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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

嫌われものたちの祝婚歌

2014年05月25日(Sun) 08:06:31

き、吸血鬼・・・っ!
ひとりの少女がそういって、声を引きつらせると。
や、やだあっ・・・!
もうひとりの少女も声をあげて、その場を逃れようとした。

無駄な抵抗だった。
逃走の試みは、手慣れた追及をまえにあっさりと望みを絶たれて。
少女たちはつぎつぎと首すじを咬まれて、おそろいの制服姿をこわばらせていった。

あーっ。
片方の少女があげた絶望的な叫びに、咬んでいるほうの男が残念そうに目を瞑る。
けれどもその唇はヒルのようなしつような蠢きを停めることはなく、
舌なめずりさえしながら、ほとび出る血潮を口に含んでゆく。

力尽きた少女たちは、思い思いの姿勢で倒れ臥して。
顔色に生気を取り戻した男たちは、吸い取った血をしたたらせながら、
倒れた少女たちのうなじやわき腹、太ももや二の腕と、思い思いに咬みついていった。

そりゃ、嫌われるよなあ・・・オレたち。
やっぱり、そうだよね。嫌われるよね。
でもどうしても、若い女の子の血が、要るんだよね・・・オレたち。
そうさ、そうじゃないと、死んじゃうんだもの。

ふたりの吸血鬼は、制服のブラウスを血に染めて気絶したクラスメイトたちを見おろして、
手の甲で口許を拭いながらも、残念そうな声色を交し合う。
いくら吸血鬼でも、同級生の女の子に嫌われるのが寂しいことに、変わりはないのだ。
吸血鬼と共存するこの街で、吸血の習慣のある男子がそうでない女子を襲うのは、日常茶飯事だったし、
狙われた女子生徒は必ず、吸血に応じることになっていたから、
たとえ嫌々であっても、彼らは容易に、血を獲ることができるのだった。
吸血鬼は人を殺(あや)めない。人は吸血鬼を拒まない。
両者のあいだで交わされた、ぎりぎりの妥協点だった。
その恩恵にあずかりながらも・・・ふたりの若い吸血鬼にとって、年頃というのはやはり、悩む季節であるらしかった。

ああ・・・
ひとりが目覚めると、
うーん・・・
もうひとりもまた、われにかえっていた。
若いということは、回復も早い・・・ということなのだろう。
ふたりの少女は、さっき自分たちの血を吸ったばかりの男子たちをみて、
ヒッ・・・と声をあげ、抱き合わんばかりにして後ずさった。

だいじょうぶ、だいじょうぶだから・・・って!
荘野カオルの血を吸った飯浜浩太が、弁解するように手を振ると。
いや・・・ってゆうか・・・すまなかった。
姫川百合香の血を吸った鬼塚竜希が、目を伏せた。

お前、彼氏いるだろ?
飯浜浩太がそういうと。
だからって、なによ。
気の強い荘野カオルは蓮っ葉な口調で、男の好奇心をはね返した。

お前、処女だったんだな?
鬼塚竜希がそういうと。
そういう話は・・・
おとなしい姫川百合香が目を伏せて言葉を切ると、竜希も黙りこくってしまう。

悪いけど、もう少しだけつきあってくれ。
男子ふたりが、どちらからともなくそういうと。
いっぺんで済ましなさいよね。
荘野カオルは憎まれ口をたたき、
少しだけですよ。
姫川百合香は羞じらいながら、求められるままにうつ伏せになってゆく。
真っ白なハイソックスのふくらはぎに、少女たちは圧しつけられる唇がなまぬるい唾液をしみ込ませて来るのを感じて、
ひとりは悔しそうに歯噛みをして、
ひとりは嫌悪のあまり目を伏せていった。


竜希が姫川百合香とつきあい始めたのは、それがきっかけだった。
週1なら、いいわよ。
おずおずとそう告げる彼女の来訪は、週2になり、週3にもなった。
月、火、水・・・と家に来た彼女が、また次の日も来ようとするのを察して。
身体だいじょうぶか?と声をかける竜希に、
そういうひとだから、OKしてるの。
百合香はそういって、きょうも真新しいのをおろして履いてきた白のハイソックスを、恋人に咬ませるために引っ張りあげていた。


彼氏のOKもらった。
彼氏が予備校のときと、サッカーのときは、逢ってあげるから。
でも、バイトのときは、だめだからね。
働いてるのに、悪いじゃん。
荘野カオルは浩太を、浩太の親友だという彼氏のところに引っ張っていって、三人で話し合ってすべてを決めた。
かわりになぐっていいよ。
彼氏のパンチでできた浩太のぶざまな青タンに、カオルは声をたてて笑った。
彼女ができるまで、あたしが養ってあげる。早くいい女見つけなさいよ。
制服は汚したら、ダメ。
あくまで厳しくはねつける少女の首すじに、浩太はそれでも臆面もなく、唇を吸いつけてゆく。
ほんとうに・・・血が好きなんだね。
カオルの目線にかすかな同情が滲んだのは。
親友の彼女の血を吸ってはいけない という自制と彼が闘いながらも本能にねじ伏せられてゆくのを、じかに感じ取ったからだった。

紹介されたカオルの友達は、みんないい子ばかりだった。
とくにおすすめされた子は長い黒髪の美人で、彼女だけはなん度も回を重ねて血を吸った。
(ということは、ほかの子とは一回限りだったことも意味していた)
けれどもなんとなくしっくりこないものを、浩太は感じていた。
彼女のほうから断ってきた・・・そうカオルに聞かされても、予期したことが起こったという感慨しかわかなかった。

彼女、言ってたよ。浩太はほんとうは、あたしのことが好きなんじゃないかって。
迷惑だからね。あたしにはちゃんと、彼氏いるんだしっ。

きつ過ぎる語尾が装われたものだということを、男女どちらもが、気づいていなかった。


数年後。
婚約、おめでとう。
浩太は独り、カオルのまえで拍手していた。

ばっかじゃないの?あんた。
カオルはどこまでも、浩太のお人好しさをはね返してゆく。
竜希と百合香だって、結婚するんじゃない。あんただけだよ、あぶれてるの。

わかってる。
おれはずうっと、それでいいから。納得してるから。
すべて悟りきってしまったような浩太の言い草に、カオルは目をそむけつづけている。
あたしが子供産むときは、逢ってあげられないんだからね。
そのときは百合香の血をくれるって、竜希が言ってくれた。
両方同時だったら、まじ困るじゃない!子供生むのが。
カオルは相手を徹底的に追い詰めてしまったと気がつくと、ひと言「ごめん」とだけ、いった。
でも、百合香のことを竜希くん譲ってくれるっていうの?
うん・・・
うちのだんなみたいなこと、するんだね。というか、そういうふうにさせちゃえるんだね、浩太って。
カオルは想いにふけるように、なにかを考え込んでいるようだった。
たぶんあなた、優し過ぎるんだよ・・・
独りごとのように口走った言葉を、彼女はどこまで意識して紡いだのだろう・・・?


彼氏に、OKもらった。
結婚してからも、逢ってあげるから。

そう、ありがと。

くどくど言わなくなったのは、カオルの感化だろうか?浩太のもともと持っている、気遣いからだったのか?

で・・・きょうは血を吸うの?吸わないの?

吸う。

わかった。
カオルは男のような声で応じると、なん年も咬まれてきたふくらはぎを、そっと差し伸べた。
新しいパンストなんか、穿いてくるんじゃなかった。と、なおも毒づくのを忘れなかったけれど。

うなじに顔を近寄せる浩太をにらみつけて、カオルはいった。
それから。
先週、彼と初エッチしたから。

そう。おめでとう。

おめでとう?
カオルは眉をあげ、にらむ目線をさらにきつくする。

きみたち吸血鬼って、セックスしたことのある女の血を吸ったら必ず犯すんだったよね?
睨みあげる目線に、男は目じりを和ませた。
そうしてふたりは、どちらからともなく、唇を近寄せ合い、重ね合わせて、吸い合った。
いつまでも。いつまでも・・・
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やはりコチラは、テキストサイトですんで・・・ (^^ゞ
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ご注文は、何になさいますか?

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