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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

おみやげ

2014年04月30日(Wed) 05:53:28

待ち合わせた公園に。
ぼくは約束どおりの時間に着いて。
咬まれたばかりの姉さんは、5分遅れでやって来た。
1時間もまえから待ちぼうけていた吸血鬼の小父さんは。
「はい、おみやげ。」そう言って。
袋を開けてみたら、まん丸のぼた餅がふっくらと顔をのぞかせた。

ちゅーっ。
ちゅーっ。
ぼた餅にぱくついているぼく達に。
小父さんは、さいしょはぼく、それから姉さんの首すじに咬みついて。
このあいだつけられたばかりの傷口を、さらに拡げにかかってゆく。

ふくらはぎにまで咬みついてくる小父さんを、姉さんはくすぐったそうに見おろして。
真っ白なハイソックスに赤い点々が撥ねるのを、困ったように見つめていた。
きょうは脱いで帰るけどー・・・履いてくやつがなくなったら、ママにばれちゃうよー。
小父さんはにんまり笑って、こう答えた。
「こんどはママに、おみやげを持っていこうかな」
「いいね!いいね!それ、名案!」
ぼく達は口をそろえて、そういった。

つぎの日小父さんは、約束どおりうちに来た。
「はい、おみやげ。」そう言って。
破った袋からのぞいたぼた餅は、ブラウスをはだけた女のひとのおっぱいみたいに輝いていた。

きゃーっ。
ちゅう~っ。
ふすまの向こうからあがる声を聞きながら、ぼた餅にぱくついて。
ふと思った―――
「どうしていつも、ぼた餅なんだろう?」
国語が得意な姉さんが、とっさに言った。
「棚からぼた餅・・・って、言うじゃない」
なあるほど・・・

夕暮れ刻になっても、ママも、小父さんも、部屋から出てこなかった。
「どうしたんだろ?ママ、生き血を吸い尽されちゃったのかな~」
のんきにそんなことを言っているうちに・・・まずい!パパが帰ってきた。
「はい、おみやげ。」
この言葉。いつかどこかで聞いたことがあったっけ?
そう思いながら破った袋のなかから出てきたのは、ぼた餅だった。
「だぶっちゃったね」
ぼくと姉さんは、そう言いながら。
晩ご飯がまだでお腹がすいていたものだから、すぐにそのぼた餅を、ぱくついていた。
「でも、血を吸う人だけじゃなくって、血を吸われる人も買ってくるんだね。おみやげ。」
姉さんは他人事みたいに、そういった。

ぎゃーっ。
ちゅーっ。
「ママのときより、音がそっけない。」
姉さんの観察力は、鋭い。
ぼくにはちっとも、聞き分けられなかった。
どうやら今夜の晩ご飯・・・ぼた餅だけですませることになりそうだ。

「持ってく?おみやげ」
あくる朝、ぼくがそう言うと。
「ばっかじゃない?」
姉さんはぼくの言い草を、一蹴した。
「だって、血を吸われる人も買ってきたじゃん、おみやげ。」
ぼくがなおも、そう言うと。
「・・・ぼた餅にする?」
姉さんは笑って、お気に入りのピンクのハイソックスを、わざとらしく引っ張りあげる。
「なんか、違うんだよね・・・」
考え込むぼくに、姉さんはだしぬけに、大きな声を出した。
「そうだ!チョコレート!」
姉さんが声をあげるのと同時に、スッと差し出された板チョコ2枚。
なにごともなかったかのようにエプロンをしたママは、
夕べの晩ご飯がなかったことに、なに一つ言い訳もしないで。
いつもどおりに、朝ごはんの支度をつづけてゆく。
父さんはとっくに・・・出勤したみたい。

さて・・・と。
そろそろ学校、行こうかな。
姉さんと待ち合わせた帰り道を、楽しみにして・・・
きょうのぼた餅は、いったいどんな味がするのだろう?


あとがき
起き抜けにふと、浮かんだお話です。
^^;
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