FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女ができたら、わしに咬ませろ。 4  ―― どっち・・・? ――

2015年05月21日(Thu) 07:07:06

ははは。オレもとうとう・・・
いつも連れだって登校している半井のやつが、いつになく照れ笑いをして、頭まで掻いている。
どうした・・・?といいかけたボクも、思わずにやりとしてしまっていた。
いつも長ズボンだった半井の太ももが、濃紺の半ズボンから眩しく露出していた。
オレの脚筋肉質だから・・・体育の時間以外はカッコわるくてひとに見せらんないよ。
そんなふうに言っていたふくらはぎも、濃紺のハイソックスに包まれて、かっちりとした輪郭が好ましく映った。

どういう心境の変化?
ボクが水を向けると。
半井はせきを切ったように、語りはじめた。
金曜の夜、一夜のうちに家族全員が咬まれてしまったことを。

相手は親父の取引先だったんだ。
それがなにかのはずみで、吸血鬼になっちゃってね。
さいしょに親父が咬まれて、家族の血も飲みたいっていう取引先の社長にせかされて、その足でうちに連れて来て。
玄関先でお袋が咬まれて、ベッドのうえでちゅーちゅーヤラレちゃって。
階下からへんなうめき声がするなあって思っていたら。
そのひと、二階の勉強部屋まで上がり込んで来て、オレのことまで咬んで。
オレが血を吸われているあいだ、お袋は寝ていた妹を起こして。
わざわざ学校の制服に着替えさせて。
あいつもストッキングとか、ハイソックスとか、好きらしくって。
しぶしぶ紺のハイソ履いた妹に、
破けたパンスト穿いたままのお袋が、こんなふうにさせてあげてねって、自分の脚見せびらかして。
うーん・・・
自分が咬まれたときよりも、妹が紺ハイソ咬み破られながらちゅーちゅーやられるのを見ているときのほうが、昂奮したなあ。

言葉を短くしゃべっているぶん、よけいに想像力をそそられた――
そういえば半井の妹さんって、けっこうかわいかったよな・・・

背後から、舐めるようなしつような視線が、ねっとりとからみついてくるのを感じた。
おそろいのハイソックスを履いた脚を並べて登校する後ろ姿を、
小父さんは欲情の入り混じった眼で、どこからか盗み見しているみたいだった。


先方のお母さんに連れられて、彼女が初めて公式にボクの前に現れたのは。
おなじ週末のことだった。
ちょうどあいつが、制服を新調するために、吸血鬼の女にされたお袋さんといっしょに地元の洋品店にいた時分だったはず。
さらりと流れる黒髪に、広いおでこ。お行儀よく取り澄ました小づくりな目鼻立ちは、こないだすれ違ったときそのままだった。
薄いピンクのカーディガンに、空色のブラウス。真っ赤なスカートの下、真新しい白のハイソックスが初々しい眩しさを放っていた。
ふたりきりにされたのは、30分ほどだった。
部屋を移して歓談する両親たちが、背後の気配でボクたちのようすを窺っているのが、ボクにさえありありとわかった。
30分のあいだ、ふたりはほとんど押し黙ったままだった。
いきなりお見合い相手を・・・っていきなり引き合わされたって。
遊びのわかる大人ではないボクたちのあいだで、スムーズな会話が成立するわけがなかった。
如才のない半井だったら、こんなときどうするかな・・・とかって。
場違いなことばかりが、頭のなかを駆けめぐっていた。

翠(みどり)さんという名前を持つその少女は、
30分のあいだ、じっとうつむきつづけていて。
ちいさな朱の唇を、終始不機嫌そうに引き結んで、押し黙っていた。
気の強い子なのか。かたくなな子なのか。たんにボクに関心がないだけ・・・?
何とか和やかな座にしたいと願うボクの、空回りする焦りのむこうに、失望と劣等感とが顔を出しかけたとき。
時間切れ数分に迫ったそのときに、やっと口をひらいたのは――翠さんのほうだった。

あなたのお嫁さんになるひとは、吸血鬼に咬まれる運命だって本当・・・?
俯いていた顔をにわかにもたげて、ひたとこちらを見据えてくる目は、尖った視線をもっていて。
話題を逸らさせないしんけんさで、いっぱいだった。

ウン、残念ながら、そうみたい。
ボクはおずおずと、そうこたえた。
うちのしきたりなんだって。父さんも母さんも咬まれているし、
ヒロアキのお嫁さんになるひとのことも、咬んでもらおうね・・・ってことになっているから。

そう。
翠さんの呟きは、放心したように低かった。
現実を受け入れたような、大人びた諦めが、そのまま声の響きになったみたい。
で・・・あなたは。
いちどうつむけかけた顔をふたたびあげて、ボクを見据えた瞳に籠っていたのは、
諦めなんかよりも、はるかに強い感情だった。

家のしきたりだから、私を咬ませるの?
それとも、自分のお嫁さんが襲われるのが嬉しくて、吸血鬼に貢献するの?
どっち・・・?

さいしょの尖った声色とは裏腹に。
なぜかさいごのひと声だけは、ひどく柔らかな響きを含んでいた―――
前の記事
彼女ができたら、わしに咬ませろ。 5  ―― 帰るわ。 ――
次の記事
彼女ができたら、わしに咬ませろ。 3  -遭遇ー

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3152-d8f6e487