤め帰りの奥さんをきみの前で襲うのが、なによりも愉しい」
そんな無礼さえ、楽しげに口にする男のために。
わたしは男を悦ばせるために、きょうも薄い靴下を脚に通してゆく。
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