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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

母さんと朝帰り

2015年03月15日(Sun) 09:57:00

シンジのお母さん、いまおいくつ?

39歳・・・かな?

若いうちに結婚したんだね、と、由紀子さんはいった。
女の言い草のように、ボクには聞こえた。

40歳の誕生日のまえに、ヤッてもらおうよ。

由紀子さんの瞳が、昏く耀いていた。
ヤるって、なにを・・・?
一応そらとぼけてみたけれど・・・そんなことが通用するわけは、むろんなかった。
由紀子さんに血を分けるようになっていた母さんは。
彼女の呼び出しなら、それが真夜中でも受け入れてしまうだろう。
でも、既婚の女性が男の吸血鬼と逢うことがなにを意味しているのか・・・
母さんはちゃんと、わかっているのだろうか?

暗くなってから家に戻ると、父さんはもういなかった。
今夜は夜勤だと言っていたっけ。
勉強部屋の机のうえに、メモが乗っていた。

母さんを連れ出すのなら、戸締りはちゃんとしておくように。

父さんの筆跡だった。

こげ茶のストライプの入った白のブラウスに、えび茶色のタイトスカート。肌色のストッキング。おなじ色のパンプス。
母さんの身なりは、そんな感じだった。
ストッキング着用は、義務付けみたい。
由紀子さんは面白そうに、笑っている。
あたしたち学生だと、ハイソックスなんだけどね。
ことさら見せびらかした紺のハイソックスには、ふくらはぎのいちばん肉づきの柔らかなあたりに、咬み痕がふたつ、浮かんでいた。
母さんの肌色のストッキングも、あんなふうに破かれるのだろうか?
ストッキングだと、派手に裂けるんだよ。
由紀子さんがそんなことを知っているのは、自分のお母さんのときのことを言っているのだろうか?

こんな夜更けに、どこに行くというの?
母さんは由紀子さんとボクのことを、等分に見比べた。
いいから、急いでくださいね。
由紀子さんの真顔には、母さんも抗えなくなっていた。

連れていかれたお邸の、いちばん奥の日本間で。
男と二人きりで置き去りにされるとき。
「献血だと思えばいいんだよね?」
母さんはなん度もボクに、そう訊いてきた。
「献血というか・・・なんというか・・・」
口ごもるボクに。
「慈善事業ですから」
由紀子さんはキッパリとそう言い放って、母さんに引導を渡してしまった。

ふすまが閉ざさされる間際――
うつ伏せに横たえられた肌色のストッキングのふくらはぎに這う唇が、好色なよだれを光らせるのが。
酷く胸に灼きついていた。
「おとう様、見えているから」
由紀子さんは、意外なことを言う。
「シンジがわたしを奪われる刻。シンジも見守ってくれるよね・・・?」
思い詰めた表情が、怖ろしい問いに対する肯定の応えを、ボクに強いていた。

翌朝――
ノーストッキングに剥かれた母さんの脛が、ひどく眩しく映った。
「あのお宅、母子で朝帰りですってよ」
ご近所の朝食の食卓で、そんなささやきが洩れるのを、なぜだかありありと感じることができた。
濡れ衣をボクがかぶって、あの男がいい想いをする――
そんな図式が、ボクたち一家にも、影を伸ばしてくるのを。
もう後戻りできない状態になっていた。
そして、後戻りしたくない心境にまで、なっていた・・・
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