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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

特定の彼氏を迎え入れる場合。 ~初夜~

2015年02月06日(Fri) 05:23:48

ええ、うちの場合は・・・愚妻には特定の男性がいるんです。
なにしろ、かなりの年になってからこの世界に来ましたからね。
おおぜいの男性をお迎えするには、愚妻にも負担が大きかろうと思ったのですよ。
息子たち夫婦は、夜ごと好き好きにそつなく相手を取り替えているようですし、
互いに夫婦交換までしているようですから・・・若い人というのは羨ましいですね。
そうです。
私ども夫婦がこの世界に入ったのは、息子たちの紹介が理由なんです。

ふたりとも大した孝行息子で・・・私はともかくとして、自分たちの母親のことを真っ先に考えたそうです。
「母さんのこと、一日でも若いうちに襲わせてあげたいね。せめて五十になる前に」と。
初めて夫婦ながら血を吸われたとき、私は53歳、愚妻は49歳・・・ぎりぎりで間に合ったというわけです。
いまでは私も愚妻も、こちら側の人間ですから・・・
息子たちの配慮には、いまではとても感謝しているんですけどね。

ええ、初めての夜は、街はずれにあるお寺に一泊した時のことでした。
この土地に縁故のない私たちを、どうやって引き込むか・・・息子たち夫婦も、いろいろ考えてくれたようです。
けっきょく、上の息子がお世話になっている土地の長者様の法事だとかで、招ばれて行きました。
こちらには温泉もあるし・・・と誘われましてね。
いや、とんだ温泉旅行でした。

法事のまえの晩は、法事に出るものは全員、お寺に寝泊まりするとかで・・・
私ども夫婦にも、落ち着いた和室がひと部屋あてがわれました。
村のかたがたは、それは暖かく迎え入れてくださいまして・・・
「やって来た奥さんがおきれいだったからねえ」とは、あとで聞かされたものですが。(苦笑)
軽く一杯いただいて、長旅の疲れからかすぐに寝入ってしまいました。
もしかすると、酒の中になにか入っていたのかもしれませんね。

気がついたときにはもう、咬まれちゃっていました。私の場合。
首のつけ根に鈍痛が走って・・・とっさに身じろぎしようとしたけれど、動けない。
布団のうえにだれかがのしかかってきて、抑えつけているんですね。
そのままゴクゴク、クチャクチャと・・・露骨な音をたてながら、血を吸い取られてしまいました。
ぐったり、茫然となっている私の傍らで、そいつはこんどは愚妻にのしかかっていって・・・
ええ、とっさのことで。寝入っている愚妻には、なにも知らせてやることができなかったのです。
愚妻が必死に抵抗しているのが、ありありとわかるのに。
手足には力がまったく入らず、私はただ薄ぼんやりとなって、大の字になっているばかりでした。
そのうちに、力尽きた愚妻もまた、首すじを咬まれてしまいました。
こんどは愚妻のうなじから、ちゅう~っという音が・・・あえなくふたりとも、血を吸われてしまったというわけです。

相手は私より、ひとまわりほど年配の男でした。
迎え酒の一座の隅っこにいたのをなんとなく憶えていました。
そういえば私も愚妻も、一度ずつその方にお酒を注いでもらいましたっけ。
その時点でもう、向こうはすっかりその気だったのですな。
愚妻の写真を見てひと目惚れした・・・そのあと本人の顔を見て、早く逢瀬が遂げたくなった。
そんなことだったようです。
ほんとうは、つぎの日の法事のさいちゅうが”本番”だったようなのですが。
待ち切れなかったんでしょうね。

その場で相手がわかったのは・・・
ふたりの血を吸い取ったあと、彼が部屋の灯りを点けたからです。
古びた黄色い裸電球だったのですが・・・失血のせいか、ひどく眩しく感じました。
愚妻も同じだったようです。
「あなた・・・」
蒼ざめてこちらを覗き込む愚妻のネグリジェの肩先は、飛び散った血のりに濡れていました。
彼女もまた、血を吸い取られた身体を重たげに寝そべらせていて、布団の上からしっかりと起き上がれずにいたのです。

男は「いきなりの訪問、申し訳ない」と、私たちに謝りました。
落ち着いた声色でした。
それから、順を追ってかいつまんで、今までの経緯を話してくれたのです。
この街の住民は、吸血鬼と共存していること。
血を吸われることはあっても、生命に危険は及ばないこと。
上の息子はなにもかも承知のうえで、勤め先の創立者の出身地であるこの街に赴任してきたこと。
赴任してすぐに今夜の私たちのように、夫婦ながら咬まれてしまい・・・
それから吸血鬼たちとのおぞましい交際を受け入れていったこと。
その後下の息子も婚約者もろとも巻き込まれて、血を吸われるようになったこと。
相手選びはある程度自由であること。
つまり、最初に吸われた男にだけ吸血を許すか、特定の相手を作らずに血を提供するかを択べること。
息子たちは自分の妻に特定の相手を持たせずに、入れ代わり立ち代わり、大勢の男たちに妻の血を吸わせていること。
などなど・・・

どれもが驚くべき内容でした。
けれども、すでに血を吸われてしまった私たちもまた、その毒液を知らず知らず、わが身にしみ込まされてしまっていたのです。
「御懇意になれたしるしに・・・今少し奥方の血を頂きたい。よそ行きの服に着替えてくださらんか」
男の言うなりに、愚妻は早くも、身づくろいするために腰を浮かして。
私のほうも、部屋の隅にあった衝立で、自ら視界を遮っていって。
男もまた、ご婦人のお召替えの場にいるのは失敬といって、いったん部屋を出たのでした。

逃げるチャンスだと、思う・・・?
声をひそめる愚妻の顔は、半分影になって表情が良く見えません。
本気で逃げようとしたのか。私の気持ちを試そうとしたのか。たぶん後者であったのでしょう。
街ぐるみでの吸血の儀式から、のがれるすべなどない――そんな計算をするよりもさきに。
「着替えのためにわざわざ出ていかれたんだ。信用を裏切るのも、どんなものかな」
自分でも意外なことを、私は口走っていました。
「そうよね。ちょっとびっくりしたけど・・・子供たちも納得しているようですから、きちんとお相手しましょうね」
いつも控えめな愚妻にしてはひどく思い切りよく、自分自身に言い聞かせるようにそういうと、
そそくさと衝立の陰へと入っていったのでした。

どうぞ。
衝立のなかから、愚妻の声がしました。
声に応えるように、いったん閉ざされた障子がからり・・・と披かれ、男が再び入ってきました。
お邪魔しますよ。
いらっしゃい。
私も頭を下げて、男を迎え入れます。
敵意はない。拒んでもいない。そういう意思を伝える必要を感じたので。
生命の危険はない・・・と言ってくれても、げんにかなりの量の血を吸っています。
兇暴化しそうな様子はなかったのですが、いちおうの用心をしたわけです。

愚妻は昨日着ていた薄茶のスーツを着込んでいました。
髪をきちんと整え、薄く化粧を刷いて・・・
行儀よく畳の上に折りたたんだ脛は、真新しい肌色のストッキングに包んでいました。
――なぜだかわからないけど、きちんとしなくちゃって思ったの。
のちに愚妻は私にそう言いましたが、身ぎれいにした愚妻の様子は男をひどく満足させたようでした。

ではご主人、御免を蒙って…
男は禿げかかった白髪頭を丁寧にさげると、正座して目を瞑る愚妻の背後にまわり―――
髪をあげてあらわになった首すじを、かりり・・・と咬んだのでした。

うっとりするような、献血の風景でした。
男がひと口ひと口、嚥(の)み込むたびに、愚妻は微かに肩を震わせて。
わざと私のほうから逸らした視線を、あらぬかたに向けながら。
声もたてず、失血に萎えかかった身体を懸命に支えつづけていました。
相手の男は、強奪するような荒々しさも、侮辱的なしぐさも微塵も見せないで。
吸い取った愚妻の血を、豊潤なワインでも味わうように、舌で転がし、ゆったりと賞玩してゆくのです。

力なくしなだれかかる愚妻の華奢な上背を、男はなんなく支えながら、
うなじに這わせた唇で、愚妻の素肌をじわじわと冒してゆくのです。
口の端から覗く、2本の牙は。
柔らかなうなじに、深々と咬み入れられていて。
そこだけは酷く貪婪に映るのですが。
白のブラウスに沁みとおる真紅のほとびも、密やかな吐息に似た、愚妻の息遣いも。
鮮やかに朱を刷いた唇がいつしか半開きになって覗かせた、前歯の白い歯並びも。
冷酷に刺し込まれた牙を支点に愚妻がその身を揺らがせて、
かすかな呻き・・・迷った目線。
なにもかもが、愚妻が愉しみ始めていることを、告げているようでした。
なによりも。不覚にも・・・
私自身が、愚妻の受難の光景を、悦びはじめてしまっていたのです。

ひとしきり血を吸い取られてしまうと・・・愚妻は力なくくたりと、くずおれてしまって。
男は愚妻の身体を長々と、布団の取り片づけられた畳のうえに寝そべらせて。
切ない呼吸を楽にしてやろうとしてか、ブラウスの釦をふたつ三つ外して、衣服を弛めていきました。
さりげなく・・・でしたが。
ブラウス越しに乳房の縁をなぞるのを、私は目にしてしまいましたが。
咎めだてひとつせずに、見過ごしにしてしまいました。
彼はきっと、気づいていたと思います。
もういちど。
さきほどよりはあからさまに、愚妻の胸もとをまさぐると。
こんどは愚妻の足許を狙っていったのです。

薄茶のスカートのすそから覗くふくらはぎも、無事では済みませんでした。
赤黒い唇がヒルのように膨れあがって。唾液をヌラヌラと、光らせていて。
欲情を滾らせたその分厚い唇が、肌色のストッキングのうえから愚妻の脚に吸いつけられます。
くちゃ、くちゃ、くちゃ・・・
あからさまな舌なめずりの音を、私は夫として堪えなければなりませんでした。
それはかなり長いこと続けられ、家内の足許を彩る薄手のナイロン生地の舌触りを、男が愉しんでいることに、気づかずにはいられませんでした。
愚妻の穿いているストッキングをくまなく汚してしまうと。
ひときわつよく吸いつけられた唇の下。
淡い色合いのストッキングは、ブチブチと音を立てて咬み破られて・・・
男は再び、愚妻の生き血に酔い痴れていったのです。

部屋を出ぎわに、男は妙なことを言いました。

今夜、わしがこれ以上のことをしなかったのを、あんたは憶えているべきですよ。

男の残した言葉の意味を知るのに、さして時間はかかりませんでした。
私はオロオロと布団を敷き伸べて、そのうえに愚妻をスーツのまま寝かせると、
私自身もまた、失血のけだるさから解放されないままに、その場にぺたりと尻もちをついてしまいました。
こうして長い長い初めての夜は、明け方に向かったのでした。
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