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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

妻を伴い、女装をして・・・妻の浮気相手に逢う。

2015年03月02日(Mon) 05:54:48

細いロープのように肩先に食い込む、スリップの吊り紐。
そのうえから、ふぁさっと覆うようにタイつきのブラウスを着込むと、妻は胸もとのリボンを器用に結んでくれた。
取り上げたフレアスカートは羽毛のように軽く、腰に巻きつけるとひざ小僧のあたりを頼りなく撫でた。
脚に通した黒のストッキングは、淡い脛毛を視界から遮って、なまめかしい翳りで足許を彩った。

上出来じゃない。

妻はわたしを頭のてっぺんから脚のつま先まで見つめると、そういった。
いままでの蔑むような感じは、どこにもなかった。
夫の女装趣味を知るや、嫌悪感もあらわに虫唾を走らせていたはずなのに。

ウィッグかぶると、けっこう女っぽくなるものね。
さあ行きましょ。いまさらあなたも、恥ずかしいことなんかないんでしょ?

妻はサバサバとそういうと、お気に入りの黒革のショルダーバッグを翻すようにして、肩に提げた。
もう三十分近く前から玄関先に到着していた迎えの車は、鈍いエンジン音を響かせている。


着いたのは、街はずれの大きな邸だった。
ここに来るのは、わたしは二度目。妻はなん度も・・・

妻が浮気をしている。
そんな匿名の告げ口をたよりに踏み込んだとき。
いつもよりずっと若やいだ雰囲気をまとった妻は、スリップ一枚でベッドにいた。
男もほとんど全裸だったが、その皮膚の色を見てわたしはぼう然とした。
死人のように蒼い、見たこともないような色だったから。
男はスッとわたしに近寄ると、いきなり首すじを咬んでいた―――


夫婦で奴隷になるわ。それしかないもの。
貴方も女になって、このひとに咬まれればいい―――

どちらに言うともなく毒づいた妻の言に、男は頷いて見せた。
男の口許には、わたしの身体から吸い取った血が、まだ濡れを帯びていて。
妻はそっと近寄ると、それをハンカチで拭って笑った。
記念に取っとけば?
謡うような口調には微かな嘲りを帯びていたが、わたしが吸い取られた血がしみ込んだハンカチをポケットにしまうと、ひと言だけ「それでいいのよ」と、真顔でいった。
最愛の妻を、吸血鬼の交際相手として受け容れる見返りに、わたしも女になることを許された。
ただし、妻の浮気相手に血を提供するためにという条件が附せられていたけれど。


死人のような顔色の吸血鬼は、物腰は柔らかで、応対も紳士的だった。

きれいな脚をしていらっしゃるね。

そんなことを言われて胸をときめかせてしまったのは・・・夫としては不覚であることに違いはなかった。

あなた、このお邸では女でいるんですものね。
この邸にいる女は、だれもがこのひとに服従しなければならないの。
血が欲しいと言われたら、生き血を吸われて。
身体が欲しいと言われたら、操なんか投げ出すの。
わたくし、このひとに抱いてもらったこと、後悔しないわ。
愛人に選ばれたことに、誇りを感じる。
あなたの奥さんが性欲のはけ口にされちゃうのも、なんだか小気味よくってよ。

妻の言い草のいちいちが棘になって、わたしの胸に突き刺さる。
棘の一本一本には毒が含まれていて、
その毒はわたしの身体をめぐる血液をも妖しく染めて、狂おしい衝動をかきたててくる。

縛らせてもらいますよ、マダム。

吸血鬼の手によって自分の身体に巻かれてゆく紅いロープが、網膜に妖しく灼きついた。
ギュッと縛られる感触に、どす黒いときめきを覚えて・・・わたしは思わず「うっ」と声をあげる。
食い込むロープに添ってしわ寄せられる純白のブラウスに。
反らせた足の甲に映える黒のストッキングに。
わたしの目線は惑いながらからみついてゆく。

吸血は、あっという間だった。
ストッキングを破りながらふくらはぎに咬みついた男は、そのあと首すじにも喰いついてきて・・・
獰猛に、わたしのことをむさぼっていった。
激しい貧血に眩暈を起こしてその場に倒れ込むと。
わたしは思わず、口走っている。
「やっぱり本当のお目当ては、家内なんですね・・・」
むらむらと湧き上がった嫉妬は、
妻を抱かれてしまうため?
それとも相手の男の寵愛が、別の女にあると知ったため・・・?

ホホホ・・・
妻は嬌声をあげながら、男に組み敷かれてゆく。
脚をじたばたさせながら、花柄のワンピースを自分からたくし上げていって。

やめろ。やめなさい。はしたないだろう・・・?
いやよ。やめないわ。あなたの奥さん、侵されちゃうの。嬉しいでしょう・・・?
いけない、いけない。そんなことは・・・
あらあ。なに仰るの?あなただって、昂奮しているくせにい。

せめぎ合う夫婦のやり取りが、いっそう昂ぶりを呼んでいた。
いつか、妻の身体に折り重なる身体は、ひとつだけではなくなっていた。
吸血鬼のつぎには、わたし自身が。
それから、どこからともなく現れた男たちが――ー

わしの気前のよいのを、恨まないで下されよ。
この連中は、あんたの同類でね。
わしに奥方を吸われたり寝取られたりした連中なのじゃ。
じゃから、多少のことは多めに見るがよい。
なに?知った顔がおるって?
安心せい。この場での出来事は、口外ご法度になっておるでの。
しかも、お互いさまじゃ。
こんどはあやつらの女房を、あんたが抱くことだってできるのじゃから。
もっともあんたの場合・・・どうやら人の女房を抱くよりは、自分の女房が抱かれるのを視ているほうが、ご満足のようじゃがの。

なにひとつ、否定できないまま。
わたしはその場に居合わせた男性全員に、妻を分かち合うことを強いられていった。
いままで経験したことのない、どす黒い歓びに身を震わせながら―――
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