FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

静粛に静粛に~ご住職が直接、奥様のお相手をなされます。

2014年04月10日(Thu) 08:12:27

「ご住職が直接、奥様のお相手をなされます」
喪服を着た村の老女が、参列していたわたしのところにすすっ・・・と近寄ると、
ぼしゃぼしゃとした調子でそう囁いて、ふたたび背をかがめてそそくさと離れていった。
怪訝そうに交し合った夫婦の視線は、交わりあうとすぐに気まずそうに離れてゆく。
ここはお寺の本堂のなか。
厳粛なるべき法事の席だった。

都会から赴任してきたわたしたちは、村の行事には積極的に参加することを義務づけられていた。
土地の人たちと親睦を深めるため―――というのがもっともらしい表向きの理由だったが。
それはあくまでも口実で、かれらの真の狙いは、わたしたちの帯同してきた都会妻の貞操。
そうと知りつつ妻を伴って赴任してきたのは、皆それぞれに理由を持ち合わせていたからだった。
会社の創立者の出身地であるこの村は、慢性的な女不足で、悩んでいた。

ご住職はさっきから、数名居る僧侶のなかで、ひときわ太いだみ声で、お経を唱えているところだった。
老女がわたしに近づき、離れていったとき。
こちらのほうをチラと見たような、見なかったような・・・

「のっけからご住職相手とは。これは名誉なことですぞ」
隣に座る村の顔役が、重々しい口調でそういった。
「は・・・はぁ・・・」
妻の手前もあって、なま返事のわたし。
感情を消した表情を顔に貼りつけたままの、妻。
「奥さん、すごいですね。大抜擢じゃないですか!」
真後ろにすわる後輩の小暮君は、本気で目を輝かせている。
小暮夫人のみどりさんも、小暮君の隣から、「おめでとうございます」と、妻に心のこもったまなざしを投げる。
「うちのみどりなんか、ご住職にあたったのは五回めだったんですよ」
「もぅ・・・」
みどりさんは照れ臭そうに夫を振り切りながらも、まんざらではなさそうな顔をしている。

面識のある都会の夫婦からそんな思わぬ“祝福”を受けた妻は、ちょっとびっくりしたように振り返り、「えっ???」と口走る。
「静粛に静粛に」
隣の顔役が、わたしたちの私語をたしなめた。

小暮君は、半年まえに当地に赴任したばかり。
着任そうそう、妻のみどりさんを伴ってこのお寺に法事の手伝いに来たのが、“この世界”とのかかわりのはじまりだったという。
「いやぁ、さすがにぼくも、びびりましたよ・・・」
さすがに自分のときのことは、あからさまに言わなかったけれど。
人づてに聞いたそのときの状況は、かなり露骨なものだったらしい。
顔役二人が小暮君を抑えつけて、みどりさんはその目の前で、村の若い衆三人に取り囲まれながら、喪服のスーツを剥ぎ取られていったという。
「あとから思えば、抑えつけてもらっててよかったです。あらかじめ聞かされていたとはいっても、逆上しちゃっていましたからね。若いひとのときには大概こうなるんだって、あとから顔役に聞かされました」
いまでは小暮君はたんたんと、目のまえで奥さんを輪姦された体験を、そんなふうに聞かせてくれる。
「さいしょが肝心だそうでしてね。みどりはこれですっかり、納得しちゃったみたいです」
小暮君がそういうと、
「淫乱妻になっちゃいました」
みどりさんは、くすくすと笑っている。
両肩にかかるセミロングの黒髪が、薄暗いお堂のなかで微かな灯りを受けて、ひどくなまめかしく輝いていた。
「みどりのお相手の一人は、そのときの顔役さんの息子さんで・・・女の人は初めてだったんだそうです。その顔役さんは、”息子の筆おろしに協力してくれた“といって、いまだに恩に着られて・・・飲みきれないほどお酒、くださるんですよ。こんど先輩にも持っていきますから」
かわりに彼が持ってきてくれたのが、きょうの「法事の手伝い」の予定だった―――

返せない借金とともに、わたしたちは失踪したことになっていた。
会社はそれでもわたしたちをかくまってくれて、この勤務地を指定してきた。
乱交の風習のある村で・・・奥さんも巻き込まれちゃうけど、それでもいいかい?
人事担当の重役の言葉に、会社を辞めますと告げる勇気が持てないままに、とうとうここまで来てしまった。
「仕方ないわ。なにもかも忘れるから。だからあなたも忘れて」
妻はあきらめきった顔をして、わたしにそういった。


読経のさいちゅうも、ご住職はちらちらと、こちらの様子を窺っている。
とくに妻の身体つきを、舐めるような視線で視ている。
しつような目線を察した妻は、数珠をギュッと握りしめたまま、身体を固くしていた。
やがてご住職は、高らかなだみ声でお経を唱えながら起ちあがり、本堂を横切っていった。
本堂のいちばん奥には小さな引き戸があった。
ご住職は身をかがめて引き戸を開けた。
金襴の袈裟が重たげにずるずると引きずられながら、引き戸の向こうに消えた。

「ささ」
隣の顔役が身をかがめて、間に座るわたしを飛び越すようにして、妻を促した。
妻はなおもためらったように、わたしを見た。
なにか言いたげなようすだった。
ふり返ると、化粧を刷いたいつもより白い目鼻立ちに、しんけんな目線が宿っていた。
覚悟を決めたな。
わたしはそう直感した。
思わず湧いた感情の正体が安堵であることにうろたえながらも、わたしはわたしに課せられた務めを果たそうとしている。
「行って来なさい」
夫としての命じることに、妻は決して逆らわない―――村の不文律では、そうなっているという。

妻は自分の意志ではないように、音もなくすうっと起ちあがると、ご住職のあとを追うようにして、本堂を横切っていった。
読経の声を高らかにあげながら、僧侶たちはななめに横切る喪服姿をふしんがる様子もなく、さりげなく席をずらして、妻を通してくれた。
引き戸を開けたとき、妻はもう一度だけ、わたしのほうをふり返った。
なにかを懇願するような顔をしていた。
わたしは意味もなく、頷いてみせる。
妻は謝罪するように深々とお辞儀をすると、黒のストッキングのつま先を引き戸の向こうへとすべらせていった。
「成仏成仏。ありがたや」
隣の顔役がそう呟いて、殊勝げに掌を合わせた。
読経の声がいちだんと、高らかになった。

数分後。

アアー!

遠くから。
絶叫のようなものが谺した。
かすかな声ではあったが、それは幾重にも隔てられた壁を通して聞こえるからであって、じっさいには絶叫であることを、声の雰囲気からしてそれと察した。
思わず起ちあがろうとするわたしを、顔役が引き留めた。
「静粛に静粛に」
法事のさいちゅうですぞ、と、顔役はわたしを咎めることを忘れなかった。
「先輩、ダメです。いま出てっては」
小暮君も、わたしをたしなめた。
奥さんがよがり狂っているのを目のまえで視た男のいうことを、わたしは諾(き)かざるを得ない立場におかれていた―――


一時間は経っただろうか?
小暮君夫婦は、すでに後ろの席から姿を消していた。
さいしょにみどりさんが、ちょっとしてから小暮君までもが、それぞれ別々の老女に導かれて、出ていったのだ。
隣にぽつんと座っているのは、顔役ひとりだった。
視るか視ないか・・・の選択だけは、わたしの意思を聞いてくれた。
視ない―――という選択は、はたして正しかったのだろうか?

引き戸がもそもそと開くと、小さな人影がおずおずと、姿をみせた。
妻のものであるとわかるのに、2秒ほどよけいにかかった。
きちんとセットされた髪はほどかれて、ぼさぼさにほつれて肩先に流れていて。
はだけたブラウスからは、吊り紐の切れたブラジャーに区切られた胸元が、あらわになっていて。
派手に裂けた黒のストッキングが、白い脛を露骨なまでに、露出させていた。
席に戻った時、妻はまだ、息を弾ませていた。
わたしの傍らに戻るとひと言、
「なにごともございませんでした」
丸暗記してきたような、棒読み口調だった。
おそらくそう言えと、ご住職に言い含められてきたのだろう。
それと察するとわたしも、顔役から言い含められていたセリフを、そのまま口にした。
「お疲れさま」
と―――
わたしの声色に穏やかさと、淫らな慄(ふる)えがあるのを、妻は女の直感で嗅ぎ分けたらしい。
チラとこちらの顔をのぞき込むような視線を投げてよこすと、
「おつきあいすることになりました」
許してくださるわね?目線はそう語っていた。
「よろこんで・・・お受けしなくちゃね」
震える唇がかろうじて紡いだその言葉に、妻は安堵の笑みを泛べる。
「そうね」
合掌して瞑目した白い頬には、穏やかな笑みさえ含まれている。

女はやはり、剄(つよ)いのか―――
あらためて、わたしの全身に慄(ふる)えが宿った。
それが淫らな意思によるものだと、夫婦どちらもが自覚しながら。
妻は素知らぬ顔をして、神妙にお焼香に立ってゆく。
前の記事
ちゅぱちゅぱ・・・ぢゅるうっ。
次の記事
ご住職は、一枚うわて。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3040-22c6e1f0