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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸われる彼女。

2015年02月21日(Sat) 12:10:09

ねー。タカコとエッちゃんに、あたし誘われちゃった♪

麻由子がいつになく甘えた口調で、ぼくにしなだれかかってきた。
そのつぎに彼女が発した言葉に、思わずぎくり!とした。

お嫁に行けなくなる公園に~。


お嫁に行けなくなる公園。
それは通学路より一本はずれた通りに面した、緑の豊かな公園だ。
昼間はなんのへんてつもないただの公園なのに。
夕闇が迫ってくると、そこは異形の空間になる・・・といわれている。
通りかかる女の子たちは、例外なく吸血鬼に襲われて・・・中には”女”にされてしまうことさえ、あるという。

タカコとエッちゃんというのは、麻由子の幼馴染だった。
ぼくが麻由子と付き合うようになる前には、いつも三人連れだって登下校している仲だった。
それとほとんど同時に二人にも彼氏ができて・・・
初エッチはいっしょにしようね♪なんて、おバカな約束までしているらしい。

きけば、タカコの彼氏が吸血鬼にやられて、その彼氏の紹介でタカコも吸われるようになって・・・
こんどは友達を連れてこい・・・ってことになったんだという。

選ばれちゃった♪選ばれちゃった♪どうしよ~あたし血を吸われちゃうんだ・・・

どこまでも無邪気な麻由子に、ぼくも苦笑するばかり。
ぼくには彼女を止める権利がない。
この街に棲む娘のほとんどは、遅かれ早かれ咬まれてしまうのだから――

明日の6時だよっ。気になるんだったら、見に来てもいいからね~。

バ~イっ。
いつものように大きく手を振って、麻由子は自分の家路をたどる。
いつの間にか上背の伸びた制服姿が、妙にオトナっぽくみえた。


お前、行くのかよ。
そう言うお前こそ、どうすんだよ。
男三人はぐだぐだと、どうしようもない会話で相手をつつき合いながら。
結局三人連れだって、おなじ方角へと脚を向ける。
通学路をひとつはずれた、「お嫁に行けなくなる公園」へ。

三つのベンチが少しずつ距離を取って、向かい合わせの三角形を作っている。
もともとこうなっていたのか、きょうのためにだれかがそうしつらえたのか、それはだれにもわからない。
三人の女子は一人ずつ、ベンチに腰を下ろして、夕風に吹かれながら時おり言葉を交わし合っている。
風に乗って聞こえてくる話の内容は、なんとも他愛のないことばかり。
ぼくたちはいつの間にか、それぞれに距離を取って、離れ離れになっていた。
自分の彼女が吸血鬼に血を吸われるところなんて・・・仲間と共有するもんじゃない。

やがて、うっそりとした影が三つ、公園の奥の茂みからぬっと姿を現した。
女の子たちはさすがにいずまいをただして、柄にもない神妙な会釈を投げていく。
影たちはお互い顔を見合わせて、女の子たちを見つめて、またお互いに顔を見合わせる。
誰がどの子を択ぶか・・・品定めをしているのだ。
ぞくぞく。
ぞくぞく。
わけのわからない慄(ふる)えが、ぼくの身体を貫いた。
自分の彼女の運命が決まる一瞬一瞬に、息も停まる思いだった。

やがて影たちは、各々が選んだ子の前に身を移していって、
それぞれの子の足許にひれ伏すようにして、うずくまった。
麻由子の足許にかがみ込んだのは――酒屋のご隠居のおっさんだった。
あのおやっさん、吸血鬼だったのか・・・
いつも父さんの使いで一升瓶を買いに行かされるので。
しわくちゃな赤ら顔も、開けっ広げで気さくな感じも、よく知っていた。
でも、でも、あのおやっさんが麻由子の相手だなんて・・・考えられないっ!

思わず起ちかけるぼくのことを、傍らから手で制したやつがいる。
一緒に来たタケシだった。
そのタケシがこんどは、自分の彼女のタカコの様子に、思わず起ちかけた。
タカコは紺のハイソックスの脚を見せびらかすようにぶらぶらさせて、自分の相手の小父さんを積極的に誘っている。
起ちかけたタケシを、こんどはマサオがなだめた。
そのマサオが起ちかけるのを、こんどはぼくが「やめとけ、やめとけ」って、小声でたしなめている――

麻由子は紺のハイソックスの足許ににじり寄ってくるおやっさんに、早くもふくらはぎを舐められていた。
ぼくと目が合った彼女は、きまり悪そうに、照れ臭そうに、ピースサインなんか送ってくる。
ぼくもまた、ばかげたことに・・・ピースサインを返していた。
だいじょうぶだからね・・・って、かすかにうなずくのが見えた。

ちゅうっ。
唇の吸いつけられるそんな音が、聞こえるわけもない。
なのに耳もとで聞こえたように、リアルにそれが伝わってきて――
あとはいちぶしじゅうが終わるまで、ぼくはぼう然と立ち尽くしていた。

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
ハイソックスのふくらはぎを咬まれて血を吸い取られてゆく麻由子は、
さいしょはきまり悪そうに視線をあちこちに迷わせていて。
そのうちだんだんと、身体を傾けていって。
しまいにくたり・・・と、ベンチのうえに横倒しになっていった。
おやっさんは口許についた麻由子の血を手の甲で拭うと、
こんどは麻由子のうえにのしかかっていって、首すじを吸った。

ちゅうっ・・・
唇の吸いつけられる音が、また聞こえたような気がした。
すでに他の男子二人は、近くにいなかった。
それぞれが自分の彼女が吸われている光景を、呆気に取られて見つめるばかり。
知らず知らず起ちあがっていたぼくは、一歩、二歩と、ふたりのほうへと近づいていった。

おやっさんと目が合った。
「悪かったね」
おやっさんは開口一番、そういった。
「ユウキは麻由ちゃんと、つきあっていたんかい」
今はじめて知ったような口ぶりだったけど。
このごろは連れだって酒屋に一升瓶を買いに行ったりしたこともあるのだから、
ぼくたちの関係を知らないわけはなかった。
いつも父さんの使いで酒を買いに来る、同じ町内の息子の彼女。
そうと知りながら、麻由子を択んだにちがいない――

ぼくはおやっさんの頬に撥ねた麻由子の血を、ハンカチで拭ってやった。
「そのハンカチ、大事にしなよ」
おやっさんは、ぼくの気持ちを見抜いたようなことをいった。
「もう少しだけ、愉しませてな」
おやっさんがまだ咬んでいないほうの麻由子のふくらはぎに唇を吸いつけるのを、ぼくは止めようとはしなかった。
向かいではタケシが、タカコの胸を揉みたがる白髪おやじのために、ブラウスの釦を外してやっていたし、
その隣ではマサオが、エッちゃんの履いている真っ白なハイソックスを片方ずり降ろして、むき出しの脛を舐めさせてやっていた。
紺のハイソックスのうえから押し当てられた唇は、麻由子のふくらはぎをねちねちといたぶって、ネバネバとしたよだれをなすりつけてゆく。
かすかに意識があるらしく、麻由子は「んもう~」って低く呻きながらも、おやっさんが脚を吸いやすいようにと、時おり脚の向きを変えてやっていた。
やがて唇の両端からにじみ出た牙が、麻由子のふくらはぎを冒した。
ずぶ・・・っ。
もぐり込んだ牙に、麻由子は「うっ」と呻いて、白い歯をみせた。
思わず彼女の掌を握りしめると、彼女もギュッと握り返してきた。
ちゅう、ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
吸血の音は、しなだれかかる麻由子をベンチに座って支えるぼくにまで、おおいかぶさった。
首すじにジンジンと響く疼きに、麻由子がどうしておとなしく応じていったのか?がわかったような気がした。

気がつくと、もうふた組みのカップルは、姿がなかった。
「ふたりで送ろうぜ」
おやっさんはいつものざっくばらんな調子を取り戻すと、ベンチのうえで姿勢を崩した麻由子の身体を支えにかかった。
ぼくもそれを手伝って、起とうとする彼女を両側から支えてやった。
「大丈夫。歩けるから」
気丈にもそういいながらも、麻由子はかなりへばっているらしい。
「また吸ってね~」
なんて、小手をかざしてバイバイをするほど自分を取り戻しながら、ぼくの方に廻した腕に身体の重みを託してきた。

りぃん、ろぉん・・・
つきあうようになってからは、麻由子の家とはむしろ遠くなっていたから。
久しぶりの訪問だった。
家から出てきたお母さんは、どういうことが起きたのかをすぐに察した。
「ユウキくんがついてくれていたんなら、安心だね」
お母さんは何事もなかったように、そういっただけだった。
「相手は酒屋のおやっさんです。
 ぼくのほうから、麻由子の血を吸ってほしいって頼み込んだんです。
 おやっさんはよろこんで、相手を引き受けてくれて――
 麻由子の血が、とても気に入ったみたいです。
 こんなにふらふらになるまで、吸い取っていったくらいですからね。
 お母さんは安心してください。今度からぼくが、麻由子さんを連れて行きますから」
事実とも違うことを、ひと息にそう口走ってしまったとき。
自分の体内にそそぎ込まれた毒が、身体じゅうを冒していることに、初めて気がついていた・・・
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