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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女ができたら、わしに咬ませろ。 7 ――訪問――

2015年06月01日(Mon) 05:42:50

ずり落ちたハイソックスを引っ張りあげて、ふくらはぎの咬み傷を隠してしまうと。
薄ぼんやりとジンジンする頭を抱えながら、ボクは目のまえの光景に視線を吸い寄せられていた。
向かい合わせにしつらえられた、ソファーのうえで。
翠さんはまつ毛をピリピリ震わせながら、しつような吸血に耐えていた。
いつもお行儀よく引き結んでいた唇が、ほのかに開いて。
歯並びのよい白い歯を、ちょっぴり覗かせながら。
小刻みで切なげな吐息を、熱く継ぎつづけていた。
セーラー服の襟首を走る真っ白なラインに、きょうもまた、バラ色の飛沫が散らされていた。
「制服は汚すまい」
いつも誓われて、そのつど破られる約束を。
なにごともきちんとしなければ気の済まないはずの翠さんが、いちども咎めだてしようとはしなかった。

形ばかり抗っていた細い腕が、力を失ってだらりとなって。
けんめいに相手の肩をつかんでいた掌が、紺のスカートのうえにぽとりと落ちた。
ククク・・・
小父さんはほくそ笑みながら、翠さんをソファの足許のじゅうたんに、仰向けに横たえてゆく。
いちど放した唇を、ふたたび彼女の首すじにあてがって。

ちゅう~っ・・・

聞えよがしな、血を吸い上げる音に。
ボクはふがいなくも、半ズボンの中身をピンと逆立ててしまっている。

ふたりきりにさせてもらうぞい。

小父さんの言うままに、ボクは肯くともなく肯いてしまっていて。
左右の脇の下を抱きかかえた小父さんは、翠さんを隣室のたたみ部屋へと、引きずってゆく。
ひざ小僧の下まできちんと引き伸ばされた紺のハイソックスの脚が、
だらりと伸びたまま、じゅうたんの上を流れていった。

ごくっ、ごくっ、ぐちゅうっ・・・

隔てられたふすま越し。
汚らしい音だけが、ボクの鼓膜をジンジンと打つ。
どんなふうに、あしらわれてしまっているのか。
黒い想像だけが旋風のように、ボクの胸の奥底を、かけめぐった。



そわそわと座をはずそうとしたヒロアキの腕を、翠はつかんで放さなかった。
かたくななくらいの力を込めた両手に、ヒロアキは戸惑うように腰を下ろして、翠を見た。

行かないで。

翠は横顔で、そうこたえた。

行かないで。そばにいて――心細いから。

さいごのひと言に納得したのを、つかんだ腕越しに翠は感じた。
――このひともやっぱり、男の子なのね。
ゆるめた口許から覗いた白い歯の怜悧な耀きに、ヒロアキは気づいていない。
自分の彼女をこんなところに連れて来て。
制服もろとも、辱められてしまうというのに、置き去りにするといことがあるのだろうか?
――男なら、さいごまでけじめつけなさい。
そんな思いもあった。
けれどもそれ以上に、翠の胸の奥深く宿っていたのは――もっとどす黒い呟きだった。

視たいんでしょ?ほんとは、視たいんでしょ?
ただ、そう口にする勇気がないだけなのよね?
自分の婚約者が生き血を吸い取られて、辱められてしまう。
そんなところを視たいだなんて。
そんなこと、男の口から、いえないよね?
だからあたしが、言ってあげる。
恥ずかしいあなたの代わりに、言ってあげる。
心細いから、いっしょにいてって。
いっしょにいて、あたしが辱めを受けるところを、見て頂戴って。
あたしが小父さまに気を許して、あられもなく乱れてしまうの、全部あたなのせい。
だからあなたは、すべてを視る権利があるの。義務があるの。

先にヒロアキの血を吸い取った唇が、
おそろいの紺のハイソックスを履いた自分の足許に迫って来て。
ねっとりと這わせて来るのを、ヒロアキは息をつめて見つめていた。
つなぎ合った掌ごしに、翠は相手の羞ずかしい昂ぶりを感じながら。
男が吸いやすいようにと、狙われたほうの脚をスッと静かに差し伸べた。

くちゅっ。

唾液のはぜる音に、傍らの少年がビクッとする。
咬み入れられたときのかすかな身じろぎが、擦り合った二の腕越しに伝わって――
彼はなおさら、ズキッとした。
逃げかかった上体に、か弱い体重をあずけていくと。
戸惑いながら、それでもしっかりと、支えてくれた。

男ふたりが、あたしのことを嬲りものにしている——
あたしの両肩をつかまえる彼氏と、ハイソックスを汚し抜いてゆく吸血鬼。
忌まわしい、と思ったのは、さいしょのうちだけだった。
いまではその清々しい感性が、懐かしくさえあった。
ふたりして、あたしの血を、品性を、穢そうとしている——
ひとりは、セーラー服のうえから二の腕をつかまえながら。
もうひとりは、スカートのすそにお行儀悪く血を撥ねかせながら。
パパとママから伝えられた血を、こんなふうにして辱められてしまうことに。
いまでもかすかな憤りは忘れていないつもり――
けれどもそのパパやママですら・・・この男の手に堕ちている。
だとしたら・・・
あたしの血が飲まれるのは、順当なあしらいなのだ。
むしろそうされるのが、ふさわしいのかも――

未来の花婿となるはずの男のまえで、セーラー服に包んだ胸を抱き寄せられながら。
ギュッと掻き抱かれて、首すじを咬まれる。
そのうえもういちど、こんどはとどめを刺すように――
紅いじゅうたんのうえ、組み敷かれて。
のしかかられながら、咬まれてゆく。
セーラー服の襟首に。肩先に。
ジュッと重たくて鈍い音をたてながら散らされてゆく、若い血潮――
ああ、また眠くなってきた。
隣の和室に引きずり込まれてゆくのが・・・
鈍く霞のかかった脳裏に、気配で伝わってくる。
だらりと伸ばしたハイソックスの脚が、じゅうたんを擦るようにして尾を引いていくのが。
なぜだかとても、心地よかった。
あそこであたしは、また獣のようにむさぼられる。
ヒロアキくんは、物音だけで感じてしまうはず・・・

小父さまの家を失礼したあとの帰り道。
あたしたちはきょうも、視線を交えまいとしながら家路をたどるのだろうか?
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