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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母さん、ごめんね。あたしのあとは、お願いね・・・

2014年12月17日(Wed) 07:47:51

16歳の友近優紀は、セーラー服の胸もとの白いリボンを揺らしながら、人っこひとりいなくなった学校の廊下を歩いていた。
古びた木造の廊下が、ひと足歩むごとにギシギシときしむのにも、もう耳が慣れてきた。
ここは片田舎の学校―――”村”と呼ばれる世界は排他的だときいていたけれど。
都会から越してきた優紀のことを、周囲はむしろ歓迎してくれているようだった。
担任は初老の女教師。
それがどういうわけか、きょうにかぎって優紀のことを職員室に呼び出して、長い長いお話を始めたのだった。

うちの学校には「接遇」と呼ばれる授業があること。
そこでは女の子が昔ながらに女らしく振舞うことが義務づけられること。

そんなとりとめのないことを、しっかりとした口調で、けれどもくりごとのようにとりとめもなく、彼女は訥々と語っていて・・・そのうちに、校内の誰もが下校してしまっていた。

いけない、塾に遅れちゃう。

優紀が教室のドアを開いてなかに入ろうとした時―――
白のハイソックスの足許を、ハッとすくませていた。
見馴れない男がうっそりとうずくまるようにして、優紀の席に腰かけていた。
四十代くらいの、顔色のさえない中年男だった。

悪いね。きょうからきみの血を吸わせてもらうことになったんだ。

この村には吸血鬼が棲んでいるというから、気をつけなさいね。
そんなばかなと聞き流していた両親の言い草が、ありありと記憶に蘇る。
優紀の頭から、血の気が引いていた・・・・・・

相手がこんなおっさんでは、不服なのかな・・・?

男の呟きが、自分の首すじに迫ってくるのを感じながら。
優紀は金縛りにあったように身じろぎひとつしないで、佇みつづけていた。
白三本のラインが走るセーラー服の襟首を、がっしりと掴まれたとき。
担任の女教師の囁きが、耳の奥に蘇る。

あなたの礼儀正しさが、求められるのですよ。

首すじにふきかかる吐息が、ひどく凍えているように、優紀は感じた。
優紀は目を瞑り、うなじをスッと仰のけていた。
首のつけ根に硬い異物が圧しつけられて、グイッと喰い込んできた・・・・・・


いったいどれほどの時間が経っただろう?
数時間ということは、ないはずだ。
表はまだ、明るいのだから。
案外、ほんの数分間のことだったかもしれない。
首すじにちくりと刺し込まれた男の犬歯が、生温かい自分の血をチューっと吸い上げるのを、
恐怖と戸惑いの想いを抱えながら、聞き入っていた。
教室の天井に這う古びたシミを、薄ぼんやりと眺めながら・・・

ふたたび廊下に出たとき、向こうから小さな影がひとつ、こちらに歩み寄ってきた。
担任の女教師だった。
彼女はいつものように、ゆったりとほほ笑んでいた。
男は礼儀正しく、優紀の傍らに立ったまま会釈をした。

どうやらうまくいったようね。
おかげさまで。

そうか、この男とわたしを二人きりをするために、先生はわたしのこと呼び止めたんだ・・・
女教師の謀りごとに、けれども優紀は腹立たしさを感じていない。
担任の先生の視線が、自分の足許に注がれるのが、くすぐったかった。
男に求められるまま、気前よく咬ませてしまったふくらはぎ。
白のハイソックスには、派手な赤い飛沫が、散っていた。

お似合いよ。

ゆったりとほほ笑む先生に、「ええ」とか、「はい」とか、しどろもどろのあいさつになってしまったのだけが、ちょっぴり不覚だった。


ただいま・・・
玄関のまえ、いつものように声をかけようとして。
優紀は自分の声を、引っ込めていた。
彼女は母にドアを開けてもらうことをやめて、鍵を取り出して玄関のドアを開けた。
物音に気がついて優紀の母親が玄関に出てきたときに。
連れの男はもう、敷居をまたいでしまっていた。

おろおろとする母親に、優紀は棒読みのように呟いている。

母さん、ごめんね。
吸血鬼の小父さんなの。
家にあげちゃうと、どうなるか知っているよね?
いつでも好きなときに、うちに出はいりできるんだったよね?
罰として、まずあたしが血をたっぷり吸われるの。
あたしの番が済んだら、あとは母さんお願いね。

戸惑うように娘を見送った母親がしたことは、
招かざる客を力づくで押し返すことでも、
自分が身代わりになるから娘を話してほしいと懇願することでもなくて、

娘の勉強部屋から、「アッ」というちいさな叫びがするのと。
どうやら従順に身を横たえてしまったらしい娘のうえに、チュウチュウとなまなましい吸血の音が覆いかぶさるのと、
男の満足げなうめきと、どうやら夢中になってしまったらしい娘の「もっと・・・もっと・・・」という繰りごととを、
しっかり自分の耳で聞き届けると。

グリーンのタートルネックのセーターを、真っ白なブラウスに。
くたびれた紺のジーンズを、よそ行きの黒のフレアスカートに。
履き古したソックスを、真新しい肌色のストッキングに。

おもてなし服に、着替える行為だった。

勤め帰りの夫を迎えるとき。
妻も娘も、襟首を汚した服を着たままで。
娘は白のハイソックスを真っ赤にして、
妻は肌色のストッキングを、ひざ小僧があらわになるほど咬み破られたままでいて、
精液のしたたり落ちるスカートを揺らしながら、台所に立つことだろう。
すべてを心得た夫は、気づかないふりをして。
なにごともなかったように、夕餉の食卓に着くのだろう。
自分の妻と娘とが、すでに食されてしまったことを、むしろ誇らしく胸に刻みながら。
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