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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

信じてる。信じてるから・・・

2014年12月18日(Thu) 18:39:00

「信じてる。信じてるから・・・」
縄村朋美は呪文でも唱えるようにそう呟きつづけながら。
学校帰りの制服姿を、自ら襲わせていった。
白のハイソックスの足許ににじり寄る、黒い影は、少女の足首をつかまえると、
しっかりとした感じのするナイロン生地に包まれたたっぷりとしたふくらはぎに、唇を吸いつけてゆく。
がりっ・・・と。力まかせに噛まれたときは。
さすがに少女も、顔をしかめたけれど。
濃紺のプリーツスカートのうえから、すぼめた膝を抑えながら。
なにかをこらえるように、歯がみをした。

大丈夫。あたし知ってるから。
あなたに襲われて、気絶しちゃったこともなん度もあるのに。
あたしの血を吸い尽さないで、生命を助けてくれたことを。

少女は心のなかで呪文を唱え、
男は吸い出した若い血潮を通して、彼女の心の奥を正確に読み取ってゆく―――

数刻・・・
少女は肩で、息をしていた。
セイセイと小刻みにはずませる肩を、男は恋人のように、じっと抱き支えていた。
このごろ、飲み方が荒っぽい。
それはお互いに、感じ合っていた。
激しく求められることに、少女はもう抵抗を感じていない。
むしろ歓びと誇りさえ、感じているのだった。
男の胸中は、もう少し複雑だった。
自分の身体のなかに、何が起きているのかを。わかっていたから。

吸血鬼ひとりを養うのには、七人の人間が要るという。
血を吸い尽されてしまったとき、相手の吸血鬼から聞かされたことだった。
それを、ひと月のうちに目星をつけなければならないという。
そうでないと、自分を信じてついてくるようになった者から、よけいに奪うことになって。
相手を死なさなければならないはめになりかねないから・・・と。

信じてるわ。
そう囁いてくれる少女の言葉がふと重荷になりかけたとき。
俺が生きるのをやめればいいのか・・・?とさえ、自問しかけていた。

妻は、すでに吸血鬼の所有物になっていた。
邪魔者になった夫は、妻に裏切られるようにして、
人もあろうに妻を寝取った間男に生き血を吸い尽されてしまったのだった。
半吸血鬼と化した妻は、いまは自分の女友だちを呼び寄せて、情夫の渇きを飽かしめている。
けれどもそんな妻も、かつての夫に悪いと思ったのだろうか。
自分の妹夫婦を呼び寄せたときには、夫に機会を与えたのだった。
なにも知らずに招かれた妹と義弟、それにふたりの娘。
酒に酔わされた義弟は、邪悪な牙に真っ先にかかって、スポーツで鍛えた生き血をむさぼられて。
酔い酔いになった夫にすすめられるがままに、その妻も真っ赤なワンピースに、己の血潮を浸していった。
怯えきったふたりの娘たちは、まだ幼かったけれど。
思った以上に従順に、伯父の牙が自分たちの血をあやしていくのを、拒み切れずになっていった。

あとふたり。
前妻の心づくしを味わい切ったあと。
男は再び、街にさ迷い出ていた。
学校帰りで遅くなった少女が、自分の目の前を横切ったのは、そんなときだったのだ。


信じてる。信じてるよ―――
少女は死の翳を漂わせながら、まだ呪文を呟きつづけている。
このまま死んでしまっても良い。
そうとさえ、思っているかのようだった。
そうはさせまい。俺が死んでしまった方がまし・・・
そう思いながらも、男はせりあがってくる欲情を、どうすることもできないでいる。

少女の唇が、ふと歌うような呟きを口にした。
妹を呼んであげる―――と。

もしもし?まあちゃん?今出てこれる?
え?お夕飯のお手伝い?まだ早いじゃん。ちょっとだけ、出てきてくれる?
姉の誘いに何の疑念も持たないらしい妹娘の、切れ切れな声が、くすぐったく鼓膜を刺す。
吸血鬼が求めてやまないピチピチとした生気が、はしばしに感じられた。
十分とかからなかった。
真っ赤なミニスカートの下、にょっきりと伸びた黒のストッキングの脚が、夕闇の向こうにもの問いたげにたたずむまでに。


きゃーっ!
逃げまどう少女が行き止まりの路地に追い詰められて、電信柱にくぎ付けになるのに、そう時間はかからなかった。
朋美は崩れそうになった姿勢を、腕と背中で支えながら、うっとりとした目線をおくって。
妹の真奈美が首すじを咬まれて、キャッとちいさく叫ぶと、身じろぎもならず抱きすくめられてゆくのを。
面白そうに、見守っていた。
数日前の自分を、見ているようだったから。

美味しいよね?まあちゃんの血、美味しいよね?
ちゅうちゅう、ゴクゴク・・・いい音立てちゃって。
あたしがご馳走しきれない分は、まあちゃんからもらってね・・・
あっ、ひざが折れそう・・・そう、優しく救い上げて頂戴ね。
お気に入りの紺のセーター、血で濡れちゃうけど・・・はじめての記念なら、まあちゃんも赦せるわよね?

どうやら話が通じたらしい・・・
男は妹を抱き支えながら、こちらへと促して。
真奈美はべそを掻きながらも、しっかりとした足取りで、姉のほうへと歩み寄っていった。

ごめんね、まあちゃん。
ウン、だいじょうぶ。
痛かったー?よくガマンしたね。
お姉ちゃん、ハイソックス真っ赤・・・
まあちゃんも、脚を咬んでもらったら?黒のストッキングせっかく履いてきたんだから。
えっ・・・?えっ・・・?
この人、女の子の靴下破くの好きなの。つきあってあげて。
エエ、エエ、そうするわ。本当はあたし、咬ませてあげてきて履いて来たの。
そうこなくっちゃ♪

しつような吸いかたに、辟易しながら。
真奈美は広がる闇空を、見あげていた。
真新しい黒のストッキングに走る裂け目はもう、ひざ小僧までまる見えになるほど、拡がっていたけれど。
もう、いくら破かれちゃっても、かまわない・・・
そんなことをごくふつうに、感じてしまっている。

ねえ。
うん?
母さんのことも、紹介してあげようよ。
そうね、あたしもいま、それ言おうと思ってた。
あたしたちの血が美味しいんなら、母さんの血も美味しいよね。
未亡人なんだし、父さんも赦してくれるよね?
ねえ、どうする?いま行ってみる?まあちゃんもお夕飯のお手伝いあるっていうし。
そのまえに、済ませちゃわない・・・?

口々に言葉を重ね合わせる少女たちの言い草を、くすぐったくうけとめながら。
これで七人目か。
姉妹のうら若い血潮に濡れた唇を、満足げに撫でつけていた。
真奈美が親しげに、笑いかけてくる。
家出てくるときね、母さん紺色のスケスケのパンスト、穿いていたんだよ・・・
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母さん、ごめんね。あたしのあとは、お願いね・・・

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