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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

三人の少年とその家族

2015年04月16日(Thu) 06:57:41

おそろいの濃紺のハイソックスに、おなじ色の半ズボン。
そんなイデタチの三人の少年たちの足取りが、ふと立ち止まる。
早いね。もう来てたの?
頭だった少年が気軽に声をかけた相手は、明るい陽射しにはそぐわない黒衣の男。
男はうっそりと起き上がり、少年たちを見比べる。
血を吸いたいんだろ。ほら、三人ともかまわないからさ。
どの少年も、しょうがねぇなあ・・・という笑みを泛べて、男が自分たちの足許ににじり寄ってくるのを見守っている。
三人三様、ハイソックスに包まれたふくらはぎは、
がっちりしていたり、むちっと肉がついていたり、すらしと細かったりしていた。

さいしょに咬まれたのが、頭だった少年。
三人のなかでもっとも筋肉質なふくらはぎに唇を這わされると。
痛ぇ!って、わざとおおげさに声をあげた。
平気なはずだ。
吸血鬼は、生真面目な男らしい。
年輩男らしいしわがれ声でそう呟くと、いちど放した唇をもういちど、少年の足許に吸いつけた。

うーんっ!
最初の少年が眩暈を起こして、その場に尻もちをついてしまうと。
男は無表情に、二人めの少年の足許にとりついた。
むちっとしたふくらはぎをいとおしむように、さいしょの少年の血をあやしたままの唇を、なすりつけてゆく。
ア・・・
喉の奥からひと声、呻きを洩らすと。
第二の少年もまた、天を仰いだ。
ごく・・・ごく・・・ごく・・・
冷酷なほど太い音を立てて、男は第二の少年の生き血で、喉を鳴らした。

仲間ふたりがへたり込んでしまうと、三人めの少年は傍らのベンチに逃げるように腰かけて、
か細いふくらはぎを、心細げに脚組みをした。
ははは、そんなに構えんでいいぞ。
男はくぐもった声で最後の獲物をなだめながら、さっきのふたりと同じように、濃紺のハイソックスの脛に唇を当てた。
さいしょに吸われた少年が、やっぱり黒森の血がいちばん美味いんだよな・・・って、
ちょっとうらやましそうに呟く。
そんなんじゃないよ・・・痩せた少年が泛べた微笑は、ひっそりとした翳を含んでいる。
ちゅう・・・ちゅう・・・
あからさまな音をあげて。
彼の血潮もたっぷりと、男の唇に含まれ、飲まれていった―――


ったく、きょうはしつっこかったなあ・・・
さいしょの少年は、独り家路をたどりながら、彼にしてはめずらしく愚痴っぽく呟いた。
しつっこかったって?
耳もとで囁かれた声に、少年はビクッと顔を振り向ける。
さっき自分の血を吸い取ったばかりの男が、すぐ後ろでほくそ笑んでいた。
おい!おい!びっくりさせんなよっ!
とっさに飛びのく少年を、男は壁ぎわに追い詰めていた。
フットワークの良いはずのスポーツ少年も、この男の身の軽さにはかなわない。
どうしたいんだよ?まだ気が済まねぇの?
むっとした顔の少年に、男は言った。
じつはお前の血が、いちばん美味かった。ほかの奴らのまえで言ったら悪いと思ってな。
だから・・・もう少し吸わせろって?
なおも睨みあげる少年に。
これから、彼女に逢うんだろ?
男は図星を、突いていた。
お前なあ・・・
口を尖らせる少年に、人の彼女にまで手を出す気かよ・・・と皆まで言わせずに、男は言った。
彼女、あんたの負担を減らしたがっていたぜ。
彼が主将を務めるチームは、ここのところ連敗だった。
主将がOKすると、みんなOKしてくれるんだもんなあ。
男の言う通りだった。
チームメイトのほとんどは彼の毒牙にかかっていて、順ぐりに血を吸われる関係になっていた。
男は自分の仲間に善意の献血者たちをまた貸ししたため、人数の割に需要は逼迫している。
おかげでチームは、連戦連敗。
二部落ちはいやだ~というのが、女子生徒たち共通の願いにまでなりつつある。

男がいうまでもなく、ふたりの背後には気づかわしそうな顔つきをした少女がひとり、佇んでいた。
濃紺のプリーツスカートの下に履いた、真っ白なハイソックスのふくらはぎに、
さっき自分がされたのと同じように、唇が吸いつけられてゆくのを。
男がチューっと唇を鳴らして、少女の血潮をムザムザと吸い上げてゆくのを。
濃紺のひもリボンをほどかれた首すじに、飢えた唇がなおもしつように這わされてゆくのを。
少年は股間の疼きの熱さを我慢しながら、見守っているしかなかった。


ったく、迷惑この上ないよなあ・・・
二人めに吸われた少年は、ハイソックスの下に隠した咬み痕をさすりながら、愚痴っていた。
たしか体重増加防止になるって言い草だった。
うっかりそれで、首すじをゆだねてしまったのが、運の尽きだった。
やつはそれ以来、彼に付きまとって――家のなかにまで勝手に入り込んでくるようになっていた。
いつだか家に呼んで血を吸わせて以来、施錠されていてすら入り込めるようになったらしかった。
迷惑この上ないって?
いきなり囁かれた小声に、少年はビクッと後ろを振り向いた。
案の定。
男はすでに部屋でずっとくつろいでいた・・・といわんばかりにリラックスして、ほくそ笑んでいる。

わかったよ。まだ吸い足りないんだろ?
少年はやけになって、ハイソックスのつま先を差し出した。
すまないね。
男は少年の気前良さを遠慮なく受け止めて、唇をチュッと吸いつける。
きょうで二足めだぜ・・・
恨みがましそうに見おろしてくる少年の目線をくすぐったそうに受け流しながら。
男は聞えよがしな音をチュウチュウたてながら、少年の血を吸った。
やっぱり血の味がいちばん良いのは、きみだね。
ほかの連中には、ナイショだぜ?
そんなうまいこと言って・・・どうせほかのやつらにも、同じこと言ってまわってるんだろ?
図星を突かれた男は、フフフ・・・と含み笑いをしながら言った。
きみの母さんの穿いている肌色のストッキングも、面白そうだよね?

母さんの血を吸うつもり!?
大きな声出すなよ。聞こえるだろ?
いや、だって、それは、だめだって!よくないよ・・・父さんだって、困るって。
うろたえる少年を制しながら、吸血鬼は言った。
お父上のことはさておいて・・・きみは母さんの血を吸われるのに、異存があるのかね?
少年は目を見張った。
きみの血が美味しいといことは、親御さんの血も美味いということになるね。
血を吸われるたびにそんなことばかり囁かれているうちに――
母も自分と同じように血を吸い取られてしまうという想像が、少年の脳裏に色濃く刷り込まれてしまっている。
異存は・・・ないけどさ・・・
じゃあ決まりだ。きみはここで息をひそめていればいい。
すっと立ち上がる男を、失血で尻もちをついた少年は止めることができなかった。
母さん、逃げて!早く・・・
彼の希望を断ち切るように、「あっ、どなた?」「な、何するんですッ!?」ドタバタッ。「きゃあ~っ!」
そんな声と物音とが、階下のリビングから聞こえてきた。

リビングに下りてゆくと、母親の血を吸い終わった男が、吸いつづけていた首すじから唇を放したところだった。
エプロンに血を滲ませたまま、母親は半死半生のていで、息を弾ませていた。
むふふふふふっ。これからがお愉しみさ。
男は母親のワンピースのすそをたくし上げると、あらわにした太ももに再び咬みついてゆく。
肌色のストッキングに包まれた太ももは、ドキッとするほどむっちりとしていた。
太ももの一角に突きたてられた牙に、母親がもういちど、悲鳴をあげた。

パリッ。ぶちぶち・・・ッ
ストッキングを破り放題に愉しみながら。男は尻もちを突いたままの少年に囁いた。
いつもすまないね。
いえ・・・
仲の良い母子だった。
招かれざる訪問客の渇きを、自分たちの身体をめぐる血で代わる代わる、癒していったのだ。
ここから先は、きみはまだ視ない方が良いな。
男はそう言ったけれど、少年にはその場を立ち去る機転も体力も、残されていなかった。
母親のワンピースのすそが、さらにたくし上げられるのを、
そして母親が自分から、ショーツをつま先までずり降ろしてしまうのを、
少年はただぼう然と、見守っていた。


ったく、昂奮で眠れやしない。
いちばん痩せた少年が恢復したのは、夕食後のことだった。
ひとの血だと思って、自分のつごう次第でむしり取るんだから・・・
夜空の窓を見あげる少年の傍らで、囁きが洩れた。
眠れないって?
え?
ビクッと振り向く少年の後ろで、男がほくそ笑んでいる。
もの欲しげな笑みを、もう少年は見慣れてしまっていた。
ボクの血が、じつはいちばん美味しかった・・・とか言うんだろう?
図星を刺された男は、まあ、そうひとをうたぐるもんじゃないと言ったけれど。
すまない。きょうはとめどがないみたいなんだ。
正直にそういって、もうパジャマに着替えてしまっている少年の足許に目線を落とした。
今夜はなにがご希望?
こないだ家に上がり込んできたときは。
父さんが視ているまえで母さんを襲って生き血を吸い取っていった。
さすがの父さんも、血を吸われてしまうとぼう然となって、最愛の女性がみすみす血を吸い取られてしまうのを、ぼう然と見守っているだけだった。
そのあとどんなことが起きたのか――視ないほうがいいと言われるままに二階の勉強部屋に引き取った彼は、目にしていない。
もちろんなにが起きたのか――理解できない年頃ではなかったけれど。

あの公園でさ。妹さんとデートする気はないかね?
え?
妹さん、きょうは遅くまで塾なんだって?お疲れ様。
要するに、塾帰りの妹の携帯に連絡を取って、公演で待ち合わせろということらしい。
この時間だ。きみも制服が望ましいな。
まるで教師みたいな口調に向かって、露骨にしかめ面を返しながらも、少年はパジャマから制服に着替えていた。

お兄ちゃん・・・
ひどい。ヒドイわっ。
ほの香の血を、こんなひとに愉しませちゃうなんて!

口先では目いっぱいの抗議をしながらも。
公園の地面に倒れ込んだ少女は、そんな非難の声すらも囁きに変えてしまっていた。
真っ白なハイソックスのふくらはぎに物欲しげにかがみ込んできた吸血鬼が、チクリとした痛みを伝えてくるのをじっと耐えながら。
崩れかけた理性を立て直そうとして、
「こんなじゃいけない。はやくやめさせないと・・・」と、意志を奮い立たせようとしたけれど。
ゴクリゴクリと音をたてて自分の血を飲み耽る男のまえに、そんな意志さえはかなく散ってしまいそうになる。

あたしの血、おいしいのかしら。
お気に入りのハイソックス、愉しんでいただいているのかしら。

いつのまにか泛んだ、そんな心の呟きにはっとなりながら。
肩先を撫でてあやしてくる兄さんは、囁いてくる。

ボクや母さんの血だって、美味しく飲んでくれているひとなんだから。
ほの香の血が、美味しくないわけがないじゃない。

そうね、安心していいのよね・・・
少女は安心しきった笑みをほんのりと泛べ、
兄はそのほほ笑みの妖しさに、ハッと息を呑んでいた。

自分の血を美味しいと褒められた少年は、母親を引き合わせ、
母親の血を吸われた少年は、妹を連れだして。
母と妹を吸われた少年は、自分の彼女さえ紹介してしまう。
そんな食物連鎖の影で、血に飢えた男はひっそりと笑う。
ただしその笑いの裏側には、ひそかな憐憫と同情、それに感謝や尊敬も湛えている。
皮膚に突きたてられる牙を通してそれらの感情を敏感に感知したものだけが、
忌み嫌うことなく己の身体から血を吸い取らせ、大切な女性たちをも共有しつづけてゆく――


あとがき
さいごの結論に書いた順序通りにすればよかったかなあと、ちょっと反省。
リベンジは逞しい順に行われるべきだろうし、
いちばん逞しい少年には彼女がいるだろうし、
妹を夜の公園に連れだす役柄は、もっとも繊細そうな痩せた少年に割り当てるのが好ましいし、
そんなことを考えながら、お話を作りました。
一部関連画像を、近々某所にあっぷするかも・・・です。乞うご期待。
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