FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

父さんの日課

2014年04月07日(Mon) 08:06:33

会社で貧血を起こした日の帰り道は、意外に意識がしっかりしている。
今夜もちょうど、そんな感じだった。
吸血病が蔓延し始めたこの街では。
行き交う人が皆、吸血鬼の犠牲者にみえる。
いやじっさい、すれ違う人の首すじにふと視線を当てると、
そこには大概、赤黒い咬み痕に、吸い残された血のりがべっとりと貼りついていたりするのだった。

きょうも、出社そうそうのことだった。
無表情な顔をした秘書課の女子社員が事務所に入ってくると、
そっけない口調でわたしに来客を告げて、すぐに回れ右をした。
くるりと背中を向けるとき。
アップにした黒髪の生え際に、ふたつ綺麗に並んだ紅い斑点が目に入る。
まだ、咬まれたばかりのようだった。

応接室に行くと案の定、彼はいた。
息子の血が気に入って、妻にまで迫っていったあの男―――
わたしが開いたドアの向こうに立ちすくんだのを見ると、
男は親しげに片手をあげ、わたしを手招きしてみせた。
「朝のうちのほうが、血の味は愉しめるからね・・・本命は、朝になってから狙うのさ」
まるでわたしの機嫌をとるかのように、「本命」だなんて持ち上げておいて。
わたしはしぶしぶ・・・といった態度で向かいのソファに腰かけると、だまってスラックスをたくし上げた。
「うふふふふふっ。いつもながら、いい色だね」
彼がほめているのは、わたしの履いている、ストッキング地の濃紺のハイソックスの色あいだった。
「男ものなのに、どうしてこうもなまめかしいのか」
男はそういいながら、わたしの側のソファに移って来て。
スラックスをさらにたくし上げると、そろそろと足許にかがみ込んでくる。
薄いナイロン生地越しに、男の唇がねっとりと這う感触にドキドキするようになったのは・・・いったいいつのころからだっただろう?


執務中に貧血を訴えると、上司は寛大にほほ笑んで、休憩室で休むようにと指示をくれた。
血を吸われるようになったのが公になってからこのかた、
仕事らしい仕事はなくなっていたから、
わたしが長時間の休憩をとったからといって、ほかの部署に迷惑がかかるという事態は起こらなくなっている。
整えられたふかふかのベッドに横たわると、あるじのいなかった布団のひんやりとした感触が、わたしを包む。
夕べからの疲れがどっと押し寄せてきて、わたしは眩暈に似た睡魔に、身をゆだねていった。


家に帰ると、息子が出迎えてくれた。
まだ濃紺の半ズボンの制服姿だった。
ハイソックスは片方がずり落ちていて―――ふくらはぎの咬み痕はまだ新しく、紅い血がみずみずしい輝きをたたえていた。
「お帰り。早かったね」
息子はてきぱきと応えると、「ご飯できてるから。きょうはハンバーグだよ。できたてだからこのままでもいいと思うけど・・・あっためる?」
返事もきかずに、レンジをチンしてくれている。
ひととおり、わたしの食事の用意を整えると。
「じゃあ、これから勉強するから・・・あとはてきとうに寝(やす)んでね」
手際よく気配りのきいた配膳など、いつの間におぼえたのだろうか?
我が家が吸血鬼と同居するようになってから。
妻も息子も親切になり、やり取りが細やかになったような気が―――している。


食事を終えて階上の寝室にあがると―――息子が妻の話題を一切口にしなかったわけがわかった。
そこには複数の人の、人の気配がしていた。
寝室のドアには、落書きのようなものが何枚も、べたべたと無造作に貼りつけられていた。
まるで子供が貼りついだような、稚拙な貼り方で、ほとんどが斜めに貼られていた。
内容は、どれもが衝撃的なものばかり。

離婚届
夫―――わたしの名前。
妻―――妻の名前。

婚姻届
夫になる人―――妻の情夫さんの名前。
妻になる人―――妻の名前。


離婚届も婚姻届も、役所から取り寄せた本物だった。
妻にはわたしと別れる気は、毛頭ない。
いまの裕福な生活が、気に入っていたから。
そして、エリート会社員の夫人である自分を辱めつづけることに、自分の情夫が価値を感じているのを、よく知っていたから。
そう、彼の好みに合わせるために、彼女はわたしの妻でいつづけている、というのだ。


成績表
父さんのぺ〇ス  15点 12点  8点  14点
小父様のペ〇ス  90点 95点 93点 100点

父さんのより、ずうっと大きいわあっ。
ぐるぐる巻きに縛られて、部屋の隅っこに転がされたわたしのまえで。
妻はなん回、そんなことを口走ったことだろう?

切り取られたアルバムのページ。
一枚一枚が、妻と彼との濡れ場。
写真を撮ったのは、どうやら息子らしかった。
写真の合間に踊るのは、息子の筆跡。

ぼくは小父さんと母さんとのキューピッド。
父さんに内緒で、ふたりの生活をつづります。

すぐ隣には、半裸で抱き合う二人の写真。
妻は礼服をはだけておっぱいをまる見えにさせていて、
黒のストッキングを、ひざまで脱がされて、まぶしい太ももをさらけ出している。

小父さんは男として、最高!
父さんとするよりも、よほどキモチがいいみたい・・・!

あえいでいる妻の表情が、息子の落書きの真実性を裏付けている。


こんなものばかり、見せつけられているというのに・・・
わたしが貧血の身体を真に回復させるのは、たぶんこの廊下でのことなのだった。
ぎしぎしときしむベッドの音に、わたしはいつものように、そうっとドアノブをまわしていた。
今夜もきっと、眠れない一夜を明かして―――出勤直後に朝の吸血を済ませると、すぐにそのまま休養を取ってしまうのだろう。
前の記事
ちょっくら、
次の記事
学校生活のなかでの吸血鬼の風景。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3037-c0b71d6b