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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

乗っ取られそうになった血すじ。

2014年05月25日(Sun) 07:15:23

お前だけが、頼りだからな。
父さんはしばしばぼくに、そういった。
弟のいないところで・・・

子供ができちゃう。子供ができちゃう。
そんなことを口走りながら母さんが、他所の小父さんに抱かれていたのを・・・ぼくはおぼろげに、記憶している。
あのときできたのが、弟のイツキだった。
イツキはふだんはおとなしい子だったけれど、時おり兄のぼくにも、凶暴性を発揮した。
だってイツキの本当の父さんは、吸血鬼だったのだから。

吸血鬼の小父さんは、母さんのことを好きになって。
無理無体に迫って来たのが、さいしょだったらしい。
父さんはそのころのことは、あまりあからさまに語りたがらなかったけれど。
母さんはそのうちすすんで、小父さんの相手をするようになって。
父さんもそのうち仕方なく、夜中に出かけてゆく母さんのことを、とめなくなっていた。
家のなかにまで上がり込んで、小父さんが母さんとセックスするようになったころ。
ぼくはちょっぴりだけ、そうしたことの意味がわかる年頃になっていた。

幾久しく・・・
幾久しく・・・
お互いの両親がそろって、向かい合わせに座る他人だった夫婦に頭を下げる。
そんな儀式の帰り道、彼女と連れ立って歩くぼくのまえに、イツキはひどくしんけんな顔をして、立ちはだかった。
首すじの咬み痕は、妖しい疼きでぼくの理性をやすやすと封じ込めて。
スーツ姿の彼女はイツキに組み敷かれて、ぼくの前だというのに、ひぃひぃと声を洩らしていた。
随喜に満ち溢れたその声色を、ぼくは忘れることができなくなって・・・

毎週のように逢瀬をせがむ弟のために、
毎週のように彼女を家に招(よ)びつづけて、
毎週のように彼女は、弟に犯されながら。

子供ができちゃう。子供ができちゃう。

そういってすすり泣いて、
そのくせ必ず、口にするのだ。

ああ・・・もっと・・・っ・・・

華燭の典からほどなくして、彼女は隠していたお腹のふくらみをあらわにすることになって・・・
吸血鬼の血すじは、ぼくの家を乗っ取ることに成功した。


幾久しく・・・
幾久しく・・・

そういって頭を垂れるぼくたち夫婦のまえに置かれた座布団には、だれも座っていない。
そのかわり、ほかの人たちは皆、そろっていた。
二十数年まえ、おなじ光景からはじき出されていた弟のイツキも。
妻の両親と夫婦交換をする間柄になったうえ、献血の輪にも巻き込んでしまった、ぼくの両親も。
母さん意外に、義母も妻をも愛人に加えてしまった、あのいけない小父さんも。
きょうは、一族の和解の席。
そう、目のまえで末永い幸(さち)を誓い合ったふたりは、兄妹の間柄だった。

ごめんね。初めてのものも奪(と)られちゃって。
イツキくんの子供まで、生んじゃって。
でも、子供はもうひとり、必ず作ろうね。
タカシが男の子だから、こんどは女の子がいいね。
タカシが好きになっちゃうような、かわいい女の子がいいね。

髪をふり乱した妻は、そういいながら。
吸い取られた血しおをあやしたブラウス姿のまま、ぼくに抱きついてきた―――

これでいいですよね?もういいかげん・・・おあいこということにしてくれませんか?
ぼくの懇願に、いまは穏やかな顔つきになったイツキも小父さんも、ひっそりとうなずき返してくる。
人間同士の子供は、人間に生まれて。
吸血鬼との交わりで生まれた子供は、人間である兄や妹の血で、自らを養って・・・
新たな恋人たちの間から生まれる子供たちは・・・はたしてどういう契りを結んでいくのだろうか。
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